承太郎に膝枕


◇旅終了後の平和な日本。


『JOJO』といえば、地元ではけっこう有名なニックネームである。

ただしその名前で連想されることは人それぞれで、「クールで顔立ちの整った男子高校生」だったり、「手の付けられない不良」だったり。
良くも悪くも、という感じ。

その『JOJO』こと承太郎が今、わたしの膝枕で微睡まどろんでいる。
大きな身体を畳に横たえ、わたしの太腿に頭を預けて目を閉じているのだ。
廊下側を向いているから横顔しか見えないが、学帽がない分むしろいつもより顔はよく見える。

「承太郎、普通に布団敷いた方が気持ち良くない?」

学校からの帰り道、お買い物中のホリィさんとばったり出くわして、いつものほわわんとした笑顔でお夕飯にお呼ばれしたわたし。
丁度というのもなんだけれど、今日は両親が不在にしているため喜んでそのお誘いを受けさせて頂いた。

ホリィさんと荷物を半分こして空条邸に到着したのとほぼ同時に、承太郎もご帰宅。

お手伝いをしようと思っていたのだけれど、ホリィさんが「承太郎と一緒に待っててね」と仰るもので、わたしは流れるように承太郎と一緒に彼のお部屋へやって来た。

そして膝枕を要求されたわけである。

実際膝枕をすること自体はやぶさかではない。ないのだが。
此処は彼のお部屋なわけで。
眠たいのなら布団を敷けばいいじゃあないか。と思うのは至って普通ではないかと思うのですよこのわたしは。

「布団なんか敷いたらガチで寝ちまうだろ」

「起こしてあげるよ?」

「それも悪かねえが…お前、いつでも貸すっつったろ」

「言っ…たね、うん、確かに言った」

50日間の旅の最中、確かにそんな話をしたっけ。
わたしは今言われて思い出したのだけれど、承太郎はそんな細かな会話まで覚えているのか。凄い記憶力だな、羨ましい。

「でも、なんていうか…人相手に膝枕するのって、思ったより恥ずかしいんだね」

「そりゃ、犬と同じ感覚でいられちゃ困る」

「ふふっ、流石に同級生の男子を撫でるわけにはいかないよね」

「そこは別に構わねえよ」

「ひゃっ」

横を向いていた承太郎が、ごろりと身体の向きを変えた。
わたしからすれば正面の状態に。彼からすれば仰向けの状態に。
たったそれだけのことでも、スカートから出た太腿に承太郎の髪が触れ、くすぐったいことこのうえない。

ちょっと変な声を出してしまったなと思い、若干の気恥ずかしさから視線を逸らしていたわたしだったけれど、コホンと一つ咳払いをして再び視線を戻す。
すると、先ほどまで閉じられていたエメラルドグリーンの瞳が、真っ直ぐにわたしの顔を見上げていた。
意地悪そうに弧を描く唇のおまけつきで。

「今ので感じたのか?」

「ばっ、ちが…っ!くすぐったかっただけです!承太郎のバカ!思春期!」

「思春期はお前もだろうが」

「もう、あんまり変なこと言うと落としちゃうからね!」

「そいつは勘弁だな」

くつくつと笑う承太郎。
学帽もなく、自然と距離が離れる身長も今は関係ない。

「(この体勢…)」

「…いいな、視界が変わるってのも」

「うん?」

「この体勢はなまえが横を向こうが下を向こうがよく見える」

「それは…」

わたしも、同じこと考えてたよ。
口を突きそうだった言葉を飲み込んだ。

だって、それを言ったら彼は顔を隠してしまうような気がしたから。
そんなのってさ、ずるいじゃない?

「それは…恥ずかしい、かな」

言葉にしたのは半分本当の気持ち。
じっと見られるのは得意じゃあないし、こっちが恥ずかしくなる。

でも、後の半分は内緒。
いいよね?膝枕の貸し出し料ということで。

ホリィさんのおいしいご飯が出来上がるまで、もう少し。
ご飯を頂いたらお皿洗いをさせてもらおう。
そんなことを考えながら、承太郎と一緒に目を閉じた。



end




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