4日目
「おはよう!……って」
誰も、いない。
土方さん達アタリ組がとっくに摘発に向かったことは知っている。
え、ハズレ組は?
ふと目に入った紙には
"副長に全休いただいので実家に帰ります。"
「OLかよ」
"久々のお休みなので、少し早めに昨日から午後休いただきました。"
「いやOLかよ」
"壊れちまったんで早急に修理お願いしやす。"
「これ持たずになに持ってったの総悟くん大丈夫なの」
"明日、午前休いただきます。"
"子供のお遊戯会があるのでお休みしますm(__)m"
"お土産です。みんなで食べてください♪"
「オフィスかここはァ!!!!!!!!」
昨日山上君が失踪したことは、全隊士に報告がいってるはずなのに。
探そうとは思わないのか薄情者め!!
お遊戯会ってなんだ、土産ってどこのだ薄情者め!!
そもそも、屯所待機命令は休みではない。
もし応援が必要になったらどうするんだ。
「優生さん、おはようございます」
「山崎くん、今日も2人で頑張ろうね」
……
昨日の山崎君が見た現場と、近隣住民の目撃証言から、誰かがどこかを怪我したまま、車に乗せられたと考えるのが自然だった。
それが山上君でなくても、事件には変わりない。
付近の聞き込み、空き家の捜索、職務質問、
「山上くーん?いるー?」
「……」
「ハズレですね」
「なんかそれイラっとする」
「山上くん、いたら返事してー!」
「ニャア」
「あーら、可愛い!山上君実は猫だったの?陽だまりの」
「行きますよ、優生さん」
「誰かいるかー」
「適当にならないでください」
「今頃副長達は何してるかなー」
「まだ片付いてないと思いますよ」
「こっそり参加しに」
「探しますよ」
どれも手応えはなく。
急に仕事がなくなりどうせ暇なこと、松平長官の推しメンであり傷一つつけて返せないこと、などなどが私たちを屯所から遠ざけていた。
が、正直進展する気がしない。
このまましらみ潰しに廃墟やらコンテナやら廃工場を当たってもキリがないし。
車ならもうとっくにどこか遠くへ、なんてことも充分あり得る。
一日中探し回り、手がかりも手応えも何もなく。
お腹すいたし、もうそろそろ一日終わるし、なんかもう…面倒くさくなってきた。
「そういえばここ、人身売買してるやつらが使ってるって情報があったところです」
「そろそろみんな屯所戻ってきたかなー」
「これ中から鍵かかってます!怪しいです!!」
「わたしもドーンと一発やりたかったなー」
沈んだ夕日を眺めながら、一仕事終えて帰ってくる副長達の姿を思い浮かべる。
「優生さん、手伝ってくださいよぉ」
私だって活躍したい。
私だってみんなと同じように戦いたい。
真選組の役に立ちたい。
もちろんその気持ちに少しも嘘はない。
でも、
でも本当はそんなことより、
土方さんを守りたい。
1番近くで守りたい。
だから悔しかった。
側にいられないのが何より悔しかった。
姿を見ないと、どうしても気になってしまう。
どんなに小さな山だって、生きて帰って来る保証なんてない。
ましてや傷一つ負わせたくないのに。
早く、会いたい。
「ザキヤマ、どきな」
「えっ?」
ここを開けたら、帰ります。
山崎君すまない。
カチッ
「えっ?!ちょ、」
今朝総悟くんに修理を頼まれたシロモノを肩に担ぐ。
私を早く土方さんの元へ行かせてくれるためだった(違う)なんて、気が利きすぎるじゃないか(違う)。
ドゴーーーーン!!!
鉄の扉が木の葉のように散る。
ちゃんと修理できているようだ。
「山上くーん?いるー?」
「…優生さん?います!」
「……ここもハズレかー、全くどこに」
さあ、帰
「え?今なんつった?」
「山上います!」
「えっ、ちょっ、山崎くん!山上くん見つけた!!急に見つけたよ!!」
「なんの確信もなくよく扉吹き飛ばしましたね…」
砂埃の向こうで何やら声がする。
犬ころが何だって?
女がなんだって?
お巡りさん、なめちゃいけませんよ。
「イライラしたからって気軽にバズーカ使わないでください。沖田隊長じゃあるまいし…」
「まあまあ山崎くん、ほら、適任者がここに」
恐らくは、情報交換が上手くいっておらず自分たちが出向くところを呑気に待っていたのだろう。
どうして船が来ないことを疑問に思わないのか、と疑問に思うけど。
こんなにベラベラ喋り倒して、殺していいですよと言わんばかりだ。
そして私は、早く帰りたい。
「天人様を逮捕なんてしたら国際問題だよねぇ」
一応、確認。
「あー、たしかにそうですね。それじゃあ」
それじゃあ、関係者は全員捕まえなければ。
「死人に口なし」
人身売買は重罪だ。
そしてこいつらは、しょっぴいて拷問しても何の情報も持ってない下っ端だろう。
拷問されて極刑にされるより、何も知らずゲラゲラと下品に笑っている方が、きっと幸せだ。
綺麗事かもしれない。ずるいかもしれない。
でもこれは、私なりの最後の気遣いでもある。
刀を抜き、死を覚悟させるより前に振り下ろす。
何も感じない。
わけじゃない。
「んじゃ、帰ろうか。山上くん」
謝るのも、同情するのも、悲しむのも、違う気がして。
どうしていいかわからなくて、いつも通りに振る舞う。
「逃げ出したと思ったら、こんなとこで腰抜かしてやがる」
っ…!
気づけば、一台だったはずの車が増えていて。
土方さんは残党狩りに来ないはずなのに。
声を聞いて、思わず駆け寄りそうになり、足が前へ進む。
おっと、いけないいけない。
仕事中でした。
「山上くんも、手当だね」
腰を抜かした山上君に手を差し出すと、
「……あなたはっ!…あの時の…!優生さんがっ…」
まん丸な目で見つめられたかと思えば、立ち上がったまま掴まれた手をグイッと引かれ、
「会いたかったです、ずっと」
抱きしめられた。
誰かが息を飲む音がする。
「えっ、ど、どういう…」
何故こうなった…?
"ずっと"?
全く話が読めませんが。
「や、山上くん、それは…」
「あーあ、やっちゃいやしたねェ」
山崎君の慌てた声と、総悟くんの楽しそうな声と、
「おい、さっさと車乗れ」
私たちを引き剥がした土方さんの声。
そのまま腕を引かれてパトカーに乗せられたと思えば、土方さんはすぐに発進してしまった。
「あの、保護された人たち乗せなくて大丈夫ですか?」
「火」
「はいっ」
屯所まで、土方さんは何を言っても機嫌が悪そうに返すだけだった。
監察日記- Another side-
4日目
「おはよう!……って」
誰も、いない。
土方さん達アタリ組がとっくに摘発に向かったことは知っている。
え、ハズレ組は?
ふと目に入った紙には
"副長に全休いただいので実家に帰ります。"
「OLかよ」
"久々のお休みなので、少し早めに昨日から午後休いただきました。"
「いやOLかよ」
"壊れちまったんで早急に修理お願いしやす。"
「これ持たずになに持ってったの総悟くん大丈夫なの」
"明日、午前休いただきます。"
"子供のお遊戯会があるのでお休みしますm(__)m"
"お土産です。みんなで食べてください♪"
「オフィスかここはァ!!!!!!!!」
昨日山上君が失踪したことは、全隊士に報告がいってるはずなのに。
探そうとは思わないのか薄情者め!!
お遊戯会ってなんだ、土産ってどこのだ薄情者め!!
そもそも、屯所待機命令は休みではない。
もし応援が必要になったらどうするんだ。
「優生さん、おはようございます」
「山崎くん、今日も2人で頑張ろうね」
……
昨日の山崎君が見た現場と、近隣住民の目撃証言から、誰かがどこかを怪我したまま、車に乗せられたと考えるのが自然だった。
それが山上君でなくても、事件には変わりない。
付近の聞き込み、空き家の捜索、職務質問、
「山上くーん?いるー?」
「……」
「ハズレですね」
「なんかそれイラっとする」
「山上くん、いたら返事してー!」
「ニャア」
「あーら、可愛い!山上君実は猫だったの?陽だまりの」
「行きますよ、優生さん」
「誰かいるかー」
「適当にならないでください」
「今頃副長達は何してるかなー」
「まだ片付いてないと思いますよ」
「こっそり参加しに」
「探しますよ」
どれも手応えはなく。
急に仕事がなくなりどうせ暇なこと、松平長官の推しメンであり傷一つつけて返せないこと、などなどが私たちを屯所から遠ざけていた。
が、正直進展する気がしない。
このまましらみ潰しに廃墟やらコンテナやら廃工場を当たってもキリがないし。
車ならもうとっくにどこか遠くへ、なんてことも充分あり得る。
一日中探し回り、手がかりも手応えも何もなく。
お腹すいたし、もうそろそろ一日終わるし、なんかもう…面倒くさくなってきた。
「そういえばここ、人身売買してるやつらが使ってるって情報があったところです」
「そろそろみんな屯所戻ってきたかなー」
「これ中から鍵かかってます!怪しいです!!」
「わたしもドーンと一発やりたかったなー」
沈んだ夕日を眺めながら、一仕事終えて帰ってくる副長達の姿を思い浮かべる。
「優生さん、手伝ってくださいよぉ」
私だって活躍したい。
私だってみんなと同じように戦いたい。
真選組の役に立ちたい。
もちろんその気持ちに少しも嘘はない。
でも、
でも本当はそんなことより、
土方さんを守りたい。
1番近くで守りたい。
だから悔しかった。
側にいられないのが何より悔しかった。
姿を見ないと、どうしても気になってしまう。
どんなに小さな山だって、生きて帰って来る保証なんてない。
ましてや傷一つ負わせたくないのに。
早く、会いたい。
「ザキヤマ、どきな」
「えっ?」
ここを開けたら、帰ります。
山崎君すまない。
カチッ
「えっ?!ちょ、」
今朝総悟くんに修理を頼まれたシロモノを肩に担ぐ。
私を早く土方さんの元へ行かせてくれるためだった(違う)なんて、気が利きすぎるじゃないか(違う)。
ドゴーーーーン!!!
鉄の扉が木の葉のように散る。
ちゃんと修理できているようだ。
「山上くーん?いるー?」
「…優生さん?います!」
「……ここもハズレかー、全くどこに」
さあ、帰
「え?今なんつった?」
「山上います!」
「えっ、ちょっ、山崎くん!山上くん見つけた!!急に見つけたよ!!」
「なんの確信もなくよく扉吹き飛ばしましたね…」
砂埃の向こうで何やら声がする。
犬ころが何だって?
女がなんだって?
お巡りさん、なめちゃいけませんよ。
「イライラしたからって気軽にバズーカ使わないでください。沖田隊長じゃあるまいし…」
「まあまあ山崎くん、ほら、適任者がここに」
恐らくは、情報交換が上手くいっておらず自分たちが出向くところを呑気に待っていたのだろう。
どうして船が来ないことを疑問に思わないのか、と疑問に思うけど。
こんなにベラベラ喋り倒して、殺していいですよと言わんばかりだ。
そして私は、早く帰りたい。
「天人様を逮捕なんてしたら国際問題だよねぇ」
一応、確認。
「あー、たしかにそうですね。それじゃあ」
それじゃあ、関係者は全員捕まえなければ。
「死人に口なし」
人身売買は重罪だ。
そしてこいつらは、しょっぴいて拷問しても何の情報も持ってない下っ端だろう。
拷問されて極刑にされるより、何も知らずゲラゲラと下品に笑っている方が、きっと幸せだ。
綺麗事かもしれない。ずるいかもしれない。
でもこれは、私なりの最後の気遣いでもある。
刀を抜き、死を覚悟させるより前に振り下ろす。
何も感じない。
わけじゃない。
「んじゃ、帰ろうか。山上くん」
謝るのも、同情するのも、悲しむのも、違う気がして。
どうしていいかわからなくて、いつも通りに振る舞う。
「逃げ出したと思ったら、こんなとこで腰抜かしてやがる」
っ…!
気づけば、一台だったはずの車が増えていて。
土方さんは残党狩りに来ないはずなのに。
声を聞いて、思わず駆け寄りそうになり、足が前へ進む。
おっと、いけないいけない。
仕事中でした。
「山上くんも、手当だね」
腰を抜かした山上君に手を差し出すと、
「……あなたはっ!…あの時の…!優生さんがっ…」
まん丸な目で見つめられたかと思えば、立ち上がったまま掴まれた手をグイッと引かれ、
「会いたかったです、ずっと」
抱きしめられた。
誰かが息を飲む音がする。
「えっ、ど、どういう…」
何故こうなった…?
"ずっと"?
全く話が読めませんが。
「や、山上くん、それは…」
「あーあ、やっちゃいやしたねェ」
山崎君の慌てた声と、総悟くんの楽しそうな声と、
「おい、さっさと車乗れ」
私たちを引き剥がした土方さんの声。
そのまま腕を引かれてパトカーに乗せられたと思えば、土方さんはすぐに発進してしまった。
「あの、保護された人たち乗せなくて大丈夫ですか?」
「火」
「はいっ」
屯所まで、土方さんは何を言っても機嫌が悪そうに返すだけだった。
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