彼らの正体


「やあ、承太郎。直接会うのは久しぶりだね」

「ああ。…お前も元気そうだな、花京院」

「おかげさまで」

昔から周りとは何処か違う空気を纏っていた僕の親友は、10年程が経った今でも相変わらず独特の空気を纏い、彼自身勝手知ったる僕の職場に現れた。

彼はそこにいるだけで目立つし、話の内容が内容なだけに、自席ではなく適当に空いていた会議室を使わせてもらうことにした。

紙コップにコーヒーを淹れて彼の前に出すと、「相変わらず律儀な奴だな」と小さく笑われたけれど、わざわざ来てくれた人間に対してこれくらいするのは当たり前だろう。

「すまないな、キミはなにかと忙しい身なのに、急に来てもらって」

「いや、丁度日本にいる時で良かったぜ。…しかし、また訳の分からねえことになっているらしいな」

昼頃に電話をした時、概ね今起きていることについては説明していた。
突然現れた、2人の“花京院 典明”。
彼らがそれぞれ意思を持ち、その年齢、容姿、性格が少しずつ僕とは異なっていること。
そして、彼らが幽波紋ではないであろうことも。
そのうえで、僕は承太郎に「実際に見てほしい」と頼んだ。

「ああ…。敵意がまったく感じられないだけに、どう対処したものかと困ってるんだ」

「…それにしたって珍しいじゃあねえか。慎重なお前がそんな得体の知れねえ奴と嫁さんを同じ場所に置いて来るなんてよ」

「うん、そうだな。…会ってみてもらえば分かると思うんだが、彼らは…多分、思念のようなものだと思うんだ。…僕自身のね」

「思念…?」

「ああ。彼らからは殺気も敵意も感じない。…そして、体温や脈拍も」

「なに?」

今朝、僕が彼らに行ったいくつかの確認。
敵意の有無、ハイエロファントグリーンの操作、記憶の状態…そして、身体情報。
そこから分かったことは、確かに彼らも“花京院 典明”であること。
それから…彼らは生命体ではないこと。

「普通の人の目にも視える幽波紋は昔も遭遇したけれど、それは何か実体のあるものを媒体として姿を成していた。でも彼らからは何も感じなかった。…生命として、あるべきものが何もないんだよ」

「幽霊みてえなもんだと、そういうことか」

「おい、それだとまるで僕が死んだみたいじゃあないか。やめてくれよ。…まぁ、遠からずという気はするけれどね」

「おいおい、幽霊沙汰なんざおれにどうこうできる話じゃあねえぜ」

「…いや、多分、キミが最大のキーになると思う。きっと彼らは…キミと、そしてなまえに会うためにこの世界に現れたんだ」

言い切る僕を、承太郎は笑うでも馬鹿にするでもなく、じっと見返してくる。
僕が本気で言っていることを、分かってくれているんだろう。
本当に、僕はキミと出会えて良かったと、心からそう思うよ。

「…何故そう思う」

「言ったろ、彼らは僕自身なんだ。…分かるさ」

痛いくらいに、彼らの気持ちが。
そんな余計な言葉を呑み込みたくて、僕はコーヒーを飲み干した。




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