謙也くんとルームシェア


◇高校3年生。


「なぁなまえ」

「んー?」

「もうすぐ卒業やなぁ」

「せやねぇ。実質後1ヶ月ちょいやもんなぁ〜」

1月も終わりに近いとある午後。わたしは謙也くんのおうちにお邪魔している。
所謂おうちデートってやつ。デートって言っても、謙也くんちのおこたでぬくぬくしてるだけだけれど。

「なまえは専門学校行くんやったな」

「謙也くんは大学やんね。そして医学部!」

「なんでそこ強調?」

「なんやかっこええやん、医学部」

謙也くんはきっと良いお医者さんになるんだろうな。そう思うと、なんだか自分のことじゃないのに嬉しくなる。
数年後の謙也くん。その隣にわたしは居るのかしら。

「で、なまえは、もうアパートとか決めたんか…?」

「んー、目星はつけてんねんけど、契約はまだしてへんよ。…謙也くんは?」

「俺はもう決まってんで!…なまえの学校の近くやねん」

「へえ!ほならすぐ遊びに行けんねんな!」

謙也くんの行く大学と、わたしの行く学校は非常に近い。そんでもって、謙也くんがわたしの学校に近いアパートってことは、更に会いに行きやすいってことだよね。
思わずニヤついてしまう。

「…な、なぁ!なまえ!」

「うん?」

急に謙也くんがおっきな声を出した。びっくりした。謙也くんてば声裏返ってるし。どうしたんだろう。

「その、えと…あ、アパートなんやけどな、」

「アパート?」

「俺んとこ、一つ部屋余んねん!そんで…なまえが部屋入んな言うんやったら絶対入らへんし、生活とかも別に合わせんでもええし!洗濯とかももちろん別々にする!で、俺がバイトしてアパート代も頑張る!せやから…い、一緒に、住まへんか…?!あッ、もちろん親御さんの了承とかいるのは分かってんねんけど…!」

謙也くんの長いセリフを理解するのに、少しだけわたしの意識は頭だけに集中した。
だからわたしは瞬きもできなくて。ただ真っ赤な顔で、少しだけ息を切らしてる謙也くんを凝視するしか出来なかった。



End




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