承太郎と色々考え過ぎる子


◇平和(?)な高校生。

ヤバいヤバいヤバい。
次の授業が移動教室だから急いで廊下を小走っていたら曲がり角で人にぶつかって尻もち着いちゃったのはまぁいいとしてそのぶつかった人が色んな意味で有名人のJOJOこと空条くんだった。

…って、いや、いやいやいや、現実逃避気味に状況整理している場合じゃあない。

空条くんといえば喧嘩は負けなし、学校の先生でさえ殴ったことがあると聞き及んでいる。

もしかして今ぶつかったのもわざとだと思われてしまっただろうか。
「テメェどこ見て歩いてんだ、あぁん?!」とか言われてしまうのだろうか。

ぶつかられた空条くんはびくともしていなくて、無様に尻もちを着いたわたしを見下ろしている。
もともとすごく背が高い空条くんが、廊下に座り込むわたしを見下ろしている。
とんでもない威圧感だ。
実際はほんの一瞬であろうこの時間が物凄い長さに感じる。

謝ってすぐにでも逃げ出したいところだが、脚に力が入らない。
ヘビに睨まれたカエルとはこんな気持ちなのだろうか。
これなら逃げ出すよりも土下座の方が早い。
そうだ、平に謝ろう。必死に謝り倒そう。

「あ、あの、ごめんなさ、」

「すまねぇな。…落としもんだぜ」

「へ…、ありがとう、ございます…」

情けなく震える声を必死に絞り出して謝り始めると、空条くんがその大きな身体を屈めてさっとわたしの横に落ちたノートと教科書、ペンケースを拾った。
ほらよ、と差し出されたそれらをぽかんとしたまま受け取り、なんとかお礼を言う。

今、何が起きているんだ…。
まだまだ唖然としているわたしの手を大きな手が握って、ぐいっと上に引っ張られたらあら不思議。

さっきまで言うことを聞かなかった脚がスッと伸びて、立ち上がることに成功した。

「怪我がねぇなら急いだ方がいい。間に合わなくなるぞ」

「間に合わなく…ハッ!そ、そうだ急がなくちゃ!えっと、ぶつかってごめんなさい、あと、ありがとうございました!」

「おう」

空条くんの言う『間に合わなくなる』の意味を一拍置いて理解できたわたしは、さっきまでたじたじだったのが嘘のように早口でごめんなさいとありがとうを言って、頭を下げた。
空条くんはただ二文字の返事だったけれど、行って来い、と言ってくれているような気がした。

初めて話した空条くんは、言葉こそぶっきらぼうだったけれど、優しかった。
何もされないどころか、ノートとか拾ってくれたし。起こしてくれたし。

ハッ!そ、そうだあの時…わたし、空条くんと手を繋いだ?
いや、繋いだっていうか掴まれた感じだったけれど…。

…大変だ。
空条くんは不良という意味でも有名だけれど、女子の人気がぶち抜けていることでも有名。

わたし、社会的に抹殺されたりしないかな…。

なんとか始業のチャイムまでには間に合ったけれど、授業内容は右から左へ吹き抜けていった。




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