承子ちゃんの一時帰国2
◇
承子ちゃんの一時帰国の続き。
「改めまして…おかえりなさい、承子ちゃん。あと、いらっしゃいませ!」
「ああ、邪魔するぜ」
「えへへ…承子ちゃんが家に来るの、久しぶりなのでなんだかすごくドキドキします」
「アタシは空港からずっと緊張しっぱなしだ」
「そ、それを言うならわたしだって!空港に着くまでの道のりからずっとドキドキしてました!」
「空港までと考えると、やっぱりアタシの方が長い。なにせアメリカからだからな」
「それはそれで…飛行時間は長いんですから、リラックスしていないと疲れちゃいますよ。…ふふっ」
「ふ…っ、久しぶりになまえと直に会って、いろいろと言いたいことがあったはずなんだがな…。不思議と、どれもどうでもいいことに思えちまう」
「わたしもです。何を話したかったのか、すぐに出てこなくって…あ、でも、」
「ん?」
「承子ちゃんに渡したいものがあるんです。…よいしょっ」
「なんだかわからねぇが、重いんならアタシが…、」
「いえ、そんなに重くはないので大丈夫です。…別の意味ではちょっと重い、かもしれないですけど…」
「別?」
「えっと、まずこれが去年のクリスマスで、これがバレンタインデー。こっちはホワイトデーです。あ、賞味期限とかそういうのはぜんぶ関係ないものなので、そこは安心してください!」
「お、おう…?」
「それで、これはお誕生日!ちゃんとしたホールのケーキは初めて焼いたので、ちょっと自信はないんですが…」
「ちょっと待ってくれ、なまえ。これは…、アタシのために用意した、ってことなのか…?」
「はい。…一緒にいられなかったイベントの分も、ちゃんと残しておきたいというか…わたしが承子ちゃんにしてあげたいって思ったことを、勝手に押しつけているだけなんですけど」
「…それで『重い』か」
「は、はい。引かれるかなぁ、とは考えたんです。…でも、気持ちを抑えられなかったと言いますか、せずにはいられなかったと言うか…」
「ああ、くそ…ほんとにお前は…っ」
「え、あの…承子ちゃん…?」
「なまえ」
「は、はいっ」
「嫌だったら思いっきり引っぱたけ。むしろ殴ってくれ」
「えっ、なぐる…?!」
「でないと多分、止まれねぇ」
「承子ちゃ、…んっ……んぅ…っ、」
「……………はぁ…っなまえ…」
「…あ、あらまがくらくら…ひま…」がくっ
「は、おい、なまえ?!嘘だろ、なまえッ!?」
「…あれくらいのキスで酸欠になるとは…誤算だったぜ…」
「うっ、ごめんなさい…いきなりで、何をどうしたらいいのかパニックになっちゃって…」
「(パニック、ねぇ…)」
でも、殴られなかったな…。
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