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なまえ王女と二人きりの部屋、林檎先生が紅茶を運んできて、後は二人でごゆっくり、と言って出て行った。ティーカップが皿に当たる音が響く。カチャ、と置いて王女は話し出す


「アリスと私が出会ったときの話でもしようかしら、聞いている内に思い出すかもしれないし」

「あの...私、アリスじゃないんです」

「なまえでしょう?知っているわ、でもここではアリスなの」


どういうことだろう。王女は何を知っているのか


「とにかく話を聞いて」



―時は10年も前に遡る



森の中に一人泣いている少女がいました。話すことのできる猫が、どうしてここにいるのかと聞けば、白いウサギを追いかけている内に迷ってしまったと言う。猫はどうしていいのかわからなくなり、お茶会を開いている友人の元へと少女を連れて行きました

お茶会には帽子屋、靴屋、陽気な双子。みんな個性的で、突然やってきた少女に興味津々で質問をしました

名前は、年齢は、どこから来たの?

少女はわからないけれど、ウサギを見たの。と、それだけ言うと黙ってしまった

5人はそんな少女の為に名前をあげました、"アリス"それがこの日から少女の名前となり、よほど嬉しかったのか5人にたくさんありがとうと言いました


「そんなにお礼言わないでよ、俺たちもう友達でしょ?」


笑って言う彼らに安心したアリスは心を許し始め、友達としてお茶会に招かれるようになったのです



この世界に馴染んだある日、帽子屋は言いました


「そろそろ王女に挨拶しに行かなくてはいけませんね」

「王女ってどんな人?」

「きっとアリスの友達になってくれますよ」

「あぁ、王女は優しい人だからな。それと歌がとても大好きな方だ」



「歌...」



アリスは表情に影を落とした。もちろんそれを5人が見逃すわけもなかったが、辛そうにするため聞くことはしなかった