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【りんね・期待させてんのはソッチだろ】
お前はいつになったら俺っちと付き合ってくれるんですかねェ。燐音くんがそう言うたびに、はは、と乾いた笑いを返して目をそらす。きっとからかっているんだろうなと思うけど、彼が私に甘やかな言葉を発する時はいつも、意志の強そうな瞳をキュッと細めて、柔らかな表情で私を見つめるから、どうしたって期待してしまう。「からかってるんでしょ」「あ〜?俺っちはいつだって本気だっての。だからお付き合いからしましょうって言ってンだろ」あぁ、まただ、また優しい顔をしてる。彼は、ぐぅ、と唸る私の髪をひと束すくって毛先をいじる。「は〜あ、本気だって思ってもらえないなんてカワイソウじゃね?」燐音くんはそう呟いたけど、可哀想なのは私の方だよ。何回も期待ばかりさせられて、いつも胸が苦しくなる。「なァ、そろそろもういいだろ。俺っちの目を見て、俺っちをどう思ってるかちゃんと言ってくれ」お前に嘘も冗談も言ったことねェよ。彼は毛束にそっと唇を落とす。それがあまりにも優しくて、鼻の奥がツンとした。胸がいっぱいで、今にも爆発してしまいそうだ。ねぇ燐音くん、ずっと前から好きだったんだよって言ったら、あなたはどんな顔をしてくれる?
【こはく・愛らしい顔、ちゃんと見せて欲しいわ】
「わしのこと、ちゃんと見てや」私に触れる手が優しくて、私を見つめる表情が熱っぽくて、私に向ける声色が柔らかなことに気がついたのは最近のことだった。他の誰かに向けるものとは違っている。絶対そうだと思った時から、彼のことをマトモに見ることが出来なくなっていた。「み、みてるよ」「見てへんやん、今も」「そんなことは」「…わしのこと、嫌いになった?」うつむいて誤魔化しながら彼に返事をしていたけど、明らかにシュンとした彼の声に思わず顔を上げる。「あ、やっと目ぇ合った」さっきの声色からは想像できないくらいにっこり笑みを見せているこはくくん。騙された、彼のこの声に弱いって分かってやってる、やられた。まぁ実際弱いんだから文句は言えないんだけど。「なぁ、好きや。冗談なんかとちゃう。わしは本気や」とっくにタジタジな私に追い打ちをかけるようにそう言ったこはくくんに射抜かれて、もう何も考えられなくなってしまう。「嫌いになった?」なんてちっとも不安に思ってないくせに、こはくくんのそういうところがずるくて、でも好きでたまらないんだ。
【にき・いただきます、もう待たなくていいでしょ?】
「いつまで待てするんすか?」僕、割と待てるほうだけど流石に待ちくたびれてきちゃったっなぁ〜って。急に食事の手を止めて何を言い出すのかと思ったら、思ってもみなかった話題で、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。「と、突拍子もないことを…」「突拍子もないなんてことはないっすよ。君に告白したのに待てされて今日で1ヶ月ですから」「え、」「なぁに?忘れてたんすか?酷いなぁ」「ぅ、ち、ちが」…忘れてくれていると思っていた。だって、彼みたいにかっこよくて、料理もできて、性格もいいような男の子が私を好きだなんて気の迷いで間違いだとしか思えないじゃないか。…彼のことが好きだけど、傷つくのは嫌だ。期待するだけして、結局彼と釣り合わなくて、想いが実らなかったら悲しいから。だから話が自然消滅してくれるのを待ってたのに。「僕が忘れてると思った?侮らないでほしいっす。君のこと本気なんだから忘れるわけなんかないでしょ」逃げないで、もう2度目の待ては聞かないから。絡めとるような彼の目に、胸が震えてどうしようもない。もう逃げられないんだと悟ったと同時に、ふわりと彼の香りが強くなった。
【ひめる(俺)・ちゃんと言って、もう逃さない】
「もう鬼ごっこはやめにしませんか?」ゆるりと指を絡めるように私の手を繋ぎ止めてひめるくんは言った。彼のことが好きな私にとっては幸せすぎる状況だから別に手を払う必要もないんだけど、一応拒む素振りを見せてみる。それでも、彼は手を離す様子は無くて、今も緩やかに手は繋がれている。彼に告白された日から、彼を避けてしまっている。嬉しいから受け入れたいけど、自分に自信がないから言葉が出ない。だけど断ることもしたくなくて、結果的に避けていた。「貴女のこと、諦めたほうがいいですか?」次に聞こえてきたのは悲壮感漂う彼の声だった。声と同時に、離れそうになる彼の手と私の手。離したくなくて名残惜しくて、ほぼ反射で手に力を込めた。「手、どうしましたか?」「えっと」「告白しても、貴女は逃げてばかりの様子なので俺は諦めたほうがいいのかと思っていたのですが」「ちがうの、」「貴女は俺のことどう思ってるんですか」ちゃんと言うまで逃しません。今度は彼が手をぎゅっと握る。自信ありげに微笑む彼はきっと私の気持ちを確信している。「どんな貴女も全て素敵です。俺は本気で、貴女が好きなんです」ねぇ今それ言うのずるいよ、そんなの、私だって、私だって前からひめるくんのこと…。今もずっと、本気で好きなんだよ。