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次の日、仕事前に事務所に立ち寄ると嶺二と鉢合わせしてしまった。昨日泣いた所為で目が腫れていないだろうか、それと泣き顔を見られてしまったせいで何となく恥ずかしくて会い辛い


「なまえちゃんおっはよ〜ん」

「おはよ...あの、昨日のことだけどっ」

「大丈夫、龍也先輩に言ったりなんてしないよ。それに暗かったし、もしかしたら人違いだったかもでしょ?ちゃんと真相がわかってからまた考えよ!」


普段おちゃらけているくせに、人が落ち込んでいるときには凄く優しく一緒に考えてくれる。私は学園時代から、嶺二のこの優しさに何度も助けられてきた


「ありがとう...」

「ぼくちんは何があってもなまえちゃんの味方だからねっ!」

「何、その女子高生の友情みたいな言葉」

「むむっ!それはぼくちんがまだまだ若いってい...うっ、そんな目で見ないでよー」

「さーて私は仕事行かなきゃ」

「ってスルー!?なまえちゃんスルー!?」


昨日は部屋に帰って沢山泣いて、悩んで...だけど朝から嶺二に会ってばかみたいな会話をして、少しだけいつもの調子を取り戻せた。いつまで悩んでいたって仕方が無い、自ら龍也さんに聞ける勇気はまだ出ないけれど、人違いだという可能性もあるのだから、今は仕事をして次に龍也さんに会える時を待とう。彼と私の2年の付き合いを信じて


「なまえちゃん、大丈夫?」

「あ、うん。あのね嶺二...」

「ん?」

「昨日、嶺二がいてくれて本当に良かったよ。一緒にいてくれてありがとう」


しっかり目を見て言うと、少しの間嶺二が固まった...かと思うと、ハッとしたように「元気出てくれたみたいでよかった!」と残し去っていった。その間はなんだったんだろう。さて、そろそろ私も仕事に行かなくちゃ。


歩き出す私の後姿を誰かが見ていたなんて、このときの私は知る由もなかった







―「っ...やっばいなぁ、先輩の彼女なのに...」


無理矢理去っていったように思われていないだろうか、気分を害してしまっていないだろうか、あぁ、彼女は別にそんなの気にするような子じゃないってぼくが一番わかっているじゃないか


「それにしても、あれは反則だよ...」



昨日、嶺二がいてくれて本当に良かったよ。一緒にいてくれてありがとう



なんて好きな女の子に言われちゃ堪らない

昨日の男は確実に龍也先輩だった。その隣にいた女の子も知っている。今なら、もしかして今ならなまえちゃんを幸せにできるチャンスが僕の方に傾いてきているのかもしれない
心の中の天使と悪魔が囁きあう



あぁ、君を幸せにできるのが僕だったらどんなに嬉しいことか