18
「わたし王女にお歌つくったの...」
「ありがとう、見せてくれる?」
楽譜を王女に渡すと、少しだけ悲しい表情をしたアリス。王女はそんなアリスに聞いた
「この曲作って楽しかった?」
「...ううん」
小さな小さな声の否定、それが王女はなんのことなのかを知っている
「よく聞いてアリス、この世界には貴方を責めるものは何もないわ。アリスの好きなように、好きな曲を作っていいのよ」
「でもっ...先生はあなたの曲はつまらないって...ピアノだってもっと上手に弾けるでしょって何回もわたしのことぶつんだよ?」
「大丈夫、さっき言ったでしょう?アリスの辛いことは全部受け止めてあげるって...だから今はアリスが作りたいものを作ってみせて」
王女はピアノの前にアリスを連れて行った。鍵盤を一つ弾いてみれば、それはどんなピアノよりも澄んだキレイな音色で、アリスの気持ちは知らず知らずの内に晴れていった
「さっきの楽譜かして」
「はい、どうぞ」
アリスは自分の作った曲にどんどん音を加えていく。その顔はとても楽しそうで子どもらしく、目が輝いていて王女までも釣られて楽しくなっていった
30分程そうしていたのだろうか、最初に見せた辛そうな表情ではなく、とても嬉しそうに楽譜を見せてくれた
「はいっ、これ!」
「...すっごく素敵な曲ね!ねぇアリス、一緒に歌いましょう」
「うん!せーのっ」
二人の重なる歌声は城内に響き、仕事をしていたメイドも、5人も、目を閉じて聞き入っていた
「すごいですね...」
「あぁ、これが王女の力だろうか」
「違うよ、きっとアリスが自分で...」
口々に詮索をするが、真相は二人にしかわからない