5日目(答え合わせ)




朝。

優生さんたちと顔を合わせるのが気まずくて少し早く食堂へ行ったのに、昨日の僕の失態は既に全隊士の知るところになっていた。


「よぉ、山上!昨日は大変だったな」


絶対に、沖田さんのせいだ…。


「いやー、それにしても…くくくっ、お前、優生相手によくそんな想像できるよな!」
「いろんな意味で無理だわ、優生は!ブハッ」
「おいおい、副長と優生ならあり得るぞ!」
「冗談になんねぇって!ブフォ!」


みんなして、そんなに笑わなくたって。

恥ずかしすぎて言い返せないでいると、


「なーにが冗談になんねェって?」
「何があり得るって?」
「げっ!副長…」
「優生、」


後ろから声がして、隊士たちが固まる。

仁王立ちした仁王像の様な形相の2人はとってもお似…恐ろしい。


「誰相手だとそんな想像できねェんだよ」
「い、いやぁ、そのォ」
「"いろんな意味"で無理って何」
「いや無理だろ」
「何か言いましたか副長」
「普通に考えて無理だろ」
「は?!私たち今仲間じゃないんですか?!」


なんだか話が逸れてきたけど、言いふらしたのもこの人なら


「まあまあ、チェリ上の言い分も聞きましょうや」


話を戻すのもこの人で。


「何も聞かずにチェリ上をからかうのは可哀想でィ」
「チェリ上って…」
「よってたかって、チェリ上だって傷つきまさァ」
「その呼び方が1番傷ついてます」
「チェリ上が何を見てどう思ったのか、聞く価値はあると思いやすがねィ」


あれ…なんか、目から汗が…


「そうだな、話せ」
「え、」
「ここにいるうちは全てがテストだ。ただ覗き見してました、は切腹」


ここにいるうちは全てがテスト…。


「わかりました」


どうせ今より最悪な状況になることはない。
それにきっと、副長は挽回のチャンスをくれているんだ。

ならば僕ができることは、そのチャンスに全力で応えることのみ。



「昨日、報告書を出しに副長の部屋に行ったんです。その時たまたま優生さんが入って行く所が見えて…扉の前で二人の話声が聞こえて、なぜだかわからないけど違和感?を感じで、入っちゃいけないと思ったんです」
「ほぉ」
「盗み聞きとかのつもりはなかったんですけど、なんかタイミングを見失っちゃって。そうしているうちにサラシとかボタンの話になりまして…。なんだか、2人の雰囲気がいつもと違うような感じがして…。あ、優生さんは土方副長の肩を揉んでましたけど、それは違う気がするんです。近藤局長がやるみたいな」
「あー、近藤さんよくやるなぁ」
「頼みごとがあるときとかな!」
「ちょっとうるさい」


ほぼ野次のような相槌も、僕の話を真剣に聞く目線も、気にしている余裕はなく、


「優生さんて、ここには似つかわしくないくらい所作が女性らしいじゃないですか。例えば食事の前には両手を合わせていただきますをちゃんと言うし、湯飲みは両手で持つし、一つ一つが丁寧なのにいつも少年ぽいなぁって思ってて。髪が短いからかと思ってたんですけど。きっと、サラシを巻いてない優生さんに無意識に女性らしさを感じていたのかもしれません」


少しずつ、昨日のことを思い出しながら話す。


「それで、仕事が終わった副長が、なんかスイッチが入ったみたいになって、優生さんで遊んでる感じというか、楽しそうに……、優生さんも珍しく余裕がなさそうで」
「ちょっとあれ見られてたの」
「色恋は法度違反ですけど、やっぱり副長は仕事大変そうですし、みんな目をつぶってるのかなーなんて」
「ん?」
「え?そうなの?」


隊士たちがチラチラと副長と優生さんを見る。
沖田さんは寝ている、様に見えて、きっとちゃんと聞いている。


「あ!山上は俺たちのこと知らないから教えてやらないとって言ってました!服を脱ぎながら、風呂の前か後か選べ、疲れたから癒せとも」


ゴクリ、と何人かの音が重なる。


「そこで沖田さんが来て、生きてる事を実感したいだとか、お楽しみのお取り込み中だとか、1日に3人は特別だとか、ドSとかドMとかご、ゴリゴリされないと抜けないとか言われたら、そう思うじゃないですかぁ」


話しながら悲しくなってきた。
そしてやっぱり恥ずかしすぎる。


「ご、ごめんね。ほら、ここの人って筋肉質だし、副長は特に凝りがひどいから…全身マッサージしようと思うと結構重労働で。汗もかくし、1日に何人もやるの大変なんだよね」


恥ずかしそうに話す優生さんは、まさか自分の発言までそんな風に捉えられていたとは思わなかったのだろう。
当たり前だ。初めから、何も意味深な事は言っていないのだから。


「あのぉ、もしかして、副長も沖田隊長も、わざとそういう言い方をしてたんじゃないですか?」
「え?」


どこにいたのか、始めからいたのか、いつからいたのか、山崎さんが手を上げながら前へ出てくる。


「山崎!お前直属の上司のくせに出番少ないからって適当なこと言ってんじゃねぇ!」
「完全にお前が出てくるとこじゃねーし!」
「え、ちょ、そんな」
「コラァ、山崎!!」
「優生さんまでっ!」


わざとなんて、考えもしなかった。
だとするなら、副長たちにどんなメリットが…?

聞く前に、山崎さんは隊士に囲まれていた。
優生さんも、土方副長まで参戦している。


なんだか山崎さんに申し訳ない気持ちになり目をそらすと、沖田さんが手招きしていることに気づく。

やっぱり、起きていたらしい。

監察日記
5日目(答え合わせ)




朝。

優生さんたちと顔を合わせるのが気まずくて少し早く食堂へ行ったのに、昨日の僕の失態は既に全隊士の知るところになっていた。


「よぉ、山上!昨日は大変だったな」


絶対に、沖田さんのせいだ…。


「いやー、それにしても…くくくっ、お前、優生相手によくそんな想像できるよな!」
「いろんな意味で無理だわ、優生は!ブハッ」
「おいおい、副長と優生ならあり得るぞ!」
「冗談になんねぇって!ブフォ!」


みんなして、そんなに笑わなくたって。

恥ずかしすぎて言い返せないでいると、


「なーにが冗談になんねェって?」
「何があり得るって?」
「げっ!副長…」
「優生、」


後ろから声がして、隊士たちが固まる。

仁王立ちした仁王像の様な形相の2人はとってもお似…恐ろしい。


「誰相手だとそんな想像できねェんだよ」
「い、いやぁ、そのォ」
「"いろんな意味"で無理って何」
「いや無理だろ」
「何か言いましたか副長」
「普通に考えて無理だろ」
「は?!私たち今仲間じゃないんですか?!」


なんだか話が逸れてきたけど、言いふらしたのもこの人なら


「まあまあ、チェリ上の言い分も聞きましょうや」


話を戻すのもこの人で。


「何も聞かずにチェリ上をからかうのは可哀想でィ」
「チェリ上って…」
「よってたかって、チェリ上だって傷つきまさァ」
「その呼び方が1番傷ついてます」
「チェリ上が何を見てどう思ったのか、聞く価値はあると思いやすがねィ」


あれ…なんか、目から汗が…


「そうだな、話せ」
「え、」
「ここにいるうちは全てがテストだ。ただ覗き見してました、は切腹」


ここにいるうちは全てがテスト…。


「わかりました」


どうせ今より最悪な状況になることはない。
それにきっと、副長は挽回のチャンスをくれているんだ。

ならば僕ができることは、そのチャンスに全力で応えることのみ。



「昨日、報告書を出しに副長の部屋に行ったんです。その時たまたま優生さんが入って行く所が見えて…扉の前で二人の話声が聞こえて、なぜだかわからないけど違和感?を感じで、入っちゃいけないと思ったんです」
「ほぉ」
「盗み聞きとかのつもりはなかったんですけど、なんかタイミングを見失っちゃって。そうしているうちにサラシとかボタンの話になりまして…。なんだか、2人の雰囲気がいつもと違うような感じがして…。あ、優生さんは土方副長の肩を揉んでましたけど、それは違う気がするんです。近藤局長がやるみたいな」
「あー、近藤さんよくやるなぁ」
「頼みごとがあるときとかな!」
「ちょっとうるさい」


ほぼ野次のような相槌も、僕の話を真剣に聞く目線も、気にしている余裕はなく、


「優生さんて、ここには似つかわしくないくらい所作が女性らしいじゃないですか。例えば食事の前には両手を合わせていただきますをちゃんと言うし、湯飲みは両手で持つし、一つ一つが丁寧なのにいつも少年ぽいなぁって思ってて。髪が短いからかと思ってたんですけど。きっと、サラシを巻いてない優生さんに無意識に女性らしさを感じていたのかもしれません」


少しずつ、昨日のことを思い出しながら話す。


「それで、仕事が終わった副長が、なんかスイッチが入ったみたいになって、優生さんで遊んでる感じというか、楽しそうに……、優生さんも珍しく余裕がなさそうで」
「ちょっとあれ見られてたの」
「色恋は法度違反ですけど、やっぱり副長は仕事大変そうですし、みんな目をつぶってるのかなーなんて」
「ん?」
「え?そうなの?」


隊士たちがチラチラと副長と優生さんを見る。
沖田さんは寝ている、様に見えて、きっとちゃんと聞いている。


「あ!山上は俺たちのこと知らないから教えてやらないとって言ってました!服を脱ぎながら、風呂の前か後か選べ、疲れたから癒せとも」


ゴクリ、と何人かの音が重なる。


「そこで沖田さんが来て、生きてる事を実感したいだとか、お楽しみのお取り込み中だとか、1日に3人は特別だとか、ドSとかドMとかご、ゴリゴリされないと抜けないとか言われたら、そう思うじゃないですかぁ」


話しながら悲しくなってきた。
そしてやっぱり恥ずかしすぎる。


「ご、ごめんね。ほら、ここの人って筋肉質だし、副長は特に凝りがひどいから…全身マッサージしようと思うと結構重労働で。汗もかくし、1日に何人もやるの大変なんだよね」


恥ずかしそうに話す優生さんは、まさか自分の発言までそんな風に捉えられていたとは思わなかったのだろう。
当たり前だ。初めから、何も意味深な事は言っていないのだから。


「あのぉ、もしかして、副長も沖田隊長も、わざとそういう言い方をしてたんじゃないですか?」
「え?」


どこにいたのか、始めからいたのか、いつからいたのか、山崎さんが手を上げながら前へ出てくる。


「山崎!お前直属の上司のくせに出番少ないからって適当なこと言ってんじゃねぇ!」
「完全にお前が出てくるとこじゃねーし!」
「え、ちょ、そんな」
「コラァ、山崎!!」
「優生さんまでっ!」


わざとなんて、考えもしなかった。
だとするなら、副長たちにどんなメリットが…?

聞く前に、山崎さんは隊士に囲まれていた。
優生さんも、土方副長まで参戦している。


なんだか山崎さんに申し訳ない気持ちになり目をそらすと、沖田さんが手招きしていることに気づく。

やっぱり、起きていたらしい。


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好きだけじゃやってけない