承太郎とクリスマスの予定
◇平和な高校生。
少し前まではオレンジと黒が基調となる装飾が多かった街並みは、がらりとその表情を変えている。
今は緑と赤、そしてキラキラ光るイルミネーション。
日本人て本当にイベント事好きだな。
でも、かくいうわたしもイベントは好きだ。
何か特別にこれをするとかはないけれど、この街が賑わっている雰囲気とか、年々クオリティが増していく装飾とか。
自然とこちらまでうきうき気分になれるのが好き。
「もうすぐクリスマスだねぇ」
「平日だけどな」
「でも25日で学校終わりだよ。承太郎は何か予定ないの?」
「別に。なんもねえよ」
下校するこの時間、通学路にある街路樹は飾り付けられたイルミネーションが灯っていつもと違って見える。
通り過ぎる光の粒たちに浮足立つわたしの隣で、相変わらずクールな顔して相槌を打つ承太郎。
なんもない、なんて言うけれど、きっとホリィさんがご馳走とか作るんだろうな。
七面鳥とか焼きそう。ケーキも焼きそう。
「そういうお前は何かあるのか」
「ふふっ、彼氏とデート!」
「…あ?」
「ちょ、なにその顔怖いな。嘘だよ、ツッコんでよ虚しいから」
嘘吐くんじゃねーよ、みたいな軽いツッコミが返ってくると思ったら、なんかすごい顔で睨まれた。冗談の通じない奴め。
「そうだなぁ…せっかくだから電車でちょっと脚伸ばして、でっかいツリー見に行こうかな」
朝、テレビでやってたでっかいショッピングモールのでっかいツリー。
夜になると青と白の電飾が点灯されて、まるでホワイトクリスマス!なーんてね。
「…寂しい奴」
「なんも予定ない人に言われたくない言葉ベスト1頂きました」
「予定ならあるぜ」
「え、さっきなんもないって言ったじゃん」
「電車使ってでかいツリー見に行く」
「…は、」
なにそれ、パクリ!
いや違うよ、そうじゃなくって。
「奇遇だね、わたしも同じ予定」
「おう」
「…一緒に行く?」
「いいぜ」
「…ふはっ、ふふふ…っありがとっ!」
優しいのに不器用なんて、損な性格だ。
なんだかおかしくて笑っている内に、いつの間にか街路樹たちのキラキラ空間が終わっていた。
でも、浮足立つわたしのうきうき気分は、さっきよりずっと増している。
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