承子ちゃんの一時帰国2


承子ちゃんの一時帰国の続き。


「改めまして…おかえりなさい、承子ちゃん。あと、いらっしゃいませ!」

「ああ、邪魔するぜ」

「えへへ…承子ちゃんが家に来るの、久しぶりなのでなんだかすごくドキドキします」

「アタシは空港からずっと緊張しっぱなしだ」

「そ、それを言うならわたしだって!空港に着くまでの道のりからずっとドキドキしてました!」

「空港までと考えると、やっぱりアタシの方が長い。なにせアメリカからだからな」

「それはそれで…飛行時間は長いんですから、リラックスしていないと疲れちゃいますよ。…ふふっ」

「ふ…っ、久しぶりになまえと直に会って、いろいろと言いたいことがあったはずなんだがな…。不思議と、どれもどうでもいいことに思えちまう」

「わたしもです。何を話したかったのか、すぐに出てこなくって…あ、でも、」

「ん?」

「承子ちゃんに渡したいものがあるんです。…よいしょっ」

「なんだかわからねぇが、重いんならアタシが…、」

「いえ、そんなに重くはないので大丈夫です。…別の意味ではちょっと重い、かもしれないですけど…」

「別?」

「えっと、まずこれが去年のクリスマスで、これがバレンタインデー。こっちはホワイトデーです。あ、賞味期限とかそういうのはぜんぶ関係ないものなので、そこは安心してください!」

「お、おう…?」

「それで、これはお誕生日!ちゃんとしたホールのケーキは初めて焼いたので、ちょっと自信はないんですが…」

「ちょっと待ってくれ、なまえ。これは…、アタシのために用意した、ってことなのか…?」

「はい。…一緒にいられなかったイベントの分も、ちゃんと残しておきたいというか…わたしが承子ちゃんにしてあげたいって思ったことを、勝手に押しつけているだけなんですけど」

「…それで『重い』か」

「は、はい。引かれるかなぁ、とは考えたんです。…でも、気持ちを抑えられなかったと言いますか、せずにはいられなかったと言うか…」

「ああ、くそ…ほんとにお前は…っ」

「え、あの…承子ちゃん…?」

「なまえ」

「は、はいっ」

「嫌だったら思いっきり引っぱたけ。むしろ殴ってくれ」

「えっ、なぐる…?!」

「でないと多分、止まれねぇ」

「承子ちゃ、…んっ……んぅ…っ、」

「……………はぁ…っなまえ…」

「…あ、あらまがくらくら…ひま…」がくっ

「は、おい、なまえ?!嘘だろ、なまえッ!?」



「…あれくらいのキスで酸欠になるとは…誤算だったぜ…」

「うっ、ごめんなさい…いきなりで、何をどうしたらいいのかパニックになっちゃって…」

「(パニック、ねぇ…)」



でも、殴られなかったな…。




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