06

家についてからというもの、なまえに対して後ろめたさでいっぱいだった。自分の意思でないとはいえ、なまえを裏切ってしまう行為をしたことに違いない、後悔だけが募っていく



次の日事務所でなまえを探していると、廊下の端に二つの影を見つけた。遠目から見るに嶺二となまえのようだ。相変わらず同期二人で仲が良いんだな、と思っているとなまえの口から信じがたい言葉が聞こえた


「昨日、嶺二がいてくれて本当によかったよ、一緒にいてくれてありがとう」


正直言えば、今まで不安を"仲が良い"の言葉で終わらせてきた。どうしようもないくらいになまえが好きで、けれど男の嫉妬なんて見苦しくて言うこともできなかった。足早に去っていった嶺二の顔を見て確信した、あいつはなまえのことが好きだったんだと。きっと俺となまえが付き合う前からずっと



昨日何があったのかなんて俺にはわからない。なまえに関わった問題が俺よりも先に嶺二に相談されたことに、自分の立場がなくなったように感じた。二人の間に何があったのかなんて聞けやしない、昨日は俺だって......もしかすると二人もそんな関係だったのか?なんて疑ってしまった自分にどうしようもなく呆れた


「あら龍也、なにしてるの?」

「何でもねぇよ」

「でも顔色よくないわよ〜今日はAクラスとSクラス合同授業だから私一人でも大丈夫だし、ちょっと休みなさい」

「いや、大丈夫だ」


今一人で何もしないでいると、二人のことしか考えられなくなりそうだった。林檎からの申し出を断って学園へと向かう


いつもの俺らしくないと文句を言われながらもしごとが終わった。何も考えは纏まらないが早くなまえに会って話しがしたい。真相を聞いて、何かあったとしても受け止められる勇気はないけれど、こうして仕事にまで影響させるのは長く続けるわけにいかない





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TO:みょうじなまえ
From:日向龍也
Sub :Re:

久しぶりだな、元気か?
お前に会いたい
できたら早い方がいいんだが...
オフの日はいつだ?

   END
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From:みょうじなまえ
Sub :多分...

久しぶり。
龍也さんも体調崩してない?
3日後にオフがあるよ
私も会いたい

   END
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メールを送ればすぐに返信があった。メールのままに、3日後に会う約束をした。少しだけ感じた小さな違和感、それはメールの文章の中にあった

"会いたい"なんてなまえの口から聞いたことは一度もなかったんだ。お互いに忙しいことをわかっていて困らせないように気を使って、それを分かっていて俺も甘えていた。けれど今回初めて"会いたい"と言われた

なぁなまえ...お前に何があった?



あぁ、この時原因が自分だと気づいていれば...


もう後悔したって遅いんだ