ポルと承太郎の彼女
◇承太郎と花京院は名前のみ登場。
「承太郎が足りない…」
「…はぁ?」
思わず口から零れてしまった言葉は、もう元に戻すことはできない。
ずっと我慢していたことだったのに、なんでかなぁ。
いつも承太郎と花京院とわたしたちの四人でお昼を食べているけれど、今日は珍しくポルと二人だけだから…なんだか気が緩んでしまったんだろうか。
なにせここは昼休みにわざわざ寄り付く人もいない特別教室。
騒がれるのが嫌いな承太郎のために、毎日ここへ集まってお昼休みを過ごしているわけだけれど、ただでさえ静かなこの場所が今日はポルと二人だけ。
まぁ気も緩むよね。
「お前ら付き合ってんだろ?好きなだけイチャつけばいいじゃねーか」
「そうしたいのは山々なんだけれど…承太郎ってそういうベタベタされるの嫌いじゃない?それで嫌われたら元も子もないよ」
「そんなもん、好きな子は別に決まってるだろー?分かってねえなぁ、なまえは」
「そうかなぁ…」
思わず漏れそうになる溜息をパックのジュースで流し込む。
承太郎はあまり言葉が多くない。
だからその微妙な表情の変化から感情を読み取るしかないけれど、まだまだ修行不足というか、なかなか正確に把握することは難しい。
でも、そんな寡黙なところも好きなんだよね。な−んて。
「あーあ、なーんで承太郎なのかねぇ。俺だったらそんな不安そうなカオさせたりしねえのに」
「ふふっ、そうだね。ポルは優しいし面白いから、浮気さえしなければいい彼氏になってくれそう」
「おい、俺が浮気前科者みたいに言うなよ!」
「あははっ、ごめんごめん」
口をへの字にして拗ねるポルに、お詫びとしてお弁当の卵焼きをあげた。
「ンまぁーい!」ってにこにこ笑ってくれるポルは、ちょっとかわいいと思う。
本当に、ポルの良さを分かってくれるいい人が見つかるといいな。
「なぁ、もう一個くれ、もう一個!」
「ええ〜、わたしのおかず無くなっちゃう。…じゃああとこのタコさんだけだよ?…あーん」
「あー…ん」
「おいしい?」
「うまいっ!」
「ふふっ、よかった」
ウインナーを切ってただ焼いているだけだから、まずいはずは多分ないというのは分かっている。だけど「おいしい」って言ってくれるのは素直に嬉しくて、思わずわたしも笑顔になる。
「なんか、今すげーイチャついてるって感じだな」
「え?」
「静かな教室に二人っきりでよぉ、向かい合ってメシ食ってあーんとか。傍から見たら完全にカレシカノジョだと思うぜ?きっと」
「そう、かな…」
意識していなかったけれど、確かにポルの言うとおりかもしれない。
そして想像する。
もし今と同じことを承太郎としてたら…って。
「…うぁあああ〜っ!承太郎とイチャイチャしたいよーっ」
「…結局そっちにいくのね、なまえは…」
はぁ〜、とふかーい溜息。
それは、二人分の溜息。
ポルも誰かとイチャイチャしたいのかな?
承太郎と花京院がこの場所に訪れるまで、あと2分。
end
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