プロシュートと天邪鬼
◇細かい時間軸は考えていませんが、5部本編よりは前。平和。
プロシュートと買い出しに行くと目立つから苦手だ。
他のメンバーもそりゃあまぁ目立つけれど、プロシュートは特に女性からの視線を集めまくるという能力をお持ちなのか、すれ違えば二度見され、遠くからは黄色い声と熱い視線が送られ、お店にいれば声をかけられるなんてざらだ。
そして彼自身、それが満更でもないのか感心がないのか、はたまた慣れきっているだけなのかもしれないけれど…特に気にする様子もなく、それらを受け流している。
もしわたしが男だったなら、プロシュートをからかうなり嫉妬するなりしていただろう。
けれどわたしは女で、彼の横にいるというだけでその“視線”に入ってしまう。
そして聞きたくもない言葉が、わたしの耳に入ってくる。
それが嫌だから、わたしはこうして帽子に髪をしまい、目深く被って体型のわからない服を着ているし、できるだけ声も出さないようにしている。
だからまぁ、つまり。プロシュートと二人でいる時、わたしは女でありたくないというわけだ。
…それをこの男は…。
「なまえ、そっちの袋寄越せ。コレと交換だ」
「え、ちょっと!」
有無を言わさず持っていた紙袋を奪われ、代わりに一回り以上も小さい袋を渡された。
「なにをふて腐れた顔してんだァ?さっきっからよォ〜」
「…別に、ふて腐れてなんかないよ。ただ、丁度いい筋トレだったのに、って思ってるだけ」
「ハン!オメーに筋力なんざ必要ねぇだろ」
「ないよりはあった方がいいでしょ。幽波紋は万能じゃあない」
「ま、そいつは確かにそのとおりだ。いい心がけだとは思うぜ。だが、オレが隣にいてオメーより軽い荷物持つってのは格好がつかねぇだろ」
「…格好つけたがりめ」
「男ってのはそういうもんだ」
嫌味すら華麗にかわされて、自分の子供っぽさを思い知らされる。
わたしも、これくらい開き直れたら…こんな格好も、こんな想いもしなくていいのかな。
ふぃ、と目を逸らした先にはブティックがあって、ショーウィンドウに飾られたかわいらしいワンピースが目に入った。
襟元には細いリボンが結ばれていて、裾には細かい刺繍。
かわいいな、今度一人の時に改めて見に来よう。
それは決して口には出していないはずだ。
それなのに、プロシュートはわたしの思っていることが分かるみたいに、同じ方を見て、こう言うのだ。
「お前もそんなダボついた服よか、ああいうのを着てみりゃいいじゃねぇか」
『ああいうの』と言って指さしたのは、まさにわたしが一瞬目を留めたワンピース。
「…暗殺者には合わないよ、ああいうのは」
本当のこと言うと、ちょっと嬉しかった。
プロシュートからすれば、たまたまその服が目に映っただけかもしれない。
でも、自分がかわいいと思った服を勧められたら、似合うと思ってくれてるのかな、なんて期待してしまうんだ。
それなのに、口を突いて出る言葉は天邪鬼で。
あーあ、かわいくないなぁ。
自分に嫌気がさして、思わず下を向いてしまう。
「ははっ、そうかもな。…けどよォ、なまえには似合うんじゃねぇか?」
「わっ」
ひょい、と帽子を取り上げられて、中にしまっていた髪がすべて外へさらされた。
抗議しようと顔を上げれば、プロシュートはしてやったり、みたいな顔をしていて、なのにそれが妙にきれいで。
「オレは、どうせならああいう格好したお前と街を歩きてーんだが?」
どうして恥ずかしげもなく真正面からそんなことが言えるのか。
顔どころか身体中が一気に熱くなり、思わずまたも顔を逸らしてしまったわたしには、到底理解できるはずもない。
「あ…ありがと…」
なんとか必死に絞り出した言葉は、今のわたしが言える精一杯の素直な気持ち。
顔を上げられないでいると、小さくプロシュートが笑った気がした。
「行くぞ」なんて言った時には既に彼は歩き出していて、慌てて後を追うわたしには、プロシュートがどんな表情をしているのかを見ることができなかった。
…もしかして、からかわれた…?
周りの視線も言葉も気にならなくなった代わりに、プロシュートのことばかり気になってしまう。
…やっぱり、苦手だなぁ。
帽子がなくなったせいで、風に髪が
靡く。
それを耳にかけながら、わたしは早足でプロシュートの隣へ並び、アジトまでの道を歩く。
end
- 50/67 -
前ページ/次ページ
一覧へ
トップページへ