※Twitterからプラス再掲
※一人称視点/名前変換あり
※一部下品


▼萩原

「うちの部署の連中がさ〜、‪名前‬ちゃんのこと可愛いとか俺にはもったいないとか言うんだぜ〜! ひどくねぇ? 俺以上に相応しい男なんていねぇっつーの」
 飲み会から帰るや否や、私に飛びついて愚痴をこぼす研二くん。勢い余って尻餅をついてしまったし、後ろに壁がなかったら頭から倒れ込んでいたに違いない。
 そのイジりは慕われている証拠では…とフォローしたものの、彼は「あー好きすぎて不安だわ」と私の声なんて聞こえていないみたいだった。いつになく酔っ払ってる。
「今日も行ってきますのキスできなかったから全然やる気出なかったしよ……俺の人生マジで‪名前‬ちゃん次第なとこある」
 そういえば朝は私が寝坊したせいでバタバタだったんだった。ごめんねと謝れば「あ、忘れてた」とただいまのキスが降ってきた。それから完全に据わった目で見つめてくる。
「な、約束しようぜ。行ってきますとただいまのキスは絶対」
「うん」
「ケンカしてもすぐ仲直り」
「うん」
「セックスは毎日」
「う……ん?」
「ダメなら隔日で!」
「そういうのって決めとくことじゃないような…?」
 そんな約束なんかしたら、その日はソワソワしてしまって仕事にならなさそうだ。
「したい時にっていうのはダメなの?」「お、言ったな」
「え?」
 急にギラリと剣呑な光を帯びた瞳に、嫌な予感。
「俺がしたいと思わねぇ時なんて、あると思う?」
 失言に気づいた時にはもう遅くて、酔って緩んでいたはずの表情はすっかりスイッチが入ってしまっている。
「なあ、‪名前」
こういう時だけ呼び捨てになるのもずるい。
(好きすぎて不安なんて、こっちのセリフだよ)なんて考えながら、今日も彼の熱に浮かされる。



▼松田

「‪名前。お前そこに座れ」
 なぜか床に正座させられて、酔っ払いに半目でじっとり睨みつけられる私。
 赤い顔で帰宅した陣平くんはヨレヨレのスーツのまま着替えもせず、胡坐に頬杖という体勢で私から目を離さない。
「お前……」
 一体何を言われるのだろうと緊張して待っていると、彼は真顔で「可愛いよな」とぽつり。
「ん?」
「なに小首傾げてんだよ、可愛いことすんな」
「え?…陣平くん、どした?」
 おそるおそる問いかけると、彼は「それもだよ」と指差して、「じんぺーってなんかこう…ちょっと長めに伸ばすだろお前。可愛いんだよそれ」チッとこぼれる舌打ちに「ご、ごめん…?」と謝れば、「いやなに謝ってんだよ。わかってねぇのに謝るの可愛いからやめろ」あークソ、と顔を覆って項垂れる彼。
「なんでそんな可愛いんだよ…くっそ、めちゃくちゃ可愛い…」
 溜息混じりの呟きに“可愛い”がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。とりあえず初めて見るレベルで酔っ払っていることは間違いない。
「えっと、水持ってくるね…?」
 疑問符をいくつも浮かべて逃げるようにキッチンへ。彼に肩を貸しながら送ってくれた萩原くんがニヤニヤしていたのはこれか。変な酔い方してるならその時教えてほしかった。
 コップを手に戻ろうとした時、背中に体温を感じて動きを止める。キッチンの天板に両手をついて、覆い被さるように退路を塞いで「絶対離さねぇからな」と囁く彼。
「一生離さねぇ」
「じ、陣平くん…」
「結婚する」
 「えっ!?」と振り返れば、「ぜってぇけっこんするからな…!」と呂律が回ってないのでもうわけがわからなくなってコップを押し付けた。
 そして翌日、「そのうちちゃんと言うから、一旦忘れろ」と顔を赤くして言うのがめちゃくちゃ可愛かったので忘れてあげない。



▼降谷

 仕事で飲んでも酔っ払えない、なんて話を彼から聞いたのはいつのことだっただろう。だからって家に着いた途端スイッチが切れて、酔いが回り出すだなんて思いもしなかった。
 酒の匂い以外いつもと変わりない姿で帰宅して、暑いのか下着以外全部脱ぎ捨てた彼。それからベッドに座って肺が空になりそうなほど長い溜息をついて、絞り出すように「……酔った」と一言。「‪名前‬〜」そんな弱々しい声で呼ばれたことない。
 力の入っていない手でへろへろの手招きをされて隣に座ると、「好きって言ってくれ……」と突然のリクエスト。なんで?と不思議に思うものの、それで彼の疲れが癒えるなら安いものだ。
「好き」
「もう一回」
「好きだよ」
「名前も呼んで」
「好きだよ、零くん」
「抱き締めながら言って」
 パンイチの男を…?と一瞬躊躇いつつ、こちらに体を向けた彼をぎゅうっと抱き締める。ただでさえ高めの体温が、酔っているとさらにホカホカだ。
「好き」
「名前も」
「好きだよ、零くん」
「キスは?」
 体を少し離して唇を重ねる。
「零くん、好き」
 鼻先が触れ合う距離で言えば「もっと」と甘ったるくねだる声。それに応えようと一生懸命繰り返すキスの最中、髪をくしゃりと掴まれて主導権が逆転する。
 次第に呼吸が浅くなって視界がじんわり滲む頃、私を痛いほど抱き締めた彼が一言。
「君からもらった“好き”の一億倍愛してる」
 ――小学生か。そう思うと「ふふっ」と肩が震えてしまって、「なんで笑うんだ」と不貞腐れる彼を誤魔化すように抱き締め返す。
 貴重な姿を見れたのが嬉しくて、翌日「昨日は可愛かったね」なんてからかってみるけど、照れもなく「だろ?」と微笑まれてしまうのでやっぱり彼には敵わない。



▼景光

「あー……疲れた……」
 すっかり日が昇った頃、酒の匂いを漂わせてヨロヨロと帰宅した景光くん。
「部長にずっと連れ回されてて、緊急の案件が入ってもオレだけ残されてさ。完全に生け贄状態だった」
 上司に気に入られるのも才能だと思いつつ、「あー、会いたかった……」ぎゅうぎゅう抱き締めながら絞り出すように呟く彼の背中をそっと撫でる。
「‪名前‬、今日出かけるんだっけ」
「うん。日用品と、あとは服でも買いに行こうかなって」
 「そっか」とシャワーを浴びるため浴室に向かう彼。
 出てくる頃には私の着替えもメイクも終わっていて、彼は力尽きたようにばたんとベッドに倒れ込んだ。
「何か買ってくるものある?」
「いや、いいよ……代わりにぎゅってして」
 いつもより甘えん坊な彼に小さく笑って、その腕の中にもぞもぞと潜り込む。
「あ…ごめん。服が皺になるよな」
「ちょっとくらい大丈夫」
 そう言って彼の背中に手を回すと、大きな体がぎゅうっと抱きすくめてくる。
 「はあ…、ずっとこうしてたい」としみじみ呟く彼に「寝るまでここにいるよ」と返せば、なぜか「寝たくない」と不機嫌そうな声。「だって起きたらもういないんだろ」なんて、そんな風に拗ねたりするキャラだっけ。
「じゃあ、ずっとここにいる」
「……買い物は?」
「いつでも行けるし、景光くんとの時間の方が大事だよ」
 そう伝えれば、「ん」と満足そうに長い脚が絡みつく。
 すぐに聞こえてきた微かな寝息に耳を傾けながら、私もつられるように目を閉じた。
 起きたらきっと、恥ずかしそうに頬を染めて謝ってくるんだろうな。なんて、少し先の未来に思いを馳せて。



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