09


「一年がたった4人って少なすぎねぇ?」


「じゃあオマエ今まで呪いが見えるなんて奴会ったことあるか?」


「……ねぇな」


「それだけ少数派なんだよ 呪術師は」


無事虎杖が高専に入学した翌日。4人目の一年生を迎えに行くという事で蘭と伏黒、虎杖の3人は原宿に来ていた。ちなみに現在五条を待っている最中である。


「ふーん それより俺は蘭ちゃんが呪術師だってのが未だに信じられねぇ」


こんなふわふわしたTHE・女子!みたいな女の子が呪いを祓ったりしてるなんて危なくないのだろうか。それが虎杖の率直な感想だった。


「蘭、ちゃんと呪術師!」


虎杖のその言葉に蘭は少しムッとした表情で頬を膨らませ彼を見上げた。
恐らく言われた本人は馬鹿にされたと勘違いしたのだろう。虎杖はそんな蘭を見下ろしながらヘラッと人の良い笑顔を見せた。


「あ、ごめん 別に馬鹿にしてるとかじゃなくて蘭ちゃんみたいな女の子もそういう世界で頑張ってるんだなーと思ったらなんかスゲーと思ってさ」


「そうなの?悠仁、蘭凄い?」


「うん!こんなちっちゃいのに頑張って呪い祓っててスゲーよ!あ、もちろん伏黒もな!」


虎杖は"ちっちゃいのに"と言いながら蘭の頭をポンポンと撫でた。


「悠仁、やっぱりいい子。蘭、悠仁好き」


「え、やばいめっちゃ嬉しい!俺も蘭ちゃん好き」


「……オイ、どうでもいいがそれ五条先生の前でやるなよ。面倒なことになる」


今この状況を五条が見ていたらどうなっていただろうか。蘭の言う"好き"に深い意味がないとしてもそれを五条が大人の対応で聞き流してくれるかどうかが問題だ。


少し考えただけでも確実に面倒なことになりそうな未来が簡単に想像出来た。それを未然に防ぐ為にも伏黒は虎杖と蘭の二人に釘を刺す。
それに対し本当に分かっているのかは定かではないが一応は返事をした二人にひとまず伏黒は肩の荷を下ろした。



「っていうか俺が4人目って言ってなかった?」


「入学は随分前に決まってたらしいぞ こういう学校だしな。何かしら事情があるんだろ」


「あー大人の事情ってやつか」


伏黒が虎杖の質問に答えた直後、駅改札の方から聞き慣れた声が3人の耳に届いた。


「おまたせー」


「悟!」


「あ 五条先生」


「やっと来た」


「やー蘭ちゃんは今日も最高に可愛いね!僕を待ってる間変な男にナンパされなかった?」


ゆるゆると手を振りながら改札から出てきた五条は一直線に蘭の元まで歩いて来たかと思えばキュッと彼女の小さな両手を握った。


「ん。蘭、恵と悠仁としか話してない」


「そっか!それは何より。恵、悠仁。二人とも蘭ちゃんのボディーガード役ありがとね!」


五条は蘭から伏黒と虎杖に視線を移すと二人に礼を言った。それに対し虎杖が俺らなんかしたっけ?と言いたげな顔で伏黒を見たが当の伏黒は蘭の髪を結き直している最中でこちらの視線には気づいていないようだ。


え、ていうか伏黒女の子の髪結わけるんだ…という虎杖の感想はさて置き。こう見ると本当に兄妹にしか見えない二人だなと虎杖は改めて思った。髪や目の色が違えど醸し出す雰囲気は普通の兄妹と何ら変わりない。


そんな事を思いながら二人を見ていた虎杖は五条の声で現実に引き戻された。


「そういえば悠仁、制服間に合ったんだね」


「おうっピッタシ でも伏黒と微妙に違ぇんだな。パーカーついてるし」


「制服は希望があれば色々いじって貰えるからね」


「え 俺そんな希望出してねぇけど」


「そりゃ僕が勝手にカスタム頼んだもん」


「気をつけろ 五条先生こういうところあるぞ」


「んー」


「でも悠仁、制服似合ってる」


「お、マジ?ありがとう!そういや蘭ちゃんの制服も可愛いよな 自分でカスタムしたの?」


「フフン、ちなみにだけど悠仁クン、蘭ちゃんの制服も僕がデザインしたんだよ!」


「え!蘭ちゃんのも五条先生が?」


「モチロン!上は特にいじってないけどスカートとかは蘭ちゃんに似合うよう僕がオーダーメイドで頼んだんだ」


五条がそう言った直後、必然的に虎杖や伏黒の視線が蘭に注がれた。

上は学ラン、下は膝上10cm程のプリーツスカートとニーハイソックスに靴は膝下までの編み上げロングブーツを履いている。


五条のセンスを認めるのは癪だが確かに可愛い。特に広い世代で"絶対領域"とも呼ばれるニーハイソックスからチラリと覗く白い足なんてこの歳の男子生徒からしたら非常に目に毒である。
自然とそこに目がいってしまった青少年2人を、五条が現実世界に呼び戻した。


「はい!それ以上は有料だよ二人とも 蘭ちゃんが可愛いのは分かるけどこの子僕のだからさ」


いやオマエが勝手に制服の説明し始めたからだろ。という伏黒の心の声は彼に届かずして消えてゆくのであった。


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