X X X




どうしよう。
見てはいけない、でも、見たい。
いや、ほら、疑惑を確認しなければ。


「そんなところで何してんでィ」


前から歩いてくる沖田さんの声量に慌てて立ち上が…


「っ?!」


れない。痺れている。
ゾンビのように這いつくばって辛うじて副長室から離れる。


「今日は副長室に近づくなって言ったろーが」
「え、あっ…!」


ーーーーー"今日は副長の部屋に近づかない方がいいよ。こういう日の副長はかなりピリついてると思うから"


完全に、忘れてた。
確かに、こんな日に誰も何も提出に来ないなんておかしい。


「すみません、すっかり忘れてて…始末書と報告書を出しに来たんですけど」
「足が痺れるなんていつからいたんでィ。それに気づかないなんてよっぽど楽しい盗み聞き…いや、覗きだったみたいだなァ」


数センチ開けられた襖を見て、訂正される。


やばい、こんなこと副長にバレたら絶対に切腹もんだ。
見てしまった内容的にも絶対に切腹だ。

いや、待てよ?



ーーーーー"山上は知らねェんだよな、俺らのこと"


ーーーーー"1人だけ知らねェのもよくねェよなァ、教えてやんねーと"



と、いうことは


「ここに近づいちゃいけない理由って…」


沖田さんは、いや他の隊士は、知っている、のか。


「見聞きした通りだろォよ」
「そう、なんですね…」
「デカい山あげた後の土方さんはいつも優生と"ああ"でさァ。生きるか死ぬかって仕事した後に生きてることを実感したいとか、癒されたいとか、まあわからなくもねェが、自分だけ優生に甘えやがって」


鬼の副長が自分だけ特別、なんてありえないと思ったが、土方副長の背負っているものや責任や仕事量を考えたら、それくらいみんな目を瞑ってあげて当然だろう。


「な、なるほど。あの、ちなみに覗きとかって」
「スパイ行為、切腹」
「ひっ!で、ですよね…」
「安心しなせェ、誰にも言いやせんよ」
「えっ」


沖田さんがそんなこと言うなんて、絶対裏が


「土方の不利益になることならこれからもどんどんしなせェ。覗きだけじゃなくて暗殺とか」


あります、よね。
そりゃあ裏しかないですよね。


「ハハ…。お、沖田さんはどうしてここに?」
「もちろん、邪魔しに」
「え、あ、今はちょっと!!」


未だ立ち上がれない僕の横を通り過ぎ、襖へかけられた沖田さんの手を、ドタドタと這いつくばって辛うじて掴む。


「多分、まじでやばいです。今は」
「お楽しみのお取り込み中に邪魔されるなんて、あーあ、さぞ不愉快だろうなァ。ただでさえ今日は気が立ってんのに」
"これ、俺が出しといてやりまさァ"


ニンマリ、ニッコリ、いやニッタリとお得意の悪い顔で笑いながら床に置かれた書類の山を指差すと、スパーンッと扉を勢いよく開けてしまった。

部屋の中を想像してなんとも言えない感情が沸き立つ。

どう転んでも見てはいけない光景しか広がっていないのに、さすが沖田さん…。


「総悟?!おま、人の部屋開けるときはノックしなさいって教えたでしょうが!」
「びっくりしたぁ」


恐る恐る少しだけ中を覗くと、上半身裸で片腕をついて起き上がった状態の土方副長と、ボタンが全て開いたワイシャツを腕まくりし顔を赤らめている優生さんの姿が。
少し汗ばんでいる様子の2人と、むわっと湿気た部屋の空気がとても生々しいけど、まだセーフだったようだ。


「どーぞ続けてくだせェ。俺ァ土方さんの弱った声を聞きにきたんで」
「ンな声出すかっ」
「そそそうですよ。お、沖田さん、なんて事をっ」


土方副長の"弱った声"を想像して思わず僕が顔を隠す。


「何してんでィ、お前」
「いや、いくらなんでも、その、」
「土方さんの番が終わったなら優生、俺にもやれ」


スタスタと中へ入りワイシャツを脱ぎ始める沖田さんを見て愕然とする。


そ、そういうシステムなの?!
紅一点ってそういうこともするの?!
幹部特権とかなの?!?


真選組の人達が毎日神経をすり減らし、命を削って戦えるのは、縁の下の力持ちもとい、優生さんのおかげなのか…?
納得しかけている僕に


「山上くんも、してあげようか?」


優生さんが声をかけてくる。
中に着ているタンクトップは、汗なのか"何"なのか、じんわりと濡れていて


「は、はひ!!?」


全力で噛んだ。


「してもらいなせェ、俺の後にな」
「とりあえず入るか出るか、どっちかにしろ」


土方副長に言われるがまま、さりげなく部屋へ入る。
なかなか不謹慎な気もするが、僕だって男だし。

土方副長の横にゴロンと横になる沖田さんを真似て、とりあえず僕も横になる。


「1日に3人なんて、今日は特別ですよ」
「山上は優生の、初めてかィ」
「は、はい」


優生さんの、というか、それ自体、は、初めて、というか。

生唾を飲む音が聞こえないように顔を伏せる。


「じゃあ、総悟くんから」
「俺ァ土方さんと違ってドSで打たれ弱ェんで、優しめで」
「了解です。あんまり大きな声出さないでね」
「人をドMみたいな言い方してんじゃねェ」
「強めにゴリゴリされるのが好きなくせに」
「人の好みにケチつけてんじゃねェよ!勝手だろォが!そんくらいじゃねェと抜けねェんだよ!」


ああ、もう、なんて破廉恥な会話をさも当たり前のように…
僕は心臓が脈打ちすぎて死にそうなのに。


「ほら、力ぬいて」
「あぃ」
「いきますよ」


絶対に顔が赤い僕は、もう伏せた顔を上げられなくて、
隣の3人の会話すら脳内で処理するのに必死だったけど


「イデデデデデデ!!!優生!もっと優しく!」


沖田さんの断末魔に思わず顔を上げた。


「え、これで?」
「俺は打たれ弱いの!痛いの無理なの!人を痛めつけるのが好きな奴は痛めつけられるのに慣れてないの!」
「ごめんごめん、土方さんの後だと力加減がわからなくって」
「ククククッ、ざまあねェな、総悟」


うつ伏せになった沖田さんの隣に座り、背中に肘を押し付ける優生さん。

目に涙を溜めながら"マッサージは痛い派じゃなくて気持ちいい派だから!"と駄々をこねる沖田さん。

タバコを吸いながら沖田さんを見て爆笑している土方副長。


「日頃の凝り固まった頑固な疲れは、痛ェくらいじゃないと抜けねーだろ」


抜け…疲れ…?


あれ、


これって、


まさか、


えっと、


「マッサージ…?」



「なんつー顔してんだ」
「山上くん?」
「フッ、お前ェまさか」
「……、…い」
「え?」
「………、……さい」
「ん?」
「僕の焦りと心配と恥じらいと覚悟を返してください!!!!」


僕が泣きながら部屋を飛びたことは言うまでもない。



監察日記
X X X




どうしよう。
見てはいけない、でも、見たい。
いや、ほら、疑惑を確認しなければ。


「そんなところで何してんでィ」


前から歩いてくる沖田さんの声量に慌てて立ち上が…


「っ?!」


れない。痺れている。
ゾンビのように這いつくばって辛うじて副長室から離れる。


「今日は副長室に近づくなって言ったろーが」
「え、あっ…!」


ーーーーー"今日は副長の部屋に近づかない方がいいよ。こういう日の副長はかなりピリついてると思うから"


完全に、忘れてた。
確かに、こんな日に誰も何も提出に来ないなんておかしい。


「すみません、すっかり忘れてて…始末書と報告書を出しに来たんですけど」
「足が痺れるなんていつからいたんでィ。それに気づかないなんてよっぽど楽しい盗み聞き…いや、覗きだったみたいだなァ」


数センチ開けられた襖を見て、訂正される。


やばい、こんなこと副長にバレたら絶対に切腹もんだ。
見てしまった内容的にも絶対に切腹だ。

いや、待てよ?



ーーーーー"山上は知らねェんだよな、俺らのこと"


ーーーーー"1人だけ知らねェのもよくねェよなァ、教えてやんねーと"



と、いうことは


「ここに近づいちゃいけない理由って…」


沖田さんは、いや他の隊士は、知っている、のか。


「見聞きした通りだろォよ」
「そう、なんですね…」
「デカい山あげた後の土方さんはいつも優生と"ああ"でさァ。生きるか死ぬかって仕事した後に生きてることを実感したいとか、癒されたいとか、まあわからなくもねェが、自分だけ優生に甘えやがって」


鬼の副長が自分だけ特別、なんてありえないと思ったが、土方副長の背負っているものや責任や仕事量を考えたら、それくらいみんな目を瞑ってあげて当然だろう。


「な、なるほど。あの、ちなみに覗きとかって」
「スパイ行為、切腹」
「ひっ!で、ですよね…」
「安心しなせェ、誰にも言いやせんよ」
「えっ」


沖田さんがそんなこと言うなんて、絶対裏が


「土方の不利益になることならこれからもどんどんしなせェ。覗きだけじゃなくて暗殺とか」


あります、よね。
そりゃあ裏しかないですよね。


「ハハ…。お、沖田さんはどうしてここに?」
「もちろん、邪魔しに」
「え、あ、今はちょっと!!」


未だ立ち上がれない僕の横を通り過ぎ、襖へかけられた沖田さんの手を、ドタドタと這いつくばって辛うじて掴む。


「多分、まじでやばいです。今は」
「お楽しみのお取り込み中に邪魔されるなんて、あーあ、さぞ不愉快だろうなァ。ただでさえ今日は気が立ってんのに」
"これ、俺が出しといてやりまさァ"


ニンマリ、ニッコリ、いやニッタリとお得意の悪い顔で笑いながら床に置かれた書類の山を指差すと、スパーンッと扉を勢いよく開けてしまった。

部屋の中を想像してなんとも言えない感情が沸き立つ。

どう転んでも見てはいけない光景しか広がっていないのに、さすが沖田さん…。


「総悟?!おま、人の部屋開けるときはノックしなさいって教えたでしょうが!」
「びっくりしたぁ」


恐る恐る少しだけ中を覗くと、上半身裸で片腕をついて起き上がった状態の土方副長と、ボタンが全て開いたワイシャツを腕まくりし顔を赤らめている優生さんの姿が。
少し汗ばんでいる様子の2人と、むわっと湿気た部屋の空気がとても生々しいけど、まだセーフだったようだ。


「どーぞ続けてくだせェ。俺ァ土方さんの弱った声を聞きにきたんで」
「ンな声出すかっ」
「そそそうですよ。お、沖田さん、なんて事をっ」


土方副長の"弱った声"を想像して思わず僕が顔を隠す。


「何してんでィ、お前」
「いや、いくらなんでも、その、」
「土方さんの番が終わったなら優生、俺にもやれ」


スタスタと中へ入りワイシャツを脱ぎ始める沖田さんを見て愕然とする。


そ、そういうシステムなの?!
紅一点ってそういうこともするの?!
幹部特権とかなの?!?


真選組の人達が毎日神経をすり減らし、命を削って戦えるのは、縁の下の力持ちもとい、優生さんのおかげなのか…?
納得しかけている僕に


「山上くんも、してあげようか?」


優生さんが声をかけてくる。
中に着ているタンクトップは、汗なのか"何"なのか、じんわりと濡れていて


「は、はひ!!?」


全力で噛んだ。


「してもらいなせェ、俺の後にな」
「とりあえず入るか出るか、どっちかにしろ」


土方副長に言われるがまま、さりげなく部屋へ入る。
なかなか不謹慎な気もするが、僕だって男だし。

土方副長の横にゴロンと横になる沖田さんを真似て、とりあえず僕も横になる。


「1日に3人なんて、今日は特別ですよ」
「山上は優生の、初めてかィ」
「は、はい」


優生さんの、というか、それ自体、は、初めて、というか。

生唾を飲む音が聞こえないように顔を伏せる。


「じゃあ、総悟くんから」
「俺ァ土方さんと違ってドSで打たれ弱ェんで、優しめで」
「了解です。あんまり大きな声出さないでね」
「人をドMみたいな言い方してんじゃねェ」
「強めにゴリゴリされるのが好きなくせに」
「人の好みにケチつけてんじゃねェよ!勝手だろォが!そんくらいじゃねェと抜けねェんだよ!」


ああ、もう、なんて破廉恥な会話をさも当たり前のように…
僕は心臓が脈打ちすぎて死にそうなのに。


「ほら、力ぬいて」
「あぃ」
「いきますよ」


絶対に顔が赤い僕は、もう伏せた顔を上げられなくて、
隣の3人の会話すら脳内で処理するのに必死だったけど


「イデデデデデデ!!!優生!もっと優しく!」


沖田さんの断末魔に思わず顔を上げた。


「え、これで?」
「俺は打たれ弱いの!痛いの無理なの!人を痛めつけるのが好きな奴は痛めつけられるのに慣れてないの!」
「ごめんごめん、土方さんの後だと力加減がわからなくって」
「ククククッ、ざまあねェな、総悟」


うつ伏せになった沖田さんの隣に座り、背中に肘を押し付ける優生さん。

目に涙を溜めながら"マッサージは痛い派じゃなくて気持ちいい派だから!"と駄々をこねる沖田さん。

タバコを吸いながら沖田さんを見て爆笑している土方副長。


「日頃の凝り固まった頑固な疲れは、痛ェくらいじゃないと抜けねーだろ」


抜け…疲れ…?


あれ、


これって、


まさか、


えっと、


「マッサージ…?」



「なんつー顔してんだ」
「山上くん?」
「フッ、お前ェまさか」
「……、…い」
「え?」
「………、……さい」
「ん?」
「僕の焦りと心配と恥じらいと覚悟を返してください!!!!」


僕が泣きながら部屋を飛びたことは言うまでもない。




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