準備
―…あれから数時間が過ぎ、病室に残るのはわたしと花京院の二人だけ。
この病室では外の時間がわからないけれど、今は真夜中に差し掛かろうという時刻らしい。
他のみんなは一旦別室に行き、今は眠っている頃だろう。
「じゃあ、麻酔が効いてきたみたいだから、始めるよ」
「うん。よろしくお願いします、花京院先生」
滅菌されたゴム手袋をぎゅっとはめ、花京院はわたしの腕に通されたチューブの除去を始めてくれる。
麻酔のおかげで痛みはないけれど、傷口とか、注射の針先を直視することが苦手なわたしは、逆側に視線を向けてじっと終わりを待つ。
『最期に、みんなで太陽を見たい』
みんなの時間を奪ってしまうのは申し訳ないと思いつつも、言葉どおり、わたしの最期のわがまま。
みんなは嫌な顔ひとつせずに快諾してくれた。
明日の夜、明け方より前に此処を出て、みんなで朝日を見るんだ。
いつか砂漠で見たような、綺麗な朝焼けだといいな。
「なまえ、終わったよ」
「あれ、結構早いんだね」
「入れる時は結構時間がかかるんだ。けど、今は抜くだけだから」
「へぇ。わたし、医療のことよく知らないんだけど、これって普通の点滴じゃあダメだったの?」
「うーん、なまえは血液透析って知ってるかい?」
「聞いたことあるってくらいかな」
「まぁ、正確に言えばそれとも違うんだけれど、簡単に言ってしまうと、なまえの血液を入れ替えようとしてたんだ」
ピンセットや消毒液などを片しながら、花京院は続ける。
「なまえの身体にもともとあった全部の血を入れ替えてしまえば、奴の…DIOの血も体外に出るんじゃあないかって思ったんだけれど。結局血液を入れ替えるどころか、輸血した血がどんどん傷口を塞いでいって、足りないくらいになった」
「…なるほど」
最初は、最新の医療ってすごいなぁ、なんて思っていたけれど、DIOの回復力を目の当たりにしているわたしからすれば、むしろそっちの方が合点がいく。
でも、花京院は色々頑張ってくれたんだな。
いや、多分、他のみんなもなんだろう。
わたしなんかのために、本当にありがとう。
明日、みんなと話したいことがたくさんたくさんある。
でも、これだけは必ず言わなくちゃ。
みんなのこと、大好きだよ。
本当にありがとう。
きっと、笑顔で言えるはず。
end
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