千歳とプリクラ


「なまえ、これからゲーセン行かんね?」

「へ?いいけど…珍しいね、千歳がゲーセンなんて」

「いや、まぁ…なんね、ね」

「いや、『ね』って言われてもなぁ…」

「まー細かいこつ気にせんと」

「う、うん?」



「あ!あのぬいぐるみかわいい」

「せやね、後でまた来るばい」

「え、なんで後?今やっていけばいいよ今」

「いかん!先にやることがあっとよ」

「やることって?」

「あれ」

「なに?…プリクラ?」

「ん」

「おーっと、千歳がなんか女友達みたいになった」

「なんでもよかけん、どんどん行くばい」

「ひーきーずーらーなーいーでー!」



「千歳、もっと屈まないと入んないよ」

「…プリクラっちゅーんは不親切やね…」

「いや、普通はそんなに苦労しないし…。よし、まず下駄を脱ごうか」

「あああもう!なまえ!」

「え、なに…ちょッ!」

『はいチーズ』

カシャッ

「…」

「これならちゃんと写ったかいね」

「…なんつー恥ずかしいことを…っ!」

「ああでもせんと、高さがわからんかったけんね」

「だからって後ろから抱きつくとか…!」

「さ、ラクガキしに行こうかね」

「ああああ!もういい!ラクガキ終了!」

「あ、」

「こんな恥ずかしいプリクラ、何処にも貼れないじゃない!」

「そんなに恥ずかしかったと?」

「当たり前です」

「ちゅーせんかっただけマシったい」

「したらわたしは確実に千歳を突き飛ばしてたよ」

「怖い怖い」

「…なんかムカつくなぁ」

「あ、出てきたばい」

「ちょちょちょ千歳さん」

「ん?どげんしたと?」

「や、なにしてんの?」

「ケータイにプリクラを貼っとるだけばいみょうじさん」

「なんてことを…っ!剥がして!今すぐ剥がしてぇえーっ!」

「これを剥がしたら今日此処に来た意味がなくなってしまうけんね」

「え、なにそれ」

「…でも、やっぱりちゅーしとけば良かったかいね…」

「うん、もう千歳とゲーセンには来ない」




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