承太郎の部屋で○○を発見した


◇3部といいつつ数年後。後半ほぼ会話文。


全然悪気はなかった。

ただクローゼットの扉が変な風にほんのちょっぴり開いていて、きっと服の裾とかが挟まったりしてるんだろうな、と思ったから、一度開けてそしてすぐにきっちり閉め直してあげようとしたんだ。

中をまじまじ見ようなんて考えは本当に少しもなかったし、承太郎とわたしは恋人同士なのだからそれくらいはいいだろうって。
そう考えて、わたしは確かにコーヒーを淹れに行ってくれている彼に許可をとらずに行動してしまった。

ああ、クローゼットの扉を開けた時、わたしの足元に何かが落ちさえしなければ…。
いや、そもそもきっとあれが扉のところにつっかえていたのだろうから、もういっそわたしが扉の違和感なんかに気が付かなければ…。

わたしは彼のこんな秘密、知らないままでいられたっていうのに…。

「なまえ、なにをしてるんだ?」

「わぁあっ!?」

「…それは…」

「あ、あのごめんなさいわたし…、」

「見たのか。クローゼットの中を」

「…ごめん」

「やれやれ…。別に謝るこたぁねえが…流石に恰好がつかねえな」

「い、いやっ、承太郎ならさ、似合うと思うよ?!ほら、顔も綺麗だし!」

「…あ?」

「流石に女装の趣味があるっていうのは意外だったけど!でもほら、可愛いものとかシェアできるのもなかなかいいんじゃあないかな?!」

「待て。お前が何を言っているのか分からない」

「…そりゃあ、言いにくいのは分かる。わたしだってびっくりはしてる。けど、承太郎の好きなこと、わたしも理解して…受け入れたいって思うの。…承太郎のこと、本当に好きだから…!」

「なまえ…。その告白は嬉しいが、お前はひとつとんでもねえ勘違いをしている」

「勘違い…?」

「これを聞くこと自体鳥肌モンだが…なまえ、お前が持っているそれはなんだ」

「え、これは…香水だね。女性物の」

「そうだ。その女物の香水をおれが何のために購入したと思っている」

「より女性っぽくなるため、かな」

「誰が」

「…承太郎が」

「どうしてそうなる」

「ええっ?!だってクローゼットの中、女性服ブランドの袋とかアクセサリーとかいっぱい…!」

「だからって何故おれが女装するっつー発想になるんだ。浮気を疑われる方がまだマシだぜ」

「承太郎は浮気なんてする性格じゃないでしょ。他に好きな人ができたらわたしとはすっぱり別れるはずよ」

「そこまでおれの性格を分かっててその発想はどういうことだ」

「だって…性格は分かっても性癖は分からないし、他に思い当たることがないから…」

「はぁ…。どうしてそれが自分宛てだと考えねえんだ、お前は」

「え…?」

「お前に渡そうと思って買ったもんだ。それ全部」

「わたし、に…?でも、え…どうして…?」

「どうしてってこたぁねえだろ。…惚れた女が喜びそうなもん渡してぇって思うのは…当たり前のことだぜ」

「うそ…。だって承太郎、今まで記念日とかイベントごととか別に興味なさそうだったじゃない…」

「お前なら分かってるだろ。…おれは、結構不器用な男なんだよ」

「…っ、」

「こんなかたちで渡す破目になるとは思わなかったが…よかったら、貰ってやってくれねえか」

「よ…っ、よろこんで…っ!」


彼の部屋で女性物のアレコレを発見した。



end




- 36/67 -

前ページ/次ページ


一覧へ

トップページへ