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「アリス、王女とトモダチになりたいですか?」

「うん」


迷い無くアリスは応えた


「じゃあ曲を作ってみようよ!プレゼントするんだ王女に」

「イッキにしてはいい案だね」

「レンってば酷いよ〜」


周りの明るい声に、少しだけなら作れるよと言ったアリス。ピアノのある部屋へと案内すると、近くにあった紙とペンを取り、すごいスピードで曲を作り上げていく。5人が話しかけても、まるで空気のように聞こえていない様子で、どこか辛そうだった


「できた」

「さっそく王女の元に行きましょうか」


いきなり白い光がパアッと照らすと、中からウサギが出てきた。それはアリスがずっと追いかけていたウサギで、思わず抱きついた


「うわぁっ...な、なんだコイツ!?」

「ウサギさんっ!!耳触らせて!!」

「やめろって...ちょ、誰かっ!!」


先程までの辛そうな顔とは違って、アリスは宝物が見つかったように嬉しそうにウサギと戯れる


「もしかしてアリス、翔の耳が触りたくて追いかけたのかい?」

「うんっ、だってふわふわだもん」


未だに触り続けているアリスに、ついにウサギも耐え切れなくなり


「だから...やめろって言ってるだろ!!」


と怒鳴ってしまった。それに驚いたのか、みるみる内にアリスの目には涙が溜まっていく


「っ...!!ごっ、ごめんなさ...いっ」


近くにいた靴屋に抱きつくようにしがみつき、肩を震わせて泣いている。靴屋はそんなアリスを抱き上げ、優しくあやす


「大丈夫だ、本気で怒ってなどいない」

「...ほんと?」

「翔、耳くらい自由に触らせてあげなさい」

「なんで俺がっ!?」

「ぐすっ...やっぱり嫌がってるよ...」


あまりに泣かれるので、ついにウサギは折れた


「だあーっ...もう勝手にしろ!」



その言葉にアリスは元気になり、王女の元へ着くまでウサギの耳で遊んでいた