仗助くんと複雑な年上心


「かわいい」って言われたら、普通嬉しいはずなのに。
なんでかなぁ、仗助くんに言われると少し…複雑な気持ちになる。

例えば、SPW財団の仕事で同行している承太郎さんに対する眼差しは、「かっこいい」とか「憧れる」とか、多分そういうものだと思う。
確かに承太郎さんはわたしよりも8つ年上だし、見た目も性格もかっこいい。わたしだって憧れちゃうもの、男の子なら尚更だよね。

でも、わたしも仗助くんより4つ年上だし、一応この仕事に同行できる程度には幽波紋含めて普通とは違うスキルを持っている。

「美人」とか言われるような外見ではないことくらい重々承知のうえだけれど、それでも「かわいい」っていうのはなんていうか…年上らしくないとか、頼れないとか…そういうことなのかなって思ってしまう。

「考え過ぎじゃあねえのか」

「でもですね承太郎さん、この間、衝撃的なことがあったんですよ」

「…?」

「ドゥ・マゴに行った時なんですけど、わたし…仗助くんに奢られてしまったんです…!」

「ほぉ。…で?」

「え?」

「…終わりか?」

「え、終わり、です」

「…」

え、衝撃的でしょう?
当たり前だけど仗助くんは学生で、わたしは社会人。
そしたらわたしが奢ってあげるのが普通でしょう?
承太郎さんだってそうしますよね?

『いーんスよ、おれが無理矢理誘っちゃったんですから!…あー、そんな気にするんだったら、今度。また一緒に来た時にでもお願いします』

なんて、まるで次のデートのお誘いみたいなこと言わせちゃうなんて、年上としてどうなの。

仗助くんは優しいから、わたしを納得させるためにああ言ってくれたに違いない。
まったく、仗助くんも承太郎さんと同じで、見た目も中身もかっこいい。
はぁ…、そんな仗助くんから見たらわたしなんて…ちんちくりんなお子様同然なのかなぁ…。

「あ、承太郎さん、なまえさんも。ちわっス」

「噂をすれば仗助か」

「え、なんスか?」

「いや、なまえがな、」

「ちょ、ちょっと承太郎さん!?」

「なまえさんが?」

「お前にかわいいとか言われたくねえんだと」

「…え」

承太郎さぁああん!
要約しすぎですから!仗助くんびっくりしちゃってるじゃあないですか!

あまりにも端的にまとめられた承太郎さんの言葉に、もしかしたら仗助くんを傷付けてしまったかもしれないと焦る。

「ちちち違うの仗助くん!嫌とかそういうことじゃあなくってね、なんていうかえぇと、わたしより仗助くんの方がかわいいっていうか!」

「…おれ的にそれは嬉しくねーんスけど」

「あああ違くて!仗助くんは強くて優しいから、その…わたしのこと頼りないかもしれないけど、わたし的には頼られたいっていうか…」

「おれ、頼りないなんて思ったことないっスよ」

「…へ?」

「あー、なんとなく分かりました。なまえさんの言いたいこと」

そうなの?分かってくれたの今ので。…自分で言うのもなんだけれど、凄いな仗助くん。

頬をかいて少し視線を逸らした仗助くんは、「うーん」とか「えーと」と唸りながら、どうやら言葉を選んでくれているらしい。
ああ、まただよ…。焦って言葉もうまくまとまらないまま捲し立てたわたしが、なんだかすごく子供っぽく感じる。

「なまえさんから見たら、おれなんてまだまだガキだと思いますけど…おれも一応男なんス」

「う、うん、知ってる」

「だからその、なまえさんに対する『かわいい』っていうのは、おれ的には一人の男から見た、一人の女性に対する見解なわけで…」

仗助くんの言葉と、少し伏せられた瞼。そして、言葉を紡げば紡ぐほど赤く染まっていく顔を見れば、それがどういう意味か分からないほどわたしも子供じゃあない。
それはわたしも、今知ったんだけれど。

「つまり!なまえさんは頼りになるし強くて優しいしかわいい、グレートな人ってことっス!」

思い切ったようにそう言って、ニカッと笑う仗助くん。
その笑顔は何処かかわいらしくて、でもかっこよくもあって。
ちょっとずるい。なんて思ったりして。

「あ、えと…、あ、ありがとう…っ」

顔が一気に熱くなって、仗助くんを直視できない。

いつの間にか離れたところで缶コーヒーなんか飲みながら、二人して真っ赤になっているわたしたちを眺めていた承太郎さん。
「若いな」なんて小さく笑ったことに気付けるほど、わたしたちに余裕なんてなかった。



end




- 23/67 -

前ページ/次ページ


一覧へ

トップページへ