高校生とお寝坊さん


お寝坊さんな高校生の続き。(読まなくても特に問題ありません。)/時間軸としては3部のDIO戦後。帰国前に猶予があったと勝手に時間作ってます。/ 生存院。致命傷とかないない。



どうも、皆様おはようございます。
花京院 典明です。

ただいま午前10時ジャスト。
もう“おはよう”から“こんにちは”に変わってもいい時刻です。

さて、僕は今、なまえさんの泊まる305号室の前にいます。
承太郎も一緒にね。

コンコン

「…反応なしだぜ」

「だな。仕方ない、これを使おう」

フロントから借りた合鍵を取り出し、鍵穴へ差し込む。

本当は旅の疲れもあの死闘の疲れも分かっている。
僕たちだって同じだ。
だから自然に目が覚めるまではゆっくり寝かせておいてあげたい気持ちはある。

けれど帰国の時間が差し迫っているのだから仕方がない。

女性の部屋に入るのは若干気が引けるが、カチリ、鍵を開ける。

扉を開き室内へ入ると、カーテンが閉め切られていて少し暗い。
けれどカーテンの隙間から漏れる光のおかげで十分に視認できるレベルだ。

別にこっそり歩くわけでもなく、普通に二人してベッドへ向かう。
当たり前のことだけれどなまえさんが眠っていて、そして起きる気配はない。

「こいつは黙ってりゃあいいんだけどな」

「黙っていたらなまえさんじゃあないだろ」

「ちげーねえ」

起こしに来たのだから別に気にする必要もないのだけれど、思わず話す声がひそひそと小声になってしまう。

しかし、よく考えたらなまえさんの寝顔をこんなにじっくり見るのは初めてかもしれない。

どうやら承太郎も同じようなことを考えているらしく、問答無用に起こすことをしない。

すぅすぅと安らかな寝息を立てるなまえさん。
睫毛が長くて、肌がきれいで。
とても女性らしい顔立ちをしている。

「こういうことを言ったらなまえさんは怒るかもしれないけれど、この目の傷を負ったのが僕で良かった」

「怒るだろうな、なまえは」

「ははっ、ですよね。でも、やっぱり女性の…なまえさんの顔に傷を負わせなくて良かったって、心底思うよ」

「…ああ」

小さく頷く承太郎だけれど、一瞬だけ視線が泳いだのは、きっと僕が傷を負ってもいいわけじゃあないとか、多分そんなようなことを思ったんだろう。

そして、それはきっとなまえさんも同じことを言うんだ。

僕の友達であり戦友である彼らは、とても優しい人たちだから。

「かきょっ」

「…ん?」

少しだけ走った沈黙を破ったのは、僕たちが此処へやってきた理由の張本人の声。
目が覚めたのかと思い様子を窺うけれど、その瞼が持ち上がることはない。

今の鳥の鳴き声みたいなのは…寝言?

「くくく…っ、今の、お前を呼んだんじゃあねえか?」

「えー…、『かきょっ』て、いくらなんでも略しすぎじゃあないか?違うだろう」

「うぅ…ん、あぶ…」

「そしたらこれはアヴドゥルのことかい?」

「かもな」

「危なぁああああいッ!!」

「ぅわっ!?」

ゴチ…ッ!!

目の前を、星が飛んだ。

「い…ッた…!?」

「…なまえさん、結構…頭固いんだな…」

突然に起き上がったなまえさんと、覗き込んでいた僕。
これらを足すとどうなるか。
答えは“衝突する”です。

ソースは僕。

起き抜けの頭痛(物理)に狂い悶えるなまえさんと、痛みと衝撃でちょっとばかりくらくらしている僕を見下ろし、承太郎は学生帽の鍔を下げて笑いを誤魔化している。
言っとくが全然誤魔化せていないからな!

「なに、なんなの?なんで二人が此処にいるの?訳が分からないよ」

「お前があまりにも起きてこねーから起こしに来てやったんだ」

「帰国の時間がだいぶ近くなったから、そろそろ起こさないといけないと思ってね」

「え、うっそ、もうそんな時間?!」

「まだ少し時間はあるから、そんなに慌てなくていいよ」

起き抜けだっていうのに元気だなぁ。なんて、ちょっと感心してしまう。

「ところでお前、さっきはなんの夢を見てたんだ?」

「ええ?夢?えーっと、なんだったかな…誰かをスライム状の宇宙人から助けようとしてたような?」

「花京院か?」

「あ、多分そう!なんで??」

…『かきょっ』の正体は本当に僕だったのか。ていうか、スライム状の宇宙人てなんだ。
カーテンを開けながら二人の会話を聞いていた僕は、鳥の鳴き声だと思っていたのが実は自分だったことに若干複雑な気分だ。

「お前がぶつぶつ喋ってたからな」

「ね、寝言言ってた?!うわぁあ恥ずかしい、お嫁に行けない…!」

Oh、No―!なんて、頭を抱えてジョースターさんみたいなショックの受け方をしているなまえさんに、自然と笑ってしまう。

「僕でよければもらいますよ」

「…へっ!?」

「…あ?」

「…あ、」

また沈黙が走った。
ヤバい、今僕なんて言った?

いきなり気まずくなった空気を破ったのは、やはりなまえさん。

「じゃあ、承太郎の記憶さえ抹消すれば問題ないね!」

「待てコラ」

ベッド脇に備え付けられたテーブルスタンドライトをがっしと掴んだなまえさんの腕を、即座に承太郎が掴む。

言葉どおり、なまえさんは物理的に記憶を抹消しようとしている。
たまに彼女の発想は怖い。

いや、そのおかげで僕は助かったわけだけれど…。

「おれのところに来りゃあ問題ねえだろうが」

「はいっ?!」

「えっ?」

「…なんだよ」

いつもと同じぶっきらぼうな言い方だし、重大な告白をした風でもないけれど。
それでもその言葉は軽々しく言うものではないし、承太郎なら尚更だ。

だから僕もなまえさんも驚いた。

「あー、えーっと…、とりあえず、」


着替えるから出てもらっていいかな?
(選ぶなら、)(どちらを選んだのか)



end




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