3日目





山崎side



僕に直属の部下(仮)ができて3日目。

副長に"バレないように目を離すな"と言われ、僕は密かに山上君を監察している。


まだ寝ている時間だと思って部屋へ行ってみれば、隊服を着た山上君が食堂の方へ行く。
…あ、怪しい。
スパイの匂いがプンプンする!


朝食を食べた後、鼻歌を歌いながらお茶を入れ、湯呑みを2つ持って彼が向かった場所は、


「やはり」


優生さんの部屋。


優生さんは隊士の中でも早起きだ。

というか、早起きして隊服に着替え、二度寝している。
故に、優生さんの寝間着、着物姿を見たことがある人はいない。

隊士たちがちらほらと起き始める時間、出てきた優生さんはやっぱり隊服を着ている。


なにやら話し込んで部屋に入ってしまった。

まずい、副長にバレたら怒られる。
2人きりで部屋はまずすぎる。
何故だかわからないけど切腹って言われる。


……


「おはよー山崎くん」


あくびをしながら食堂へ来た優生さんはいつもと変わりなく、特に2人きりの部屋では何もなかったように、見えたのだけど。


「…た…に、」
「ん?なんか言った?」
「あ、なんでもないです」


見廻り中、山上君はどこか上の空で、やはり今朝何かあったようだ。

この監察、山崎退の目は誤魔化せまい。


「誰……に、」
「どうかした?」
「いや、なんでもないです」


空を見ては、宙を見ては、隊士を見ては、地面を見ては、何やらぶつぶつ言っている。

午前中からずっとこの調子。
正直、気味悪いんですけど…。


「どうかした?何か気になることがあるなら何でも相談して!」


とりあえず、何を呟いているのかだけでも知りたい。


「真選組って…みなさんて…どうしてここにいるんですか…?」
「えっ?」


あまりにも予想外な質問に固まってしまう。


「いや、何でもないです。忘れてください」


これはもしかして、
いや、もしかしなくても


「なん…めに…」
「山上くん?」
「あ、いや…」


ノイローゼに違いない。

入隊して3日、あまりのハードワークと精神的苦痛により完全にノイローゼになっている。
訳の分からないうわ言をひたすらに呟いているのが何よりの証拠。
今朝優生さんの部屋に行き、何らかの悪魔的所業を受けてノイローゼスイッチがオンになってしまったんだ…。

山上君…可哀想に…。
一体優生さんは何をしたっていうんだ…。

あの優生さんがする事…考えただけで恐ろしい。


直属の上司として付きっきりで色々な事を教えてはいるものの…
相変わらず口をぱくぱくさせながら何かを呟き続ける山上君は、恐らく何も聞いていない。
症状はかなり深刻だ。


コンコン


「副長、山崎です」
「入れ」


これは副長に報告を、そう思って部屋へ入ると沖田隊長がいる。
最近巷で噂になっている人身売買の件のようだ。


「山上くんの件で…」
「なんか動いたか?」
「いや、怪しい動きはないんですけど…今朝優生さんの部屋へ行っていて」


副長の筆が止まる。


「その後ですね!ずっと何かを呟いてるんです!言葉にもなっていないような音を発しています」
「音?」
「はい…。恐らく、精神に異常をきたしているものと…」


"優生さんの部屋で何かあったのかもしれません"

例えそれが泣く子も黙る悪魔的所業であったとしても、"何か"がわかっていないなんて切腹もので、言わないでおいた。

筆を置き息をついて、考えるような副長の向こうで


「気が狂っちまったかィ」


アイマスクをして寝ようとしている人物が。


「まじか…」
「心を病んだ輩は何しでかすかわからねェ。過去入隊した新人隊士も気が触れて、刀振り回したり、土方さん殺そうとしたり、局長になるって近藤さんに殴りかかったり…大変でしたからねィ」


副長が頭を抱えるなんて、相当大変だったんだろう。


「おまけに外出禁止。ここじゃあ仕事の愚痴を聞く女も紛らわす楽しみも忘れる娯楽もねェ。爆発して当然でしょォよ」
「爆、発…」


沖田さんが、苛立つ副長を見て楽しそうにしていることよりも、山上君が暴れるかもしれないことで頭がいっぱいだ。

そんなことになれば、上司の僕ごと切腹に違いない。


「だからって、とっつぁんが連れてきたやつを気が触れたまま家に帰すわけにもいかねーだろ」
"ったく、どーすんだよ。こんな時に"


今はでかい山を追っている最中、局内での面倒事に構っている余裕はない。
だからと言って、このまま山上君を放っておいたら、いつ爆発して暴れ出すかわからない。


「ま、いつも一緒にいるのは山崎でィ。やられんならまず山崎だろーから、俺ァ関係ねェ」


ゴロンと横になった沖田隊長そっちのけで、タバコに火をつけた副長がギロリと僕を睨む。

とっても嫌な予感が…


「今日中になんとかしねェと、切腹な」
「結局かィィィィイィィイィ」
「うるせェ!やっぱ今だ!今腹切れ!」
「み、見廻り行ってきまーーす!」


……


沖田隊長が
"やられんならまず山崎"
なんて言うから、僕の山上君警戒ボルテージは上がりに上がっている。

見廻り中に、もし山上くんが刀を振り回し出したら…


「僕は、」
「ひっ…!!」
「あ、山崎さん、どうしたんですか」
「え、あ、いいいいいいや、なんでもないよ」


いけないいけない、あくまでも冷静にしていなければ…

深呼吸して前を向くと、見覚えのある3人組が甘味処から出てくる。


「あ、旦那ァ!」
「んぉ」
「あ、山崎さん、見廻りですか?お疲れ様です」


そうだ、今日の見廻りは諦めて、どうにか旦那と一緒に時間を潰せれば、万が一山上君が刀を振り回してもきっと旦那がささっと収めてくれるはず。
見廻りについては多少副長にどやされるだろうけど…
最優先事項は山上くんの発狂を防ぐ、もしくは被害を最小限に留めることだ。


「今日は新人と見廻りなんです!」
「新人?」
「はい!せっかくなので紹介しておきますね、こちら山上登くんです」
「………」
「誰もいないアルよ」
「もしかして、さっき素通りしてったやつじゃね?新人に置いて行かれたパターンじゃね?」


横も後ろも辺りを見回しても、誰もいない。
はずがないのに、


「えぇ?!どこ行った山上くん!!」
「新人に追い抜かれたアルな」
「そんなんだから万年モブなんだよ」
「銀さんも神楽ちゃんも言い過ぎですよ、モブにモブって言ったら傷つくじゃないですか。すみません山崎さ…」


数分前、旦那なら何かあっても助けてくれるだろうと思った自分を呪う。
こんなんなら山上君の刀に当たった方が何倍もマシだった。

別に泣いてないし。汗だし。準レギュくらいにはなってるし。


「はい新八泣かしたー」
「い、いやぁ、これは連帯責任ですよね」
「連帯責任っつか連携プレーで精神ぶっ殺されましたけど!!もういいです!山上君探してきます!!」


まだ近くにいるはずだ。
なみ…汗を拭って歩き出すと


「そこの角曲がってったぞ」


鼻をほじりながら、ここぞという時機転の利く旦那に嫌気がさす。


「山上くーん、万事屋の旦那に紹か…」


たった数分話していただけ。
角を曲がればすぐそこにいるだろうと思って声をかけたのに


「山上く、ん?」


人気のない道をゆっくり進むと、少し開けたところに血が溜まっている。
触ってみるとまだ温かい。

これは絶対に事件だ。
そして山上君が関わっている可能性大だ。


「副長に知らせなきゃ!」

監察日記- Another side-
3日目





山崎side



僕に直属の部下(仮)ができて3日目。

副長に"バレないように目を離すな"と言われ、僕は密かに山上君を監察している。


まだ寝ている時間だと思って部屋へ行ってみれば、隊服を着た山上君が食堂の方へ行く。
…あ、怪しい。
スパイの匂いがプンプンする!


朝食を食べた後、鼻歌を歌いながらお茶を入れ、湯呑みを2つ持って彼が向かった場所は、


「やはり」


優生さんの部屋。


優生さんは隊士の中でも早起きだ。

というか、早起きして隊服に着替え、二度寝している。
故に、優生さんの寝間着、着物姿を見たことがある人はいない。

隊士たちがちらほらと起き始める時間、出てきた優生さんはやっぱり隊服を着ている。


なにやら話し込んで部屋に入ってしまった。

まずい、副長にバレたら怒られる。
2人きりで部屋はまずすぎる。
何故だかわからないけど切腹って言われる。


……


「おはよー山崎くん」


あくびをしながら食堂へ来た優生さんはいつもと変わりなく、特に2人きりの部屋では何もなかったように、見えたのだけど。


「…た…に、」
「ん?なんか言った?」
「あ、なんでもないです」


見廻り中、山上君はどこか上の空で、やはり今朝何かあったようだ。

この監察、山崎退の目は誤魔化せまい。


「誰……に、」
「どうかした?」
「いや、なんでもないです」


空を見ては、宙を見ては、隊士を見ては、地面を見ては、何やらぶつぶつ言っている。

午前中からずっとこの調子。
正直、気味悪いんですけど…。


「どうかした?何か気になることがあるなら何でも相談して!」


とりあえず、何を呟いているのかだけでも知りたい。


「真選組って…みなさんて…どうしてここにいるんですか…?」
「えっ?」


あまりにも予想外な質問に固まってしまう。


「いや、何でもないです。忘れてください」


これはもしかして、
いや、もしかしなくても


「なん…めに…」
「山上くん?」
「あ、いや…」


ノイローゼに違いない。

入隊して3日、あまりのハードワークと精神的苦痛により完全にノイローゼになっている。
訳の分からないうわ言をひたすらに呟いているのが何よりの証拠。
今朝優生さんの部屋に行き、何らかの悪魔的所業を受けてノイローゼスイッチがオンになってしまったんだ…。

山上君…可哀想に…。
一体優生さんは何をしたっていうんだ…。

あの優生さんがする事…考えただけで恐ろしい。


直属の上司として付きっきりで色々な事を教えてはいるものの…
相変わらず口をぱくぱくさせながら何かを呟き続ける山上君は、恐らく何も聞いていない。
症状はかなり深刻だ。


コンコン


「副長、山崎です」
「入れ」


これは副長に報告を、そう思って部屋へ入ると沖田隊長がいる。
最近巷で噂になっている人身売買の件のようだ。


「山上くんの件で…」
「なんか動いたか?」
「いや、怪しい動きはないんですけど…今朝優生さんの部屋へ行っていて」


副長の筆が止まる。


「その後ですね!ずっと何かを呟いてるんです!言葉にもなっていないような音を発しています」
「音?」
「はい…。恐らく、精神に異常をきたしているものと…」


"優生さんの部屋で何かあったのかもしれません"

例えそれが泣く子も黙る悪魔的所業であったとしても、"何か"がわかっていないなんて切腹もので、言わないでおいた。

筆を置き息をついて、考えるような副長の向こうで


「気が狂っちまったかィ」


アイマスクをして寝ようとしている人物が。


「まじか…」
「心を病んだ輩は何しでかすかわからねェ。過去入隊した新人隊士も気が触れて、刀振り回したり、土方さん殺そうとしたり、局長になるって近藤さんに殴りかかったり…大変でしたからねィ」


副長が頭を抱えるなんて、相当大変だったんだろう。


「おまけに外出禁止。ここじゃあ仕事の愚痴を聞く女も紛らわす楽しみも忘れる娯楽もねェ。爆発して当然でしょォよ」
「爆、発…」


沖田さんが、苛立つ副長を見て楽しそうにしていることよりも、山上君が暴れるかもしれないことで頭がいっぱいだ。

そんなことになれば、上司の僕ごと切腹に違いない。


「だからって、とっつぁんが連れてきたやつを気が触れたまま家に帰すわけにもいかねーだろ」
"ったく、どーすんだよ。こんな時に"


今はでかい山を追っている最中、局内での面倒事に構っている余裕はない。
だからと言って、このまま山上君を放っておいたら、いつ爆発して暴れ出すかわからない。


「ま、いつも一緒にいるのは山崎でィ。やられんならまず山崎だろーから、俺ァ関係ねェ」


ゴロンと横になった沖田隊長そっちのけで、タバコに火をつけた副長がギロリと僕を睨む。

とっても嫌な予感が…


「今日中になんとかしねェと、切腹な」
「結局かィィィィイィィイィ」
「うるせェ!やっぱ今だ!今腹切れ!」
「み、見廻り行ってきまーーす!」


……


沖田隊長が
"やられんならまず山崎"
なんて言うから、僕の山上君警戒ボルテージは上がりに上がっている。

見廻り中に、もし山上くんが刀を振り回し出したら…


「僕は、」
「ひっ…!!」
「あ、山崎さん、どうしたんですか」
「え、あ、いいいいいいや、なんでもないよ」


いけないいけない、あくまでも冷静にしていなければ…

深呼吸して前を向くと、見覚えのある3人組が甘味処から出てくる。


「あ、旦那ァ!」
「んぉ」
「あ、山崎さん、見廻りですか?お疲れ様です」


そうだ、今日の見廻りは諦めて、どうにか旦那と一緒に時間を潰せれば、万が一山上君が刀を振り回してもきっと旦那がささっと収めてくれるはず。
見廻りについては多少副長にどやされるだろうけど…
最優先事項は山上くんの発狂を防ぐ、もしくは被害を最小限に留めることだ。


「今日は新人と見廻りなんです!」
「新人?」
「はい!せっかくなので紹介しておきますね、こちら山上登くんです」
「………」
「誰もいないアルよ」
「もしかして、さっき素通りしてったやつじゃね?新人に置いて行かれたパターンじゃね?」


横も後ろも辺りを見回しても、誰もいない。
はずがないのに、


「えぇ?!どこ行った山上くん!!」
「新人に追い抜かれたアルな」
「そんなんだから万年モブなんだよ」
「銀さんも神楽ちゃんも言い過ぎですよ、モブにモブって言ったら傷つくじゃないですか。すみません山崎さ…」


数分前、旦那なら何かあっても助けてくれるだろうと思った自分を呪う。
こんなんなら山上君の刀に当たった方が何倍もマシだった。

別に泣いてないし。汗だし。準レギュくらいにはなってるし。


「はい新八泣かしたー」
「い、いやぁ、これは連帯責任ですよね」
「連帯責任っつか連携プレーで精神ぶっ殺されましたけど!!もういいです!山上君探してきます!!」


まだ近くにいるはずだ。
なみ…汗を拭って歩き出すと


「そこの角曲がってったぞ」


鼻をほじりながら、ここぞという時機転の利く旦那に嫌気がさす。


「山上くーん、万事屋の旦那に紹か…」


たった数分話していただけ。
角を曲がればすぐそこにいるだろうと思って声をかけたのに


「山上く、ん?」


人気のない道をゆっくり進むと、少し開けたところに血が溜まっている。
触ってみるとまだ温かい。

これは絶対に事件だ。
そして山上君が関わっている可能性大だ。


「副長に知らせなきゃ!」


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