スターダスト・メモリーズ
※設定とか※
舞台はn巡目の世界です。エジプトの旅とかありません。普通に皆生きてます。
というか皆学生です。学年などは本文中にて。
ちょっとシリアス。
おれたちには記憶があった。
身に覚えのない、けれどそれは確かな“記憶”。
それが今生のものではないことは明白だった。
おれが生きているこの世界をAとするなら、その実体験をしたのはBの世界。
パラレルワールド、とでもいうのだろう。
そんな記憶を、おれたちは持っていた。
だからこそ、年齢も若干の見た目も違う中、こうして自然に寄り集まることができたのだろう。
おれたちの記憶に残る、ある一人を除いては…−。
「なぁなぁ花京院、聞いてくれよ!」
相変わらずお調子者のポルナレフは、この世界ではおれの1学年上。
今ここにはいねえが、アヴドゥルと同じく今年から2年の一応先輩だ。
「うるさいぞポルナレフ。僕は1限目から小テストがあるんだ。邪魔をするな」
「花京院は真面目ね〜」
「お前も静かにしてろ、スカタン」
クソ真面目に教科書を見返す花京院はおれとタメ。
ジョセフは2つ上の3年。…一応おれと兄弟だったりするわけだが、そこは些か違和感を覚える。
おれたちと同じく“記憶”を持っている3年のシーザーがだいたいお守役をしてくれている。
この学園にはおれたちと同じ“記憶”を持つ人間が多い。
おれとジョセフの兄貴であるジョナサンは歴史の講師をしているし、DIO…いや、今はディオか。あいつも英語の講師なんぞしている。
初対面だというのに見知った顔、というなんとも奇妙な生徒や教師がわんさといるわけだ。
その中で、おれはいつも探している姿がある。
恐らくそれはおれだけじゃねえ。
花京院も、ポルナレフも。あの旅の記憶を持った仲間は皆同じだろう。
「おい皆、聞いてくれ!」
「アヴドゥルさん、何かあったんですか?」
「俺の時とえらい反応違うよなお前」
何処からか戻ったアヴドゥルはやや興奮気味で、勢いよくおれたちの方へと歩いて来る。
「みょうじが、この学園に来たかもしれん」
「…!?」
アヴドゥルの言葉に、その出された名前に、おれたちは一斉に息を呑んだ。
「本人の確認はしていないが、職員たちが転入生の話をしていたんだ。その時、『みょうじ』と確かに言っていた」
「マジかよ!さっそく確認しに行こうぜ!」
「今なら職員室にいるかもしれませんね」
ポルナレフが即座に立ち上がり、それにつられるように次々と立ち上がる。
ずっと探していた、みょうじ。
見た目は普通の女子高生だが、芯の強さと正義感の強さ。そしてそれらを支える幽波紋の力と男張りの判断力を兼ね備えた力強い仲間。
おれたちの知るみょうじという人間は、そういう奴だ。
そして、“記憶”の中で見た彼女の最期に…心臓が握り潰されそうなほどの後悔と、彼女の功績への賞賛の念が込み上げる。
だからこそ、おれたちはこの世界で彼女を探しているのだ。
同じように記憶があるのか。
あいつは今、幸せに生きているのか。
そんなことを思いながら、おれたちはぞろぞろと職員室の方向へと歩を進める。
廊下の反対側から、教師がこちらに向かって歩いて来るのが見え、そしてその後ろにこの学園のものではない制服を着た姿がちらりと見えた。
しかし、あの制服は…。
「もしかして…」
花京院が僅かに漏らした呟きは、恐らくこの場にいる全員の脳裏に過ったことを示唆するものだろう。
教師と、そして引率されている生徒と、すれ違う。
「みょうじ…なのか?」
おれの言葉に、生徒は足を止めた。
朝の喧騒に紛れ聞こえなかったのだろう教師は、そのまま先へ進んでいく。
「ええ。ボクはみょうじですが…、キミたちは…?」
やはり…。
おれたちの方を向いたそいつ…みょうじは、男だった。
突然自分の名を呼ばれたことが不思議だったのだろう。
首を傾げながらおれたちをじっと見返している。
つまり、おれたちの事を、知らないらしい。
しかしその顔や雰囲気に現れる面影は、間違いなく“あの”みょうじだと認識させる。
「みょうじくん、どうかしたのか?」
廊下の少し先で気づいたらしい教師に声をかけられ、みょうじは相変わらず不思議そうな顔で「すまない、何か用があるのなら後で頼む」と残し、教師の元へ駆けて行く。
「彼がお前たちの探していたみょうじ…くん、だったのか?」
「あーうん、そうと言えばそうなんだけど…」
みょうじに関しての“記憶”がないシーザーは、なんとも煮え切らないおれたちの反応に訝しげな表情を浮かべている。
ようやく見つけた、おれたちの最後の仲間。
しかし、みょうじにとっては初対面のおれたち。
行き場のない想いが、妙に現実的だった。
end
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