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「なまえ、私...っ」

「わかっているわ、戻るんでしょう元の世界に」

「...っ」


肯定するのはこの世界を消すと言っているのと同じで、胸がズキズキと痛む。何を言っていいのかわからず、俯いていると"なまえ"と王女に呼ばれる


「ねぇなまえ、貴方と過ごした日々はとても楽しかったわ。一緒に歌ったのも、ピアノを弾いたのも、お茶をしたのも...貴方が過去を乗り越えたことだって私にとって嬉しいことなの」


ぎゅっと私の手を掴む王女の目にはうっすらと涙が滲んでいた


「いつかまた辛い思いをしても、貴方は一人じゃないから...みんながいて、一緒に乗り越えていけるから...だからなまえ、戻って、貴方の世界に」


重なる手から光が溢れ出す


周りの景色がホログラムのようにぽろぽろと崩れていく



「なまえっ...!!」


目の前にいた王女もいつの間にか足から順に崩れていっている、少しでもそれが止まるようにと抱きしめても、その勢いは止むことを知らない



「大丈夫、私はいつだって貴方の心にいる、だから...」



「やだっ...なまえ!!」



眩い光の中に聞こえたのは、王女の最後の言葉








―  お願い、私たちのこと忘れないでいて










頭に反響する彼女の声、ゆっくりと目をあければ見慣れたいくつもの顔




「「「なまえ!!」」」



「みんな...っ」





口の中がカラカラに乾いて声にならなかった、けれど目からは溢れるように涙が止まらなくて、目の前にいるみんなも何故か辛そうに見えた






― 絶対忘れないよ


― ありがとう...