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笑っている彼に身動きが取れなくなった。私を見つめ返す目が、刺すように体を張り付ける
「ど...して...私が?」
「どうして?そんなのなまえが一番わかっているだろう?」
龍也さんの視線が私に向くのがわかる。胸の中にある恋心が頑なに口を閉ざす。声の出し方も忘れてしまったかのように黙って俯いている私に、彼は言う
「いずれにせよなまえと俺の問題なんだ。龍也さんには関係のないことさ」
「あぁそうか、わかったよ!!」
荒々しく龍也さんが扉を開けて出て行く。もう、どうしたらいいのかわからない
「ねぇなまえ」
「何...」
「明日、夜に時間が欲しい」
何も言い返す術がない私は頷くことしかできない
本当は龍也さんを今すぐに追いかけたいのに
どうしようもなく、時間だけが過ぎていく。龍也さんは何をしているだろうか、レンは何の話をするのだろうか、もう何もわからない
「結局私は...変われないままじゃない」
決められた運命なのかもしれない。今までと同じように男に抱かれ、寂しさを紛らわせて一人じゃなにもできないと縋って、わざと弱みをみせて利用して...思い出すだけでも吐きそうになるほどの拒絶
あれからどうやって家まで辿り着けたのかわからない。気がつけばリビングのソファで寝てしまっていて起きれば朝になっていた。幸いにも今日はオフで、何もしないで過ごせばいつしか時計の針は夕刻の6時を指そうとしている。そろそろレンとの約束の時間
あまり気は進まない。でも過去と決別したい気持ちは今も変わらない。レンに流されないようにと決意を固め部屋を出る
「やぁなまえ、早かったね」
指定された場所に向かえばすでにレンの姿があった。個室カフェ、ここなら間違いは起こらないだろう、という彼なりの配慮。つまり家なんかでは身も心も危なかったという訳だ
「用件は?」
微笑んで彼は言う
「そんなの決まっているじゃないか....なまえ
―俺の元に帰っておいで。」