09

「神宮寺、なまえから離れろ」

「龍也さん...随分と彼女に熱心みたいだね」

「お前には関係ないことだ」


多分彼を探しに来たであろう龍也さんに私たちは引き剥がされた。二人の間には火花が散っているように見えた。どうしてこんな状況になっているのかわからないけど、何か察してしまう前に説明だけはしておかなければならない


「龍也さん、私彼とはちょっと顔見知りなの」

「そうだったのか...でもコイツには気をつけろよ」

「酷い言われようだね」


龍也さんの言いたいことは身に染みてわかるけれど...それは私が引き起こしたことでもある。言ってしまえばどれだけ楽なことか


レンと私は似た者同士、ただ寂しさを埋めるためだけに何度も身体を重ね合わせた。ほんの少しの間だったけれど、私と関係を持ってしまったせいでレンは更に非行に走ったのだと責任も感じている、何も告げずに消えてしまった私のせいで...







それから何日かして、学園の子がたまに遊びにくるようになったときのこと。どういう訳か運悪くレンと二人きりになってしまった



「ねぇなまえ、まだ寂しかったりするのかい?」

「もう私は過去の私じゃない...」

「龍也さんが、好きなんだろ」

「.....」


昔からそうだった、レンは勝手に心の中を覗いては引っかきまわして傷つけて。そしてまた自分が傷ついてでも甘い言葉で私をぬるま湯に浸かった環境に酔わせていた


「あなたには関係ないっ」

「その強がり、どこまで持つかな?」


バッと目の前に雑誌が出された。ついに斎藤にリークされたのか、はたまた過去に関係をもった奴らなのかそんなことは誰にもわからない。ただそのページには「売出中人気モデル、過去に淫行の嵐!!」となんとも下衆な見出しがついていた。


「きっと暫くしたらどの出版社も取り上げるだろうねぇ」


ね、話題のモデルさん?



ウィンク一つして、彼の笑顔とは裏腹に私の心情はぐるぐると回っていた


「何を...考えているの...?」

「そんなのただ一つだけだよ」








(なまえが俺の元に来てくれれば、それでいい)







狂いだした歯車は、さらにネジが抜け落ちて今や修復が不可能になってしまった。元に戻せると信じていた私の心を嘲笑うかのように




いつか時が来たら話そうと決心していた。そんな決心さえも置き去りに、今はただ彼に嫌われることが怖くなって何でもいいから縋れるものが欲しくて