リゾット・ネエロの配属先
◇5部開始より約7年前のリゾット過去捏造。
なまえさんがなかなか偏った思考の持ち主。
オレが21の時だ。
幽波紋使いとなったオレは、組織から暗殺チームへの配属を命令された。
チーム名を聞くだけで仕事内容は概ね把握できる。
組織の中でも、特に汚れた仕事をすることになるのは明白だ。
「リゾット・ネエロくん、ね。初めまして、わたしはなまえ・みょうじ。一応、このチームのリーダーってことになってるけど…最近相棒が死んじまってね。見てのとおりキミとわたしの二人しかいないけど、まぁよろしく」
「…よろしく」
指定された場所は、一般的な集合住宅の一室。
普通にチャイムを鳴らせばいいものかと躊躇っていると、オレがそこにいることに気がついていたかのように、扉は開かれた。
…いや、当然気がついていたのだろう。
テーブルを挟んで向かいに座るなまえ・みょうじと名乗ったこの女は、オレの姿を見ても驚いた様子が一切なかった。
しかし、暗殺チームのリーダーがまさか女だとは…。しかも、オレとさして歳も変わらないように見える。
腕利きのスナイパーとだけ聞かされていたオレの方が、少々面食らってしまった。
「キミの経歴…と言えばいいのか、経緯と言えばいいのか…その辺は一通り資料で見させてもらってる。こっちとしては大歓迎なんだけど、キミはどう?正直暗殺チームなんて、聞こえよくないでしょ」
「オレはなんだって構わない」
「既に一人殺しているから?」
「…ああ」
「ふむ…。リゾットくんは、その人を殺したことを後悔しているかい?」
世間話でもするような穏やかな声で問われたそれに、果たしてどう答えるのが正常なのだろう。
…そもそも人殺し同士の会話に正常さを求めること自体、どうかしているか。
「…殺しという行為について全く後悔がないわけじゃあない。人生を棒に振ったわけだからな。しかし…そいつを殺したこと自体には、なんの後悔もねぇ」
「そうか。キミは優しいね」
なまえは小さく笑った。
…今の答えを聞いて、どうしてそんなことが言えるのか。
そう思ったことが、どうやら顔に出ていたらしい。
「だって、キミは自分の人生を棒に振ってでもそいつを殺したかったんだろ?自分より復讐に人生を賭けたわけだ」
「変わった捉え方をするんだな、あんたは」
「…そうかな」
オレの言葉に心底意外そうな顔をした彼女に、思わず苦笑が漏れた。
「わたしはね、昔から普通ってのがよく分からないんだ。もし『何故人を殺してはいけないのか』なんてことを聞かれたら、わたしは『法で禁止されているから』、なんてクソみたいな答えしか出せない。それは自分の命についても同じ」
淡々と話すなまえは、ほんの少し…ほんの一瞬だけ、寂しそうに目を伏せた。
「あんたがどうなりたいのかは知らないが、オレもあんたも、少なくとも最期に落ちる場所は同じだ」
「…わぉ、リゾットくんて案外ロマンチスト?」
「…言っている意味がマジに分からないんだが」
「はははっ!まぁ、お互い死ぬまでは精々生きようや」
そもそもこの世界に足を踏み入れた時点で、いつ何処で死ぬかなど分からない。
その上暗殺を生業とするともなれば、常に死と隣り合わせといっても過言ではないはずだ。
なまえは、いつからそんな人生を歩んでいるのだろう。
どれだけそんな人生を歩んできたら、生にも死にも執着しない人間になるのだろう。
「………オレは、あんたみたいにはなれそうもない」
もう動かない仲間を収めた二つの棺を前に呟いた言葉は、誰にも届くことはない。
落ちる場所は同じ。
かつて自分が言った言葉だ。
その考えは今も変わらない。
…だが、オレはまだ行けない。
あんたが知らない仲間も沢山増えたんだ。
オレは、まだ生に執着している。
自分の生も、仲間の生も。
「…精々生きるさ。死ぬまでは」
コートの裾が
翻り、ばさりと音を立てた。
オレはまだ、そっちには逝けねぇ。
なまえ、あんたはきっと、「頑張れよ、リーダー!」とでも言うんだろうな。
組織を裏切ることになろうとも、オレ自身が選んだ道を進む限り。
end
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