5-10 -epilogue-


ザッと音を立てて止まると、まき散らされた雪が一瞬にして視界を覆う。
一息ついてゴーグルを上げた名前が、はぁ、と白い息を吐いた。零との合流地点はもう少し先だ。

(すっかり味をしめたな、零くん)

ニット帽とゴーグルこそしているものの、名前は今素顔だ。基本的に公安の仕事以外は変装していたい名前だったが、組織を壊滅させた今となっては零もなかなか遠慮してくれない。
素顔のまま外出する機会も、かなり増えたように思う。

行くか、とゴーグルを再び装着する。
足元のスノーボードを進行方向に向け、名前はまた白い雪の上を滑り始めた。

自宅に同期組を招いた日、名前の抱えていた7年間はすっかり丸裸にされてしまった。
なぜ過去に戻ってしまったのかは誰にもわからなかったが、名前が彼らを救うためだけに動いていたことは完全にバレてしまい、その居心地の悪さったらなかった。

(…あ、でも研二くんと陣平の顔は面白かったなぁ)

意趣返しのように「どうもA子です」と名乗った名前に、二人は信じられないものでも見るかのような表情を浮かべていた。それで気持ちが少し晴れた自分は結構性格が悪いのだろう。

結局、“一回目”と“二回目”は、見事に彼ら5人に関わることだけが混ざり合っていた。原理は謎だし都合が良すぎるが、これが世にいうハッピーエンドというやつなのだろうか、と名前は思う。
直近の二年間については曖昧なことも多いものの、零にその都度確認しながら過ごしているので特に不便はない。

(もう、この先は何もわからない)

名前も彼らも、これから先はこの雪のように真っ白だ。
それでもわからないことに恐怖はない。生きていさえすれば、どうにだってなる。

(生きていれば、きっとまた会える)

名前も零もその立場上、そう易々と彼らに会うことはできないが、それでも生きていればまた6人で集まれる日も来るだろう。その時にまた、同じように笑えればそれでいい。

白銀の世界を滑走しながら、名前はこの先に待つ零の元へと向かう。

彼女が7年かけて手に入れたのは、何も零の幸せだけじゃない。彼らが生きることを望み、助けたいと願ったのは紛れもなく名前自身だった。
だからこの幸せは、彼女のものでもある。

いつかの二年参りで零が願ったこと。
それが自分と全く同じ願いだったと彼女が知るのは、もう少し先の未来の話だ。



*2020.8.26 完結

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