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「なまえちゃん、小さな頃もこの夢を...?」

「そうかもしれないな...だが、夢の中に出てきた先生とは何なのだろうか」


春歌や真斗、同じように全員が不安気な顔で口にする。その中で翔は、何か思い出したように呟いた


「そういえばなまえ、昔ピアノ習ってたって...その先生のことかもしれねぇ」

「翔、詳しく聞かせてもらえますか?」


この中では比較的冷静なトキヤが話を聞く。それに相槌をうち続きを口にした


「小さい頃にコンクールに出て、あいつ3位に入賞したらしいんだ、入賞出来ただけでもすげーっつーのに、その先生名前に酷いこと言ったんだ。"1位を取れるような子は天才、あなたは天才じゃない、だから努力して1位を取ってみろ"って」


翔の言葉にそれぞれが違った表情を見せる。辛い表情に何か考えるような表情、言葉の捉え方は人それぞれだ


「今なら激励の言葉とも取れなくはねぇけどさ、小さい頃のあいつにはプレッシャーだったみたいで、ピアノを弾くのも見るのも嫌になっちまったんだって」


聞かされたなまえの過去、確かに小さな頃は誰だって大人の口にする言葉の裏の意味なんてわからないかもしれない。けれど楽しかったピアノを嫌になるまでやらされて、怒られて、暴力まで受けて、みょうじはどう思ったのだろう


「それでもなまえ、なんで辞めなかったのかな」

「きっと音楽が好きだから...じゃないでしょうか」


春歌の言葉に全員が納得した


「あいつ根っからの音楽馬鹿だもんな!」

「音楽のことになれば食事も睡眠も取らないしね」

「ふふっ、ほんとですね」

「七海、お前も人のこと言えないぞ」


日向先生の言葉に皆が頷く。あわあわと否定を続ける彼女に、張り詰めていた空気が少しだけ和やかになるのを誰しもが感じていた







「なまえ...早く帰ってこいよ」





ぽつりと呟いた声はなまえに届いていると信じたい