承太郎とアフターストーリー
◇3部旅後のお話。なまえさんは怪我を負っていて、一部障害があります。が、グロくはないと思います。が、苦手な方は一応ご注意くださいませ。
DIOとの戦いで重傷を負ったわたしが次に目覚めた時、わたしの世界から光が消えていた。
最初は、確かに瞼を上げているのに暗闇から一転しない世界がとてつもなく不安だった。
けれど、医者の話を聞き、わたしが目覚めたことを聞いてやって来てくれた承太郎の話を聞き…ようやくわたしは落ち着いた。…いや、この場合は諦めがついた、というべきかな。
眼球は両眼ともそのまま残っている。
在ってもなくても変わりはないが、摘出する必要もないので残されているらしい。
「すまねえ。八方手は尽くしたんだが…」
「謝らないで。確かに不安は多いけれど…耳は聞こえるし言葉も喋れる。これから身体の方のリハビリと併せて徐々に慣れるように頑張るよ」
恐らくベッドの横に座っているのだろう承太郎を探して手を伸ばせば、ぎゅっと大きな手に包まれた。
承太郎が今どんな顔をしているのかはまったく分からない。
強がってああ言ったけれど、やっぱり不安だ。
今までどれ程視覚に頼っていたのか。身を以て知った。
12月にエジプトへ向かい、DIOと戦闘したのが1月。
わたしの途切れる前の記憶では、ああ今頃日本は真冬だなぁなんて思っていたのに、外ではもうミンミンとセミが鳴いている。
今は7月上旬。
わたしは半年間眠っていたらしい。
おかげで身体からは余計な脂肪どころか筋肉までもが削げ落ちていて、数日後に立ち上がろうとした時はびっくりした。
かくん、とまるで枯れ枝が折れるように、何の抵抗もなく膝を着いてしまったのだ。
「無理するんじゃあねぇぜ」
そう言いながら、承太郎は両親よりも頻繁に、ほぼ毎日のようにお見舞いに来てはリハビリに付き合ってくれた。
それが嬉しくもあり、若干心苦しくもある。
そんな日々が暫く続いた頃、わざわざアメリカからジョースターさんがお見舞いに来てくれた。
ジョースターさんも承太郎と同じように謝って来て、わたしも彼に言ったのと同じように強がってみせた。
そして、ジョースターさんはわたしにとある提案をしてくれた。
「SPW財団の所有している施設に来ないかって、言ってくれたんだ」
ジョースターさんが帰った後、今日も来てくれた承太郎に昼間の話をする。
「施設…?」
「うん。ジョースターさんやSPW財団の人には色々甘えちゃうことになるけれど、そこで点字を勉強したり、目が見えなくても一人で生きていく訓練を受けさせてもらえるんだって」
「一人で…」
「施設はアメリカだって言うから、当然両親には了解貰わないといけないけれど、わたし個人としては…行きたいって思うんだ」
いつまでも両親や承太郎たちに頼ってばかりもいられない。
当然承太郎は反対なんてしないだろう。
そう、思って話した。
「おれも、アメリカに行く」
「…え?」
「9月にアメリカの大学へ入学することになっている」
「ええっ!?そうなの?初耳だよ!」
「…悪い。学校関連の話は避けるべきだと思ってな…」
「あ…、いや、ううん!全然気にしないよ、そんなの!」
そうか。わたしが例え身体的に回復しても、もう学校には戻れない。
承太郎はそれを気にしてわざと言わなかったんだ。
「おれのところで生活して、その施設とやらへは通うようにしたらいい」
「…え」
「SPW財団の施設とはいえ、知らねえ土地で一人はキツイだろ。身体の傷だってあるんだ」
「…承太郎」
確かに、承太郎の言うとおりではある。
何も見えなくなって、不安で。
慣れない土地だし、施設とはいえ…一人になる。
承太郎の申し出はすごくすごく嬉しい。
でも、
「ありがとう。でも、ダメだよ」
「何故だ?」
「承太郎はこれから大学に行って、きっと成果を出す。そして素敵な人と出会って、幸せになる。そんな輝かしい未来のある承太郎は、いつまでも過去に縛られてちゃあいけない」
伸ばした手は、いつものように大きな手で包まれる。
そこに力なんてほとんど入っていなくて、わたしはするりと手を上に上げていく。
手探りで彼の輪郭をなぞる。
記憶にある承太郎の顔と、手から伝わる輪郭を重ねてみる。
きっと今、きれいなエメラルドグリーンの瞳でわたしの見えない目を見ているんだろう。
不思議と、目が合っているという感覚がある。
「大丈夫、心配しないで」
「心配…か」
承太郎の頬を撫でているわたしの手に覆いかぶさるように、そっと承太郎の手が添えられる。
なんだか、すごく贅沢な気分。
「なぁ、なまえ…おれに下心があるって言ったらどうする?」
「下心…?」
「お前はおれが罪悪感だの親切心だのだけでああ言ったと思ってるみてぇだが、残念ながらそれは違う」
「下心があったの?」
「だとしたら、お前の返答は変わるか?」
「……ふ、…ふふ…っ」
「…なに笑ってやがる」
顔は見えないけれど、ちょっとむっとした声。
でも、相変わらず添えられている手は…優しい。
「ふふふっ、ごめん…だって承太郎、優しすぎるんだもん…!」
「意味が分からねえな」
「わたし、多分暫く一人じゃあなんにもできないよ?」
「構わねぇ」
「手もかかると思うし」
「最後まで面倒みてやる」
「ペット扱い?!…それか、プロポーズ?」
「好きにとりな」
親指に触れた唇が、小さく弧を描いた感触。
おかしいな、「馬鹿言ってんじゃねぇよ」って言われると思ったのに。
今日のわたしは承太郎に不意打ちばかり食らっている気がする。
笑っているつもりだったのに、視界は滲まないまま、ぽたりと頬を一筋の雫が落ちていった。
end
このお話で、拍手企画で頂いたフレーズを使わせて頂きました!
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