高校生vs吸血鬼


◇時間軸的には砂漠横断直後。なのでアヴさん不在。

野宿続きだった砂漠横断を終え、久しぶりにホテルで宿泊をすることとなったジョースター一行。

ポルナレフ、ジョセフは部屋に荷物を置いて買い出しへと向かった。
そんな頃。

「じょぉおたろぉおおッ!!」

「やかましい!」

バターンッ!と勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは、花京院と同じくDIOに肉の芽を植え付けられ、そして承太郎に命を救われたみょうじ なまえ。

開け放たれた扉の部屋は、承太郎と花京院が泊まる一室。

「どうしたんですか?」

間髪入れずに怒声をあげた承太郎に若干苦笑しつつ、花京院はみょうじの慌てぶりに首を傾げる。
彼女は決して大人しいとはいえないが、普段から大声を出したり、ノックもなしに男の部屋へ飛び込んでくるような女子ではない。

「部屋に入ったら、サイドテーブルにこれが…」

「「こ、これは…!?」」

青ざめた表情でみょうじが二人へ差し出したのは、一枚の紙きれ。

そこに書かれた文章に、二人も驚愕の声をあげずにはいられない。


『本日中にみょうじ なまえを返してもらう。ついでに貴様らを殺す。私の幽波紋で! DIO』


「…これ、なまえさんの部屋にあるべきじゃなかったんじゃあないですか?」

「流石にどの部屋に誰が泊まるかまでは念写できなかったんじゃあないかな」

「こんな文章どっかで見たことあるな」

「承太郎、それ以上は言わないでくれ」

「?」

花京院が苦虫を噛みつぶしたような表情になる理由を知らないみょうじは小首を傾げるが、どうやら触れて欲しくない部分のようなので空気を読んで考えることをやめた。

そんなことより今はこの予告状のような果たし状のようなものが問題だ。

一体これがいつ置かれたのかは分からないが、今はほとんど日も沈み、間もなく夜を迎えようという時刻。
ジョセフが前に言っていたことが正しければ、吸血鬼だというDIOにとってこれからが絶賛活動時間だろう。

「しかし、おれたちが“ついで”たぁ随分とナメてやがるな」

「しかもターゲット自ら来るというのであれば探す手間も省けますしね」

「でも、今はポルナレフもジョースターさんもいないんだよ?大丈夫かな…」

承太郎も花京院も確かに頼もしい。
しかし、一度DIOの教祖染みたカリスマ性と強さを目の当たりにしているみょうじは、それでも不安を拭いきれない。

「そう、今は邪魔者が少ない。この私がそんな好機を逃すと思うか?」

「−…ッ!?」

突如、聞き慣れぬ声が鼓膜を震わせた。
三人は皆ほぼ同時に声の方へと全身を向ける。

「…誰だテメーは?」

「あー、そっか。承太郎はちゃんと見るの初めてだったね」

「あいつがDIOだ」

「こいつ敵の前で窓の縁に立つとかアホなのか?」

「WRYYYY!承太郎貴様、顔に似合わずガキのようなことをするんじゃあない!やめろ、落ちるだろうがッ!」

二階に位置するこの部屋の窓枠に突如として現れたのは、やはりというか当然というか、まさにターゲットであり襲来者であるDIOだった。

承太郎はスタープラチナを駆使し、部屋に備え付けられていた刺又のようなものを瞬時にDIOへ突きつける。

危険なので良い子は真似をしてはいけない。

「やめろと言っとるだろうが!」

「はっ!いつの間にかわたしの後ろに…?!」

確かに窓枠でつつかれていたのだ。
バランスを崩しかけていた。
いっそ落ちろとそれを眺めていた。

なのに何故。

DIOが窓枠から室内へ…そしてみょうじの背後へと移動しているのか。

三人にはまったく分からない。

「それがてめーの幽波紋能力か」

「瞬間移動…?そんな悟空や火影みたいな能力が…!?」

「それよりわたしピンチ!」

瞬間移動(仮)に驚愕しつつ、しかしみょうじは自身の背後に感じる圧倒的威圧感に身動きができない。

冷や汗がダラダラと流れていく。

「さぁ、なまえ。もう一度私に忠誠を誓え」

「ひぃいいっ」

腰に腕を回され、引き寄せられる。
前から思っていたがこいつなんで耳元で喋るの。そしてこのイケボ反則!などと混乱した思考のみょうじ。
混乱しすぎて幽波紋を出すことさえ忘れている。

「くそ…、奴となまえさんが近すぎてエメラルドスプラッシュを撃てない!」

「汚ねェ手で触るんじゃあねぇッ!」

「ウゲーッ!」

「きゃぁあっ!?」

意外ッ!それは容赦なし!

みょうじの顔のすぐ横を、スタープラチナの拳が通っていった。

ひゅ、って風を裂く音がしました。Byみょうじ

「…キミ、もしなまえさんに当たったらどうするつもりだったんだ」

「おれのスタープラチナは精密性が売りだぜ」

「こ、怖かったよぅ…!なんか色々怖かったよぅ…っ!」

「よしよし。危なかったですね、色々と」

「おいみょうじ。なんで花京院に抱きついてんだ。助けたのはおれだぜ」

「それはありがとうだけど怖かったこと堂々の一位はさっきの一撃だからね。トラウマ級だからね」

拳は見事DIOの顔面にクリーンヒットし、そのままDIOを部屋の隅へと吹っ飛ばすことに成功。
しかしみょうじの心にも見えない傷がついた。

「ぐ…っ、貴様このDIOの顔面をよくも殴ったな…」

ずるり、と背中を打ちつけた壁に凭れつつ立ち上がったDIO。
あれだけ見事な顔面クリーンヒットだったのだから当然といえば当然だが、鼻血なんぞ流している。

それに気づいたらしく、DIOはポケットから白いハンカチを出し拭う。

「いやいやいや、なんでハンカチ持ってるの?!」

「おかしなことを言うななまえ。ティッシュハンカチは常識だろうが」

「うん、まぁ、うん??」

「そういや、こいつの80%(首から下)は紳士でできてるってジジイが言ってたな」

「それもうほとんどキミのご先祖ってことじゃあないのか?!」

「つまり20%(首から上)だけを攻撃すりゃぁいいってことだ」

「極論すぎだろ貴様ら!」

この後滅茶苦茶顔面パンチ…しようとしたが、謎の瞬間移動で逃げられた。


end
砂漠横断直後という時間軸で書いてますので、多分まだ身体が馴染んでないんだよねーとか言ってるはず。
だからここはひとまず逃―げるんだよ〜ん。な、DIO様。
うん、こんなDIO様嫌だ。




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