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「蘭ちゃん野薔薇と仲良くなりたいんでしょ?」


「うん 蘭、野薔薇来る 楽しみにしてた」


「ウンウン 蘭ちゃんったら毎日女の子まだ?まだ?て何回も僕に聞いてきてたもんね」


「だって女の子友達、嬉しい。あ…これ、野薔薇のクレープ」


釘崎はコクン、と頷いた蘭を見て面食らった顔で固まった。
差し出されたいちごチョコのクレープを見つめながら脳内を整理する。


「(何よこの子、私が来るの楽しみにしてたって、そんなの……あ"ー!!クソッ ちょっと可愛いって思っちゃったじゃない!)」


クレープを受け取らない釘崎を不思議に思い「野薔薇?」と言って首を傾げる蘭。
しかし次の瞬間、蘭の手からクレープがなくなっていた。


「まぁそこまで言うなら……してあげてもいいわ」


「?」


「だ、だから!そこまで言うなら特別に仲良くしてあげてもいいって言ってんのよ!」


蘭の手にあったいちごチョコのクレープはいつの間にか釘崎の手に渡っていた。大方照れ隠しに勢いつけて奪い取るように取ってしまったのだろう。速すぎてクレープを受け取った瞬間が見えなかった。


一方蘭のストレートな物言いに照れて顔を赤くしながら明後日の方を見る釘崎を見た蘭はしぱしぱと目を瞬かせた後、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「うん 蘭も野薔薇仲良くする。嬉しい」


「いいわ、もっと喜びなさい!(クッ、この私が早速都会っ子の甘ちゃん女に丸め込まれるなんて…!流石東京ね!!)」


蘭と釘崎が女子2人で盛り上がってる(?)間男三人は――


「いいねいいね 女の子同士って絵になるよ。ていうか蘭ちゃんあのクレープ食べないのかと思ってたら野薔薇のだったんだね。優しすぎない?あー本当可愛い。無理。好き」


「わかる 伏黒はいいよなーあんな子が幼馴染みなんて。蘭ちゃんみたいな女の子の事をさ、"コイツ俺の幼馴染み"って言って紹介するのとか男のロマンだよ」


「悠仁わかってるね〜!!あ、でもね悠仁、僕はその"男のロマン"の更に上を行く男だと言うことを忘れちゃいけないよ!結婚した暁には毎日蘭ちゃんとあーんなことやこーんなこともし放題!」


「あーそれは羨ましいなぁ でも先生、蘭ちゃんとあんなことやそんなことって犯罪じゃないの?年齢的に」


「まあ結婚しないでヤっちゃったらね!結婚したらどんなにエッチな事しても合法なんだよ」


「へーそういうもんなんだなー…ってうわ!伏黒、目が人殺せそうな勢いだけどどったの?!」


「別になんでもねえよ」


「ぜってーなんでもねえ奴の顔じゃねーよ!もしかして蘭ちゃんの話のせい?」


「ハァ…知ってるなら聞くな」


「ご、ごめん?」


目つきの悪い伏黒に睨まれて頬をぽりぽりと掻きながら微妙な表情をする虎杖。そんな彼の肩をポンポンと叩きながら五条が前に出た。


「ごめんね恵〜!恵にとっては蘭ちゃん妹みたいなもんだもんね!でも僕の場合の蘭ちゃんはお嫁さんだからさ、そういう話も自然と出ちゃうわけだよ」


「…で、つまり何が言いたいんですか」


最早"お嫁さんだからさ"発言はスルーで伏黒が五条に聞き返す。


「そう、つまり慣れてってこと!」


「…は?」


「考えてもみなよ この僕がさ、蘭ちゃんに対する熱い想いを心の内にそっと留めておくなんて芸当できるわけないじゃん?外に吐き出さないと溜まっちゃうわけよ 性欲と一緒でね。つまり僕が君たちに蘭ちゃんの話をするのは変な話性欲処理と似てるものがあるんだ。ここまでオーケー?」


「(――は?性欲って、この人……何を言ってるんだ?)」


「(わりぃ伏黒、俺も今回ばかりはちょっと何言ってるかわからん)」


本気で訳がわからないという顔の伏黒と、やっぱりこちらも分かっていない虎杖がこそこそと耳打ちしあう。
何が"ここまでオーケー?"だ。オーケーな訳がないのは彼らの表情を見れば一目瞭然だ。しかし五条は続けた。


「あ、もちろん蘭ちゃんの話をする時が全て性欲処理に繋がってるわけじゃないよ?僕の彼女に対する想いは純愛だからね」


「(純愛…?一体どこが純愛なんだ…?)」


「(わりぃ…今回も俺にはわからん)」


「そうそう、それにどっちかと言えば蘭ちゃんが可愛すぎてつい口から愛の言葉がポロポロ泉のように溢れ出ちゃってる方がずっと多いし。――これで納得してくれたかな、恵」


伏黒の脳内は五条の口から吐き出された数多の情報に脳が追いついていなかった。
そういえば五条の領域展開・無量空処は数多の情報をいっぺんに与えられるせいで情報が完結しない為何もできないというものであった気がする。
もしや自分は五条の領域内にいるのでは?と錯覚させる程伏黒の頭は混乱で満ちていたのだった。


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