承子ちゃんに大事なお話


承子ちゃんをお誘いするの続き。


「いらっしゃい、承子ちゃん」

「…ああ、お邪魔します」

「何か飲み物持って行くので、先に部屋へ、」

「いや、いい」

「承子ちゃん?」

「何か、大事な話があるんだろ…なまえ」

「っ、」

「どうして分かったのか、って顔だな。…分かるさ。アタシを誘った日から…いや、それよりもっと前からずっと、お前上の空だったろ」

「そ、そんなに分かりやすかったですか、わたし…」

「まぁな。…学校じゃあ言いにくいようなことなんだろ」

「はい、学校では、ちょっと…」

「こうして二人きりになれるのも最後かもしれねぇ。何でもいい、言ってくれ。…アタシがいなくなる前に、できる限りお前の力になってやりたいんだ…!」

「えっ、あ…っ、違うんです!困りごととかではないんです!」

「…そうか、ならよかった…。じゃあ話ってのは報告か何かか?」

「いえ、それも少し違うんですが…ふふっ」

「なまえ…?」

「…承子ちゃんは、本当に優しいです」

「…別に、誰にでもってわけじゃねぇ」

「そうかもしれません。…でも、わたしにはいつも優しいです」

「それは…、」

「承子ちゃん、あのね…わたしもいい加減自分の気持ち、ちゃんとしようって。いつまでもこのまま…承子ちゃんの優しさに甘えたままじゃダメだって、そう思ったんです」

「なまえの、気持ち…?」

「承子ちゃんに、その…好きって言ってもらえてからずっと、考えてたんです。わたしはどう思ってるんだろうって…。でも、結局前と同じように承子ちゃんはわたしに接してくれたし、わたしもよく分からないままで…ここまで来てしまったんです」

「…そう、か…。なまえを悩ませてたのは、アタシだったんだな…わるか、」

「ま、待って!待ってください!違うんです!…だから、その、いっぱいいっぱい考える時間をくれたから、こんなギリギリになっちゃったけど、でも!やっぱりわたしも承子ちゃんのこと、す…す、すきって、気付いて、伝えなきゃって…」

「……は、」

「…こんな時に、困らせるだけかもしれないとは考えたんです。でも…承子ちゃんはわたしにちゃんと言ってくれたから、わたしも言わなくちゃダメだと、」

「…は、はは…っ」

「えっ、じょ、承子ちゃん!?どうしたんですか、玄関でへたり込んだら服が汚れちゃいます…!」

「…ばかやろぉ…お前、ほんと…なんでこんな時期に、んな大事なこと言うんだよ…」

「ご、ごめんなさい…。愛想尽かされても仕方ない、です…」

「鈍っちまうだろ、アタシの決心が。…留学なんぞ取りやめにして、日本でなまえと一緒に過ごしてぇと、マジに考えちまうだろ。そんなこと、言われたらよ…」

「承子ちゃん…!…わたし、お手紙いっぱい書きます!すぐにはムリだけど、バイトして、お金を貯めて、長い休みの時にはアメリカへ遊びに行けるように頑張りますから…っ!」

「ああ…。アタシも、できるだけ日本へ帰って来られるように努力する。…4年間一度もなまえに会えないなんざ、耐えられる気がしねぇからな」

「はい。わたしも、きっと耐えられないです…っ」

「おい、泣くなよなまえ…」

「承子ちゃんだって泣きそうじゃないですかぁ…!」

「アタシのこれは…嬉し泣き、ってやつだぜ」

「ふふふっ、わたしも、同じですっ」



足に力が入らなくて、へたり込んだ玄関は冷たかった。
だけど彼女の涙はとても、あたたかい。




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