リゾットさんは放棄する


◇菅田 将暉さんの楽曲、「さよならエレジー」からイメージ。なまえさんは一般人。


もしも。…もしもの話だ。
彼女がオレの稼業を知ったとしたら、どんな反応をするだろう。

恐怖するだろうか。軽蔑するだろうか。
どちらにせよ、もう関わり合いになりたくないと考えるだろう。
関わり合ったことすら後悔して、オレとの短い時間をもなかったことにしたいと考えるのではないか。

それが普通だ。

それでももし。万が一オレという個人に向けられた愛情が揺るぎないものだったとしたら。
そして、オレがその愛というものを信じることができたとしたら。

その時オレは、その手を掴んだままいられるだろうか。
この汚れきった手で。

どうせいなくなってしまうのなら…手放してしまうくらいなら…。

オレは愛なんていらない。


「リ、リゾットさん…?どうしたんですか、急に」

「すまない。もう少し…あとほんの少しこのままでいさせてくれ」

「いえ、あの…ちょっと苦しいですけど、わたしは嬉しいので…どうぞ、好きなだけこうしててください」

「…なまえ、」

「はい、なんでしょうか?」

「……ありがとう」


今、こうして身を委ねてくれていること。側にいられた時間。
オレにとっては本当に幸せなことだ。確かに、幸せだった。

別れの言葉さえもうまく言えないオレを、どうか忘れて生きてくれ。




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