3日目
優生side
「どうしてですか!」
優生は激怒した。
なんて呑気なことを言ってる場合ではない。
「お前ェがいなくても片付けられる、そんだけだ」
「でも、こんな急に!」
土方さんに呼び出されたと思ったら、
"例の人身売買の摘発から外れろ"と。
摘発は明日の朝一だ。
今までも、小さい山だの屯所が空になるだの、監察を山崎くんだけに任せられないだの、、、それらしい理由をつけては大きな山の前線から外されることはあった。
でも前日の昼過ぎなんて急すぎる。
「私が、女だからですか」
「なんでそうなる」
「私が女である事以外に、他の隊士との差が思いつかないからです。剣の腕なら」
「わかってるよ。お前ェの腕は総悟並みに確かだ。少人数で済むのに大勢で押しかけるこたァねーだろ?」
とても悔しい。
私が女じゃなかったら、考えたくないけど、そうとしか思えない。
自分の中に未だメスだのオスだのという区別が存在することも、土方さんがやっぱりを私を女だと区別していることも、されていると思ってしまうことも、悔しくて仕方ない。
「だったら少人数の中に私を入れない理由はなんですか」
「くじ引き」
「嘘だ!絶対嘘!!」
「原田も斎藤も山崎もハズレで屯所待機。みんな従ってんだからお前ェも従え。それともなんだ、"女"だから特別扱いした方がいいか?」
「うぅっ、んんん、うぅーーー、わがりまじだ」
「悶えんな」
こんなに悔しいのに、土方さんはまるで相手にしてくれない。
いつも本当の理由を教えてもらえてない気がするまま、押し黙るしかなくなるような事を言ってくる。
それに、私が"女だから"と言ったことを、心なしか怒っている気がする。
「そういや、山上、」
タバコを吸いながら、珍しく土方さんが山上君の話を持ち出す。
「気が触れたらしい。気をつけろよ」
「え、」
真選組の新人隊士が発狂することがたまにあるのは知っている。
けど、
ドンドンドン!
「副長!!失礼します!山崎です!」
「うるせェ!!!」
「すみません!あの、山上君が…山上君が…失踪しました!!」
「はァ?!まじか…」
こんなに息を切らして汗だくの山崎君、初めて見る。
発狂して暴れまわって市民を傷つけたら…と考えたらそりゃあ慌てるだろう。
けど、
「あの、山上君、今朝は普通でしたし…気が触れたっていうのは何かの間違いじゃぁ…」
「だとしても、現場に血が!事件に巻き込まれた可能性が!」
「逃げ出したんだろ。見廻り中に事件に見せかけて失踪…お決まりのパターンだな。どうせ実家だろ、放っとけ、今は忙しい」
今朝私に、わざわざをお茶を淹れて弟子入りしようとしてきた子が、気を病んだり脱走まがいな帰り方をするだろうか?
フェイク…?
だとするなら、私にも何かしら病んでいるところを見せた方が自然なはず。
「本当に、挨拶なしに…」
寂しそうな顔をする山崎くんは、不安を抱えつつも土方さんの言うことにも一理感じているのだろう。
たしかにお決まりのパターンではあるし。
「僕、山上くんの実家見てきます。こっそり覗いて、いるならそれでいいし」
君、意外と面倒見がいいのね。
「私も、明日の山、待機になってくすぶってるからついてく」
納得しきれていないし。
暇だし。
戦闘モード入りかけだったし。
私を屯所待機にした土方さんが悪いんだし。
「勝手にしろ」
お許しも出たことだし。
こっちの山のがでかくなっても知りませんよーだ。
……
「いません、ね」
「いないねこれ、帰ってないね、まじで事件だね」
山上君の実家前にて張り込みをしているが、どうも帰っていないらしい。
匿っているそぶりもない。
見廻りに出ている隊士に情報収集を頼んだところ、ここらへんでは見ない車を見たという話が2件。
たったの2件では動きづらいのだけど。
「もう日付変わるし、帰ろうか」
「そうですね、どうせ明日も時間ありますし」
「隊士が事件に巻き込まれたなら、明日待機組のみんなで捜索に当たってみよう」
「そうですね!」
……
って………
「え、松平長官の推しメンいないってやばくない?」
2人でのんびり帰って、ご飯を食べている場合ではないのでは。
「推しメンってアイドルじゃないんですから」
「私はいいけど山崎君やばくない?」
「えっ」
持っていたアンパンを落としたことにも気づかないほど思考停止して、じわじわとことの重大さを認識している。
間違いなく、首が飛ぶ。
いや、ぶっ飛ぶ。
「探しましょう!!!!」
「いや、ちょ、今日は寝よう!!!」
「僕死にたくないですぅぅ!」
「大丈夫だから!明日出直そ!みんなの力借りてさ!」
正直、何が大丈夫なのかわからない。
明らかに何かしらの事件が起こっているのに、なんであんなに"明日も暇だし今日は帰ろうか。"でのんびり帰ってきたのかわからない。
クライマーズハイ的な、ジケンノニオイーズハイ的な、ファブリーズ的なものが働いてるに違いない。
なんとか山崎君を落ち着かせ、アンパンを食べさせ、明日本格的に山上君(じゃないかもしれない被害者)の捜索にあたることにした。
監察日記- Another side-
3日目
優生side
「どうしてですか!」
優生は激怒した。
なんて呑気なことを言ってる場合ではない。
「お前ェがいなくても片付けられる、そんだけだ」
「でも、こんな急に!」
土方さんに呼び出されたと思ったら、
"例の人身売買の摘発から外れろ"と。
摘発は明日の朝一だ。
今までも、小さい山だの屯所が空になるだの、監察を山崎くんだけに任せられないだの、、、それらしい理由をつけては大きな山の前線から外されることはあった。
でも前日の昼過ぎなんて急すぎる。
「私が、女だからですか」
「なんでそうなる」
「私が女である事以外に、他の隊士との差が思いつかないからです。剣の腕なら」
「わかってるよ。お前ェの腕は総悟並みに確かだ。少人数で済むのに大勢で押しかけるこたァねーだろ?」
とても悔しい。
私が女じゃなかったら、考えたくないけど、そうとしか思えない。
自分の中に未だメスだのオスだのという区別が存在することも、土方さんがやっぱりを私を女だと区別していることも、されていると思ってしまうことも、悔しくて仕方ない。
「だったら少人数の中に私を入れない理由はなんですか」
「くじ引き」
「嘘だ!絶対嘘!!」
「原田も斎藤も山崎もハズレで屯所待機。みんな従ってんだからお前ェも従え。それともなんだ、"女"だから特別扱いした方がいいか?」
「うぅっ、んんん、うぅーーー、わがりまじだ」
「悶えんな」
こんなに悔しいのに、土方さんはまるで相手にしてくれない。
いつも本当の理由を教えてもらえてない気がするまま、押し黙るしかなくなるような事を言ってくる。
それに、私が"女だから"と言ったことを、心なしか怒っている気がする。
「そういや、山上、」
タバコを吸いながら、珍しく土方さんが山上君の話を持ち出す。
「気が触れたらしい。気をつけろよ」
「え、」
真選組の新人隊士が発狂することがたまにあるのは知っている。
けど、
ドンドンドン!
「副長!!失礼します!山崎です!」
「うるせェ!!!」
「すみません!あの、山上君が…山上君が…失踪しました!!」
「はァ?!まじか…」
こんなに息を切らして汗だくの山崎君、初めて見る。
発狂して暴れまわって市民を傷つけたら…と考えたらそりゃあ慌てるだろう。
けど、
「あの、山上君、今朝は普通でしたし…気が触れたっていうのは何かの間違いじゃぁ…」
「だとしても、現場に血が!事件に巻き込まれた可能性が!」
「逃げ出したんだろ。見廻り中に事件に見せかけて失踪…お決まりのパターンだな。どうせ実家だろ、放っとけ、今は忙しい」
今朝私に、わざわざをお茶を淹れて弟子入りしようとしてきた子が、気を病んだり脱走まがいな帰り方をするだろうか?
フェイク…?
だとするなら、私にも何かしら病んでいるところを見せた方が自然なはず。
「本当に、挨拶なしに…」
寂しそうな顔をする山崎くんは、不安を抱えつつも土方さんの言うことにも一理感じているのだろう。
たしかにお決まりのパターンではあるし。
「僕、山上くんの実家見てきます。こっそり覗いて、いるならそれでいいし」
君、意外と面倒見がいいのね。
「私も、明日の山、待機になってくすぶってるからついてく」
納得しきれていないし。
暇だし。
戦闘モード入りかけだったし。
私を屯所待機にした土方さんが悪いんだし。
「勝手にしろ」
お許しも出たことだし。
こっちの山のがでかくなっても知りませんよーだ。
……
「いません、ね」
「いないねこれ、帰ってないね、まじで事件だね」
山上君の実家前にて張り込みをしているが、どうも帰っていないらしい。
匿っているそぶりもない。
見廻りに出ている隊士に情報収集を頼んだところ、ここらへんでは見ない車を見たという話が2件。
たったの2件では動きづらいのだけど。
「もう日付変わるし、帰ろうか」
「そうですね、どうせ明日も時間ありますし」
「隊士が事件に巻き込まれたなら、明日待機組のみんなで捜索に当たってみよう」
「そうですね!」
……
って………
「え、松平長官の推しメンいないってやばくない?」
2人でのんびり帰って、ご飯を食べている場合ではないのでは。
「推しメンってアイドルじゃないんですから」
「私はいいけど山崎君やばくない?」
「えっ」
持っていたアンパンを落としたことにも気づかないほど思考停止して、じわじわとことの重大さを認識している。
間違いなく、首が飛ぶ。
いや、ぶっ飛ぶ。
「探しましょう!!!!」
「いや、ちょ、今日は寝よう!!!」
「僕死にたくないですぅぅ!」
「大丈夫だから!明日出直そ!みんなの力借りてさ!」
正直、何が大丈夫なのかわからない。
明らかに何かしらの事件が起こっているのに、なんであんなに"明日も暇だし今日は帰ろうか。"でのんびり帰ってきたのかわからない。
クライマーズハイ的な、ジケンノニオイーズハイ的な、ファブリーズ的なものが働いてるに違いない。
なんとか山崎君を落ち着かせ、アンパンを食べさせ、明日本格的に山上君(じゃないかもしれない被害者)の捜索にあたることにした。
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