高校生の衣替え
◇平和な高校生たち。
6月1日、晴れ。
夏というにはまだ早いような、でも春というには遅すぎる、そんな中間の時期。
5月中の夏服移行期間が終わり、今日から夏服への完全移行です!
実はわたくしことみょうじ なまえ、結構この日を楽しみにしていました。
夏に向かって行く季節の移ろいを感じたり、そういうのももちろんなのですが、なんと!今日から完全移行なのです!
完全に!移行するのです!
そう、5月中ずっとずっとずーっと冬服を着続けていた彼ら、JOJOと花京院くんも、当然例外ではないのです!
「(ふふふっ、なんだか新鮮な気分。早く来ないかな)」
いつもよりちょっと早く着きすぎてしまった二人との集合場所。
でもこんな風にワクワクしながら待つのは悪くない。
暫く待っていると、少し先から女の子たちの黄色い声が聞こえてきた。
これはJOJOがこちらに向かってくる合図。
わたしと集合する前に花京院くんと合流して来るので、此処に着くまでには取り巻きの女の子たちは概ね散っているから別に問題はないけれど、なんだかその黄色い声がいつもより更に騒がし…いえ、賑やかな気がする。
やっぱり夏服になったことが原因だろうか、なんて考えてもう暫く待つ。
「おはようございます、なまえさん」
来た!
かけられた声に待ってましたとばかりに振り返る。
「…うわぁ〜…」
「どうかしました?」
いつもならすぐに「おはよう」って返すのに、それすら忘れて見入ってしまった…ううん、見惚れてしまったわたし。
花京院くんもJOJOも、そんなわたしに不思議そうな表情をしている。
だってしょうがないよ!
二人の破壊力が想像より遥かに高いんだもん!わたしの想像力って結構乏しかったんだなって思っちゃう程なんだもん!
JOJOは、タンクトップのシャツに半袖のワイシャツを羽織っただけの、言ってしまえば学ランがワイシャツに変わっただけって感じ。ただそれだけのことなのに、今まで見えなかった腕とかよく見えるようになった首元とか。
そういう今まで隠れていた部分が露わになったことで、なんだかとてつもない色気というか、フェロモンというか…これはあの女の子たちの反応も頷ける。
そして花京院くんは、冬服の時から分かっていたことだけれど本当にスタイルがいい。JOJOみたいにすごく筋肉質ってわけじゃないけれど、決して華奢というわけでもない。
それでいて腰から脚にかけてのラインは本当に綺麗で、今まで長ランで隠れていたのがもったいないとすら思う。
本人に言ったら苦笑いされそうだけれど、モデル体型っていうのかな、すごく憧れてしまう。
「制服でこんなこと言うのもなんだけれど、二人ともすっごく似合ってる!」
「ああ、ありがとう」
「おれは落ち着かねえぜ」
「ふふっ、JOJOはなんだか凄味が減少した感じ。あの鎖がないからかな?」
「あの鎖、存在感凄かったからな。流石にあれはワイシャツじゃあ無理だし」
「でも、わたしは夏服のJOJO好きだよ」
「…さっさと行くぞ」
JOJOはふい、と顔を逸らして、さっさと歩きだしてしまう。
褒めたつもりだったのだけれど、何か言い方間違えちゃったかな…。
何故かくすくす笑っている花京院くんと一緒にその背中を追いかける。
「ねぇなまえさん」
「なぁに?」
「なまえさんも似合ってるよ、夏服」
「!あ、ありがと…」
朝イチの爽やかスマイルは、ワイシャツの白と相まって、よりきらきらして見えた。
まだ夏というには早い時期だというのに、この暑さはなんなのだろう。
自分の体温とか心臓とか、とにかく自分を落ち着けたくて、わたしは朝から素数を数えるのだった。
end
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