キャプテンが拾ってきた元奴隷


「あいつ、随分マシなツラになったな」

「あいつ?…ああ、なまえですか」

ぼそりと呟いたキャプテンの言葉に対し、誰のことだろうかと首を傾げたのは一瞬だった。
キャプテンの視線の先を辿ればすぐに答えは出たからだ。

視線の先には二人いて、どちらも楽しそうに笑っている。
一人は、そんな顔はもう見飽き始めてすらいるシャチだから即刻対象外だ。

変わったといえば、もう一方の彼女。
ジャンバールと同じく奴隷になりかけていたところを、キャプテンが助けた女だ。
今は、少し大きいおれたちと同じシンボル入りのツナギを着ている。

「本当に、当初から考えればかなりの変化ですよ。最初は無感情な無表情、というか…まるで人形みたいでしたからね」

「お前もそう思うか、ペンギン」

おれが頷くと、キャプテンはほんの少しだけ笑ったように見えた。
すぐにコーヒー入りのカップで、その口元は見えなくなってしまったけど。

彼女がクルーに加わった時、そりゃあキャプテンが連れて来た人間だったし、反対する奴はいなかった。
けれど、その無機質を思わせるほどの表情のなさに、どう接すべきかと不安になったのは、多分おれだけじゃないはずだ。

彼女は感情が死んでいる。おれはそう思った。

それを他のクルーや、まして本人に言ったことはないが、今となってはひどい思い込みをしていてすまなかったと謝りたくなる。

まだほんの少しぎこちなく見える笑顔ではあるが、ここまでくるのに随分時間がかかった。

「やっぱ、女は笑ってる方がいいですね」

しみじみと言うおれをキャプテンがじっと見てくるもんだから、今更ながらなんてこっ恥ずかしいことを言ってんだ、おれは。と、若干後悔した。

でも、キャプテンはいつもみたいな不敵な笑みで、言ったんだ。

「おれが見込んだ女だからな」

「え、」

キャプテンのその言葉が本気なのか冗談なのか。
確かめる暇もなく、キャプテンはふらりと何処かへ行ってしまった。
…まぁ、実際キャプテンが何処かへ行かなくても、おれは聞けなかっただろうけど。




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