露伴さんと相手の好きなところを言い合うこと
『お題:岸辺 露伴と相手の好きなところを3つ言い合うこと』
…オワタ\(^o^)/
わたしの大事ななにかが閉じ込められているという箱に貼りついた紙を見た瞬間、脳裏にはその一言しか浮かばなかった。
だって露伴さんだよ?あの。漫画家の。岸辺 露伴。
わたしは比較的露伴さんとは仲が良い方だと思うけれど、それでも比較的という前置きが必要な程度だ。
高校生の広瀬 康一くんほど彼から積極的に関わられることもないけれど、東方 仗助くんほど嫌われていない…って程度。
多分同い年で、且つ幽波紋使いだから、他の人よりちょーっと気を許されているんじゃあないだろうか。
…どうしよう、大事ななにかはそりゃあきっと大事なものなんだろうけれど…諦めようか。
でもでも、もし生き物だったら?…人間だったらどうしよう…。
「…と、いうわけなんですが…協力、してもらえないでしょうか」
「ふぅん。こんな小さな箱の中に、もしかすると人間が入っているかもしれないのか。…面白いな」
わたしの向かいにあるソファへ座り、箱をまじまじと360度見回している件の売れっ子漫画家様。
かなり悩んだ末に仕方なく事態を説明したところ、最初は玄関先で渋っていたのがまるで嘘のようにリビングへ通された。
ちょっと、もしかしたら中身人間かもしれないって自分で言ってますよね。
あまりグルグル回さないでください。振るのもやめて。
あ、ちょっとなんで叩いてるんですか!
興味津々に箱を弄るものだから、わたしは内心ひやひやである。
「…いいぜ。なまえの大事なものとやらも気になる。協力してやるよ」
「えっ、本当ですか!ありがとうございます…!」
観察の方は気が済んだらしく、カタリとテーブルの上に置かれる箱。
一時はどうなることかと思ったけれど、どうやら露伴さんは中身の方も気になるらしく、協力してくれるらしい。
…どうしよう、中身が変なものだったら…。うぅ、今度は謎のプレッシャー。
でも、『相手の好きなところを3つ言い合う』ってお題に協力してくれるということは、露伴さんがわたしのことをどう思ってるかが少しわかるってことだよね。
それはすごく…気になる。
「…」
「…」
「…おい」
「はい?」
「早く言えよ。キミがぼくの好きなところ、3つ」
「…えっ、わたしから言うんですかっ!?」
「当たり前だろ。キミから依頼してきたんだ。キミから言うのが筋じゃあないか?」
「…う、」
そ、そうかな…そういうものか。確かにわたしからお願いしてるし、そうか、わたしからか…。
露伴さんの言葉を待ってドキドキソワソワしていて、自分が言うことなんて考えていなかった。
えぇと、露伴さんの好きなところ3つ…。
「えっと…、とっても面白い漫画を描くところ。真剣になりすぎることがあるけれど、やると決めたことは最後までやるところ。あと、時々お茶をご馳走してくれるところ。…です」
「…へぇ〜」
「な、なんですかその顔?!次!次は露伴さんですよ!」
足を組んだ上に肘を着いて、にやにやとした顔でわたしの言葉にただ相槌を打つ露伴さん。
わたしは恥ずかしくなって、俯き加減で露伴さんを急かす。
もう、面と向かって…しかも対面で好きなところを言い合うとかなんの羞恥プレイなんだ…!
「そうだな…。バカみたいに正直なところ。ぼくの漫画を読んでくれているところ。ぼくのことを好きなところ」
「えっ」
露伴さんがすらすら言い終わると同時に、ガチャンと鍵の開く音が聞こえた。
「お、開いたんじゃあないか?」
「え?あ、ああ…え、ちょ、あの、」
「なんだよ。早く中身を出せよな。なんならぼくが蓋を開けてやってもいいんだぜ」
「わぁあっ!ま、待ってください!わたしが開けますから…っ」
テーブルから箱を持ち上げ、今にもその蓋を開封しそうな露伴さんに慌て、わたしは言いたい事も言えずにひとまずそれを奪い取る。
その中身は…、
「ピンクダークの少年…」
「昨日発売されたばかりの最新刊じゃあないか」
「…、…うわぁああっ!ありがとうございましたーッ!」
脱兎。まさに脱兎のごとく、わたしは振り返らずに岸辺邸から飛び出した。
後から思えば、昨日買ったばかりで早く読みたいと思っていたからだと言えば良かった。と、余計に顔を合わせ辛くなってしまったことを…結構本気で後悔した。
end
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