わたしはキッド海賊団が好きだ


「お、なまえ!包帯とれたのか。よかったな」

「うん、ありがとワイヤーさん」

船内を歩いている最中、わたしの顔を見るなりそう声をかけてくれたクルーは。今のワイヤーさんで6人目だ。

数週間前、他の海賊団と小競り合いがあった。
敵船の奴らは誰も彼もそんなに強くはなかったけれど、いっちょまえに数だけは多かった。
おかげで、うちのクルーに死人は一人もいないが、そこそこ怪我人が出た。
わたしもその怪我人のうちの一人というわけだ。

「はぁ…」

額から右目を覆うようにぐるぐると巻かれていた包帯は、さっきようやくとれた。
急に片目だけの生活を強いられて、色々不自由なことがあったから、早くとれてくれと思ってはいたけれど…。
実際にとれたらとれたで、わたしは溜息ばかり吐いている。

右目の視力に問題はなかった。
傷は、眉の端のあたりから目のすぐ横を通り、頬骨のあたりについたもの。
眼球に触れていなかったのが不幸中の幸いだ。

しかしその傷は癒えても、傷痕は消えてはくれなかった。

時間が経てばもう少し薄くはなるだろうが、多分、一生消えることはないだろう。

「くそ…あいつ、もっと痛めつけてから殺せば良かった」

「おーおー、随分と物騒な独り言だなァ」

「うわ?!お、お頭っ!?」

完全に一人だと思って悪態をついていたわたしは、急に後ろから声をかけられマジに飛び上がるかと思った。

「傷、残ったのが相当頭にキてるみてえだな」

「…誰も触れて来なかったのに、お頭ってほんっとデリカシーないですよねぇ…」

「ああ?」

良かったな、とか、もう大丈夫か、とか。
他のクルーは見た目に似合わず気を遣ってくれていたというのに、お頭ときたらどうだ。

ソッコーだ。ソッコーで傷を抉りに来た。

「海賊にとっちゃ傷なんざつきモンだろーが。ナメてんのか」

「そりゃそうですけど。でもわたし、女だって捨てたつもりないです。…顔に傷残ったら凹みますよ、ふつーに」

「ははは!凹んであの悪態かよ!海賊らしくていいなァおい!」

…うわぁ、殴りてえ…。
だけどお頭殴っても痛いのはきっとわたしの方だろうから、せめてゲラゲラ笑ってる凶悪な顔をじっとりと睨むだけにしておく。

「いいじゃねーか。お前のその物騒な物の考え方も、その小奇麗な顔に似合わねえ傷も、この海賊団にゃお似合いだ」

「え、お頭それ…褒めてます?」

「お前はキッド海賊団に似合うイイ女になってくのが不満だってのか?あ?」

こんな、クルーがだいたい血気盛んで、お頭がデリカシーなくて。
そんな海賊団に似合うなんて言われても、嬉しくないと思うのが普通かもしれない。

でも、わたしはその血気盛んなクルーも、デリカシーないお頭も。
好き、なんだよなぁ…。

なんだか照れ臭いような、嬉しいような、でもちょっとだけ悔しいような複雑な気持ちで、わたしはお頭から目を逸らさずにはいられなかった。

「…いえ、嬉しいです…多分」

「ハッ!多分かよ。可愛くねえな」

「海賊ですから、わたしも」

大きくて無骨な手でガシガシ頭をかき混ぜられながら、わたしはお頭と二人で笑った。




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