空条くんと委員長ちゃん
◇平和な高校生。
「空条くん、はっけーん」
「…みょうじ」
「なにかねその物凄く嫌そうな表情は。仕方がないでしょう、何故ならわたしは委員長なのだから」
屋上までやってきて、得意げな表情で胸を張るその女は、紛れもなくおれのクラスで委員長を張っている…みょうじ なまえ。
成績はまぁ優秀な方で、人望もまぁそれなりに厚いらしいみょうじは、授業をフけたおれを探してこいと。その立場上指名されたのだという。
今更おれに対してそんな扱いをする教師なんざ、きっと新任のやつなんだろう。
「お隣失礼するよー」
「おい、てめーはおれを連れ戻しに来たんじゃあねえのか」
「もちろん、そうだよ」
それが何?とでも言いたげに首を傾けるみょうじは、おれの隣に「よっこいしょ」なんてオヤジくせぇ言葉を発しながら腰を降ろした。
「そうだな…、まぁ5分くらいかな」
「は?」
「5分ゆっくりしたら、わたしは空条くんを連れて教室に戻ります」
片手を開きこちらに向けて笑うみょうじ。
こいつ、つまり…。
「おれをダシにサボろうって魂胆か」
「あはっ、バレた」
「いいのかよ、委員長がそんなんでよ」
「わたしは空条くん捜索の命を受けて教室を出たんだよ?つまり、結果的に空条くんを連れて教室に戻れば、無事に任務達成。わたしの株は変動しない」
「…いい性格してやがるぜ」
「ふふっ、利用されるのが嫌なら授業フけなさんな」
「それは焚き付けてるつもりか」
「別に?授業出てたって全部を真面目に聞いてるかって言われればそんなこともないしね。要は力の抜き方の問題さ。だからキミが真面目になろうとならなかろうと、わたしはどっちでもいいんだよ」
みょうじはけろりと言って退けるが、正直それは多くの学生が実行はしていても口にはあまり出さないことだろう。
『委員長』という肩書きが付くだけで真面目そうなイメージがつくが…それはあくまでイメージなのだということをおれは今実感した。
同時に、面白い女だとも思った。
おれのところにフラフラと寄ってくる女は、だいたい喧しくて上っ面だけのやつらばかりだ。
それに比べてみょうじは、ズカズカと腹ん中を曝け出す。
それが全てではないだろうが、少なくともこいつは繕ったり気取ったりしていない。
こんな風に隣にいて居心地が悪くねえと思える女は、いったいいつぶりか。
「…さぁて、仕方がない。そろそろ行くよ、空条くん」
「おれは戻るなんて言った覚えはねえぜ」
「…嫌だとも言っていなかったと記憶しているのだけれど」
「わざわざおれの意思を口にする必要はねえからな」
立ち上がり、スカートの襞を整えるみょうじに対し、おれは相変わらず立ち上がるつもりはない。
そんなおれを立った状態で見下ろすみょうじは眉間に皺を寄せ、小さく唇を尖らせた。
「それじゃあわたしが困るんだよ。頼むよ、焼きそばパン奢るから」
「なんで焼きそばパン指定なんだ。選択肢を寄越せ」
「え、不良といえば焼きそばパンじゃあないの?いや、パンの種類とかもはやどうでもいいから。好きなの選んでいいから」
「いらねえよ」
「うわっ」
みょうじの細っこい腕を引っ張り、再び腰を落とさせる。
突然なうえにおれの力で引っ張られたみょうじは、力に従うようにすとん、と尻を地に着けた。
「どういうつもりかな、空条くん」
「探しに行った不良に無理矢理授業サボらされた。それでいいだろ」
「…それならいい、のか?しかし、わたしはキミをそこまで悪者にするつもりはなかったんだけれど、」
「構いやしねえよ。おれは不良だからな」
「うぅん…わたしは仮にも委員長だから、キミのことも一応は考えているんだよ?不良くん」
「だったら今はおれのことだけで悩んでろ、委員長」
「…はぁ…。まぁ、そうさせてもらうよ。今日は天気もいいことだしね」
みょうじは諦めたように笑うと、空を見上げて寝転んだ。
授業終了のチャイムまで、あと40分。
end
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