長谷部さんも失敗する
◇名前変換なし。
例えば、刀装の作成に失敗した時。慣れぬ掃除や畑作業で上手くいかなかった時。
俺の失態を見て、主は笑う。
それは出来の悪い部下を罵倒するものではなく、例えるなら…初めてのことに四苦八苦する我が子を見るかのような、そんな穏やかな笑顔だ。
ただの物であった頃から数えれば、俺は主よりも随分と長く存在しているのだし、この例えでは些か不適切な気もする。
しかし、率直に俺はそう感じたんだ。
「久しぶりですね、長谷部さんが刀装を作るのに失敗したのは」
「申し訳ありません、主。貴重な資源を無駄にしてしまいました…。なんなりと罰をお与えください」
「わ、顔を上げてください、長谷部さん!…確かに資源は限られています。でも、これは長谷部さんを含む皆さんが集めて来てくださったもの。故意ではない失敗にわたしが罰を与えるなんてことはあり得ません」
「しかし…」
「それに、変な話と思われるかもしれませんが…長谷部さんはいつも大抵のことをそつなくこなす方ですから、こんな風にたまに失敗してしまうところを見ると、少し安心するんです」
「…安心、ですか?何故…」
「うーん、完璧すぎると一緒に居るのにとても遠い存在のように感じると言いますか…いえ、そもそも長谷部さんたちは神様ですから遠い存在ではあるのですが、」
「…自分にも支えられることがあると思うと嬉しい、と…そんな気持ちでしょうか」
「そうですね…
烏滸がましいかもしれませんが、そのとおりです。…だからどうか、今回のことは気にしないでください」
「…はい。ありがとうございます」
ああ、なんてことだ。
同じじゃないか、俺と。
皆の前では凛とした振る舞いを心がける彼女が時折見せる小さな失敗や、苦手なもの、苦手なこと。
それらを発見した時に手を差し伸べることができるあの安心感。幸福感。
「大丈夫ですか?」、「どうかしましたか?」…そう言って俺に向けられる主の笑顔を思い返して、その心内を想像する。
あの笑顔は他の連中にも向けられていただろうか。
…願わくば、どうか俺だけに見せる微笑みであってほしい。
そう思うこの気持ちは、果たして主も抱くものだろうか。
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