トラファルガーにとっ捕まる
「テメェ、こんな所で何してる」
「…トラ、ファルガー…!」
ヤバい。
そう思うと同時、わたしは渾身の力でその腕を振り払った。
「おいッ!」
驚く島の人々を縫うようにして走る。
この島に停泊して三日目。
朝早くこっそり船を降りた割りに、見つかるのが予想より随分早かったけれども。
それでもこの日のために二日かけて散策したんだ。
ふふふ、わたしは今日こそあの男から逃げきってみせる…!
「ROOM」
「…っ!」
声が聞こえると同時にサークルが広がっていく。
何度も見た。
これは…。
早くこのサークルから外に出なければ…バラされ…っ、
「シャンブルズ」
「うげぇっ!?」
ドサ…ッ
…上から人が、降ってきた…。
わたしの方へ向かって石ころでも投げたんだろう。
そしてそれと自分をシャンブったんだろう。
…シャンブったってなんだ、正しいのかしら…この使い方。
「…ていうか重いですッ!潰れる!出てはいけないモノが口から出る…ッ!」
「うるせぇ。テメェが性懲りもなく逃げ出そうとするからだろうが」
「毎回言ってますけど、逃げ出すも何も…わたし、海兵ですよ!生きてる限り本部に海賊の情報を運ぶのが責務です!」
うつ伏せの状態で背中に乗られているわたしは、それでもばたばたと手足を動かす。
さながら、羽をもがれた蝶のよう。
…とか言っている場合じゃない。この人細身のくせに本当に重い。早くわたしの上から退いて下さいお願いします。
「ほう、そりゃあ立派な責務だな。邪魔したくなる程に」
「したくなる、じゃなくて完全にしてますからね!」
「なぁ海兵さん」
「…なんですか、海賊…っ」
動かせる首を精一杯捻って、わたしの上で不敵に笑う男を睨む。
背中とお腹が物理的にくっつきそうなせいで、若干涙目になっているけれど…精一杯の強がりを貫いてやるんだから!
「お前を殺すのは簡単だ。だがそれをしないのは何故だと思う?」
「…わたしを人質にして、海軍の包囲網を破ろうって魂胆じゃないんですか」
「なるほど。だがハズレだな」
「…?」
「おれはお前が気に入ってんだ、なまえ」
「海賊に気に入られても、困りますけど…」
「くくっ、だろうな」
わたしの背中からくつくつと笑う振動が伝わって来る。
今はその振動とても辛い。
「海軍の本分が治安維持だってんなら、海賊の本分は…奪う事だ」
「やはり、海賊ですね…あなたは」
「ああ、海賊団の船長をやってる」
気に入っている、なんて。
そんな理由で天敵である海軍の一人を生かしておいて、しかもそれを同じ船に乗せているなんて。
「その油断、いつか仇となりますよ」
「そうなるといいな」
「…っ」
本当に、憎らしい程掴みどころがない男だ。
「…トラファルガー・ロー、」
伝令、伝令!解放求ム!
(色んな意味で)(荷が重いっ)
end
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