スーパーにて感傷に浸る
スーパーに到着し、入口の青果コーナーから順に、僕たちは店内を回っていく。
真剣な表情で同じ値段の商品を見比べ、より良い方を見極めようとしている彼女の横顔を見ると、ああやはり主婦なんだなと感心する。
しかし、時折「ちょっとだけ奮発です」と意を決した表情をする彼女は、きっと承太郎が来るかもしれないと赤髪が言っていたことを意識しているのだろう。
「(この時代の承太郎…か)」
一体、彼はどんな風に成長しているのだろう。
DIOを倒す旅から、約10年後…。
想像しようとするけれど、それはできない。
実は、DIOを倒した後…承太郎がどんな
表情をしていたか、思い出せないのだ。
もしかしたら銀髪もそうかもしれないが、こちらに来る直前の記憶がかなりあやふやになっている。
DIOを倒した、という認識はあるが、その情景が思い出せない。
その後、仲間たちと話したこと。
帰路の手段、出来事。…いや、そもそも僕は日本に帰国したのかさえ怪しい。
突然姿を消した僕に対して両親が怒っていたのか、再会できたことに感動してくれたのか。
それさえも思い出せないのだから。
帰国前にこちらへ来てしまったのかもしれない。ということも十分に考えられる。
それならば、あの死闘を繰り広げた後だ。
少しばかり記憶が混乱していたってそんなにおかしいことじゃあない。
「(それか、この世界は僕自身の夢だったりしてな)」
そんなことを思う程、この世界の…赤髪の僕はとても幸せそうで。
もし、本当にこれが全て夢なのだとしたら…。
「(最高に幸せな夢じゃあないか)」
仕事があって、大切な人がいて。
戦友とは未だに親友として連絡が取れる程の関係にある。
僕はひとりぼっちなんかじゃあない。
言い聞かせなくても、自然とそう思える世界。
「おい金髪、なにさっきからにやにやしているんだ。僕と同じ顔なんだから気持ち悪い顔するなよ」
「…ひどいな。いいじゃあないか、少し感傷に浸るくらい」
「はぁ?」
「典明くん、なにかスーパーに思い入れがあるのですか…?」
「いえ、そういうわけじゃあないんですがね、」
夢なら覚めなくてもいい。
ちょっぴりそんなことを思いながらも、夢とはいずれ覚めるものだということを僕は知っていた。
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