承太郎×4!?


【ちょっとした設定とご注意】
メイン語りは4部太郎さんにお任せしております。
今回登場するのは3部、4部、6部、ショ太郎くんです。4部と5部は年齢が近すぎるので、敢えて5部ではなくショ太郎くんを召喚致しました。
細かい設定とかなんも考えていないので、細かいことが気になると夜も眠れない方は要注意でお願い致します。
4部以降の設定として、倫理的なことを考えるとちょっとアレなので、承太郎の奥さんおよび徐倫ちゃんのお母さんに当たる方はなまえさんという前提で書いています。
若干…いえ、結構キャラ崩壊していると思うで、だいたいのことは許せるぜという方のみどうぞ。


『もしもし、承太郎!?わた、わたしだけど!あのっ今承太郎が家にいるんだけど、でもバラバラでなんか違う承太郎が…っ!』

深夜に差し掛かるより少し前、おれのもとに一本の電話があった。

それは迷う事なく妻であるなまえからの電話だったわけだが、どうにも様子がおかしい。
かなり動揺しているようで、とにかく要領を得ない。

しかしながら、なまえが職場へわざわざ電話を寄越すのは珍しく、丁度帰宅しようとしていたところであったためすぐに帰ると伝えた。

それから一時間近くが過ぎた現在、おれは目の前の現状に驚愕している。

「…これは、どういうことだ」

「承太郎〜っ!」

部屋には半泣きのなまえ、そして三人の男。
単純に男というだけならここまでの動揺はなかっただろう。(動揺はするかもしれないが。)

そいつらは、おれだった。

自分でも何を言っているんだと思うが、しかし現実に。おれの目の前におれがいる。
しかも一人は子供で、なまえの膝で寝てやがる。
服装や年齢がまったくもってバラバラだ。

「新手の幽波紋か…?」

「いや、それは違うと思う」

一つの、そして最も有力であろう可能性を零すと、三人のうちの一人がそれを否定した。
そいつは中でも一番歳をとった奴で、妙に落ち着いている。

「我々三人は…もちろんお前も、同じく空条 承太郎といえるだろう」

「何故断言できるんだ。そもそもお前がおれだという前提からして確証がない」

「お前が来る前に色々と確認をしたんだ。彼女も一緒に」

目線を向けられたなまえは相変わらず困惑顔のままだったが、小さく首を縦に振った。

「色々ね、質問したり幽波紋出してもらったりしたの。流石にこの子はちょっと微妙だけど、わたしの知る限りみんな承太郎だと思う」

「…じゃあなにか。此処にいる四人は全員空条 承太郎で間違いない、と」

「う、うん…そう思う」

当然納得したわけではない。
しかし、現に何の危害も加えて来ないのだから近々に対処しなければならないということもない。
おれは溜息を一つ吐き、状況の整理に努めた。

まず、三人のおれはやはり年齢が違っているらしい。
一人は8歳らしい子供、一人は高校生、一人は41歳…。

「おれはエジプトから帰国した直後だ。家の門を開けたら此処に繋がっていた」

あの旅の直後だと?正直めちゃくちゃ疲れてる時じゃねぇか。
他人事だがこいつも大変だな。…他人事でもないのか?

「私は少し記憶が曖昧で…前後の記憶がないんだ」

おい、それは大丈夫なのか?むしろこいつが一番怪しいんじゃねぇのか?

「すぅ…、」

「ふふっ、可愛い…」

子供のおれ、そこを代われ。

おれが帰ったことで安心したのか、半泣きだったなまえは膝で眠る子供の頭を撫でながら頬を染めている。
徐倫にもそうだが、世話好きで子供好きとはまったく良くできた嫁だ。

「でも、あの旅の時は承太郎がすっごく大人っぽいって思っていたけれど、今こうして見るとやっぱりちょっとかわいいなぁ」

「…馬鹿にしてやがるのか」

「してないよ、褒め言葉」

頬を染めるな高校生のおれ!
見てるこっちが恥ずかしいだろうが!

しかし旅から帰った直後ということは、まだなまえと付き合ってすらいない時代ということか。
ガラにもなく片思いなんぞしてる相手だからな。
気持ちは分からんでもないが…だが却下だ。

「なまえ、脚は疲れないか?よければあっちのソファへ運ぼう」

「あ…っ、大丈夫です!ありがとうございます、承太郎…さん」

おい待て。
何故そんなに顔を真っ赤にしているんだなまえ。
浮気か!いや、浮気になるのか?

「う−ん…」

「あ、ごめんね、起しちゃった?」

「おれ、寝ちゃった…?あっ、お姉さん、脚!ごめんなさい、おれ…」

「お姉さん…!い、いいんだよ、全然!むしろ幸せだったから…っ!」

ぎゅうっ。

子供のおれ、そこを代われ…!

なまえが自分から抱きついて来るなんざ一年に数回だってのに。
今ので一回減ったとかないだろうな?!

そしておっさんのおれ、『夫婦と子供』みたいに一緒になって和んでんじゃねぇ。

「おい、おっさんのおれ」

「…お前、自分が高校生だからって20代に向かっておっさんはないんじゃあないか」

「うるせぇ。おれからすりゃああいつもお前もおっさんだぜ」

「なまえにおばさんなんて言ってみろ。ぶちのめすぞ」

「なまえ…みょうじに言うわけねぇだろ。あいつは全然老けてねぇし…」

「老けて悪かったな」

「お前個人のことなんざどうでもいい。…お前、みょうじとはその…結婚してやがるのか」

「なまえに聞いていないのか」

「聞けるわけねぇだろ」

「まったく、変なところで臆病だな」

「ぶちのめすぞ」

「おれに勝てると思っているのか?」

「老いぼれに負ける気はしねぇな」

「二人とも!ストップストップ!」

本気でやるつもりはなかったが、なまえが慌てておれたちの間に割って入ってきた。
当たり前だがおれもこいつも195cmなので、間に挟まれたなまえは随分と小さく見える。

「もう!自分と喧嘩始めてどうするの?子供だって見てるんだよ」

子供ってそれもおれじゃあねぇか。
などというツッコミはこの際腹の底に沈める。

「ああ、悪いな、なまえ」

「…わーったよ」

なまえは分かっていないだろうが、おっさんのおれではなくなまえ自身が止めに来たことは正解だ。
おれは基本的になまえに怒鳴り散らすつもりはないし、高校生のおれなら尚のこと。
むしろ『怒ってるのになんでそんな可愛いんだ調子狂うぜ』くらいに思ってるだろう。
おれも似たようなもんだから絶対の自信がある。

「高校生の承太郎は、旅から帰ったばっかりって言ってたよね。身体とか辛いんでしょう?わたしでよければ膝、貸すよ」

「…っ!?」

「おい、なまえ」

「あっ、ご、ごめん!おばさんの膝なんて嫌かな!?」

「違う!そうじゃねぇ…!」

「そうだ!そういう問題じゃあない!子供は百歩譲るがこいつからはアウトだ」

「アウト?どうして?」

「何するか分かったもんじゃあないからに決まっているだろう」

「自分自身にそういうことを言うのもどうかと思うぞ」

「やかましい!目下一番危険なのはお前だ」

「うわぁあっ、収集つかない…!承太郎くん、ちょっと夜遅いけど、お姉さんとお散歩してくれない?」

「え、いいの?!行きたい!」

「よし、じゃあ手を繋いで、離さないようにね」


数分後、なまえ(と子供のおれ)がその場から消えていることに気づいたおれたちは、血眼になってなまえ(と子供のおれ)を探し、必死で謝り倒す羽目になった。


end




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