承太郎と手を繋ぎたい


「(いいなぁ…)」

前を歩く、仲睦まじく手を繋いだカップルを見て…思う。

隣を歩く承太郎へとこっそり視線を向けると、彼の手はだいたいの定位置である、ポケットの中。

もし、ここで「手を繋ぎたい」と言ったなら、承太郎はきっとそうしてくれるだろう。
でも、心の中で面倒な奴だと思われるかもしれない。
彼の腕にいきなり自分のそれを絡めるのもまた然り。

いつだったか、承太郎は大和撫子タイプが好みだと聞いた。

本人から聞いたわけじゃあないから、本当かどうかは些か謎だけど…。
本当なら、隣を歩くどころか三歩後ろを慎ましくついて行くくらいがベストなのかもしれない。

…わたしって、承太郎に嫌われないようにしたいってことばっか考えてるなぁ。

はぁ、と思わず小さく溜息が漏れてしまう。

「悪い、速かったか?」

「あっ、ううん、ごめんね。ちょっとぼーっとしちゃってた」

溜息が聞こえてしまったのか、気が付けば少しだけ遅れていたわたしへと声をかけてくれた。
慌ててすぐ隣へと並ぶけれど、承太郎はじっとわたしの顔を見降ろしたまま。

「承太郎…?」

「…何か、もしおれに言いたいことがあるなら言ってくれ。悪いがおれは、そういうのに疎いんでな」

努力はするが…。と、珍しく口籠るように言った承太郎は、多分やっぱり自分の歩くスピードがわたしには速かったんじゃあないかと気にしているんだと思う。
実際はそうではないんだけれど、でも、わたしはそんな風に承太郎が気遣ってくれたことがすごく嬉しくて…胸がきゅぅっと切ないような、でも甘いような。

ちょっとだけ、自惚れてしまってもいいだろうか。
そして、ちょっとだけ勇気を出して、お願いをしてみてもいいだろうか。

ドキドキする心臓を少しでも落ち付けたくて、わたしはぎゅっと自分の手を握る。

「承太郎…あのね、」




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