「外賀少年と戦うヒーロー役は再びくじ引きで決めようと思う!」 予め用意されていたくじ引きを再度引いていく面々。引き終えると、今度はヴィラン、ヒーロー役を決める時に使った別のくじ引きからオールマイトが引いた結果、伊壱と戦うことになったのは――。 「うおっ、俺!?」 「相手にとって不足なし」 「よろしく、二人とも」 「上鳴少年、常闇少年がヒーロー役決定だ! 早速向かってくれ! ――と、その前に外賀少年にはこれが必要だったね、わかっていると思うが大怪我を負わせる行為はNGだ!」 「はい、心得ています」 どこにしまってあったのかわからないが、伊壱のサポートアイテムである彼の身長ほどもある日本刀。 驚くもの、興味深そうに見つめるものなど多数いる中、伊壱は慣れ親しんだ日本刀を受け取って先にビルへと入っていく。 「えっ、日本刀!? スッゲェ!!」 「ケロ、外賀ちゃんどう戦うのかしら……」 「彼の個性は空間掌握だと言っていた。他にも技がありそうだと思うが……」 「空間掌握……めっちゃ強そうだな、それ」 本来であれば推薦入試を受けていてもおかしくないくらいの実力者であることを知っているものは多い。 実技試験を見ていたオールマイトもそのことはよく知っている。だからといって、推薦入学者の二人を含め、あまりにもハンデを負わせてしまうと彼の授業にならない。難しいところだ。 (戦闘において“シャンブルズ”を使わないにしても――彼は入試で見せた技が他にもある) 彼は雄英の歴史上においてもぶっちぎりの一位で入学を果たし、あの演習場においてたった一人の合格者だったのだ。 改めてその時の映像を見ても、TOP10入りは別としてもプロヒーローとして十分に通じるだろう。敢えて欠点を挙げるのならば、スタミナ不足の点が気掛かりといったところか。 (この科目の担当教師として、ヒーローの先達として、外賀少年に詳しく彼の個性の話を聞いておくべきだろうか。うーん、教師って難しい) オールマイトが伊壱のことについて考えていることなど露知らず、伊壱は改めて五階建てのビルの最上階――核のある部屋に来て、今回自分に出されていた条件を改めて思い出していた。 「開始と同時に“シャンブルズ”はなし、準備中はありだけど、核を隣のビルに配置するのはなし……。相手は常闇君と上鳴君。接近戦は避けないと危ないか……?」 常闇踏陰の個性である、別の意識体――とでも言えばいいのだろうか、彼が黒影と名前を付けている影のように黒い存在は攻守ともに万能の印象がある。そしてもう一人の上鳴電気は策もなく接近すれば迷うことなく電撃系の攻撃をしてくるだろう。 「――さて、準備しますか」 時間もあまりないからと、伊壱はすらり、と日本刀を鞘から抜いた。 「意外と俺ら相性悪いんだな……。まさか常闇の個性にそんな弱点があるとは思わなかったぜ」 「日本刀の件もある。上鳴の個性ならば感電を狙えるかもしれないな」 「あ、そっか。日本刀なら電気通すか……。ダークシャドウにも影響しない範囲でやってみるわ。少しでも感電したら動きも制限されるだろうし。でも優先は核ってことで!」 「承知した」 二回目ということで見取り図を渡されていない二人は互いの個性の相性の悪さに気付いた。 上鳴の電撃は規模にもよるが激しい電光を伴う。ダークシャドウは光に弱いために、少なくとも個性を使ったうえでの共闘は見込めそうにないのだ。 どちらも強個性であることは間違いない。特に“シャンブルズ”を禁止されている伊壱が相手となれば、どちらかの個性による攻撃は通じるはずだと二人は結論付ける。 二対一という数の有利を活かし、最優先は核の確保と定めた二人の耳に開始の合図が届き、二人はビルへと一歩踏み出した。 念のために一階の窓から侵入した二人は呆気ないと思えるほど簡単に二階、三階へと進んでいく。 「1人しかいないからか、何も起きないな」 厄介な技がないだけで緊張感がこんなにも違うとは、と二人は思いながらも四階へと続く階段へ歩を進めた時、それは目の前にあった。 「えっ、か、壁!?」 ここから先は通させないとでも言わんばかりの壁が、階段の二段目の部分から突然聳え立っていたのである。 事前にこのビルを使っていた二人の記憶には当然このような壁など存在していない。 試しにどん、と少し強く叩いてみると鈍い音が響く。見た目からしても今までの階層にあったコンクリートの壁がそこに存在していた。 「どうなってんだ……? これも外賀の個性なのかよ!?」 「上鳴、下がってくれ。――黒影!」 「アイヨ!」 上鳴を後ろに下がらせた常闇が、自身の個性であるダークシャドウに壁を攻撃させる。 容易く砕けた壁は流石に分厚くはなかったらしく、砕けたところから次へと進む階段が確かに見えた。 「おお、すげぇ!」 「こうなってくると何が待ち構えているのかわからん。更に慎重に進むぞ」 「おう!」 その後も四階に到達するまでの間に幾つかの壁を砕いて進み到達した、本来は四階であったはずの場所を見て、二人は呆気にとられることとなる。 「……どうなってんの、これ」 彼ら二人はわずかな時間だったとは言え、確かにこのビル内に入ったことがあるはずだった。 しかしこれは誰の目から見ても明らかなほどまでに、妙な造りへと変えられている。 左右どちらにも行けるはずだった廊下がなくなって左へと進むことしかできない。十字路に分かれたかと思えば二つは通行止め、一つは元の位置へと戻される。今までの階層が楽だったかと思えば、四階はちょっとした迷路と化していた。 とはいえ、ビルの各階層は広大というわけではない。正解の道を偶然にも選べた二人は五階へ続く階段にとたどり着けた、のだが。 「なんで階段がまるごと天井にくっついてんだ!? もう俺わけわかんねぇ!」 「流石にこの距離は跳べん。……ここから五階に行くには窓から行くしかないな」 「ま、マジか」 「黒影がいる、安心しろ上鳴」 恐らくはタイムロスを狙ったのだろう、奇抜な作戦。どういう個性の使い方をしたのかはわからないが、確かに位置交換技の“シャンブルズ”を使ったわけではなさそうだ。 ビルの四階の高さは九メートル以上もある。身の竦む高さに上鳴と常闇は安全を考慮しつつ、隣のビルと近い距離で隣接している窓を選んだ。とはいえ、ここは四階。身長を合わせても十メートルほどの高さがある。 「これ終わったら外賀に苦情言うわ、俺……」 「……気持ちはわかる」 まさか基礎訓練で一階ならば兎も角こんな高さから侵入することになろうとは夢にも思わなかった二人だ。 運よく太陽の傾きで日陰になっていたため、ダークシャドウに窓から伸びてもらい五階の窓から安全を確認。窓を破壊してもらい、まずは常闇、次に上鳴と無事五階に侵入を果たす。 なんとか辿り着いた上鳴は、大きく安堵の息を零した。 「これ常闇とか麗日とか八百万じゃなかったら詰んでたよな……あ、あと爆豪もか。飛べるし」 「蛙吹は壁伝いに行けるのではないか? 轟も氷で階段を作れそうだ」 「確かになぁ」 個性の応用力がものを言うとはいえ、現時点上鳴にはそういった手立てはない。強い個性でも一長一短はあるものだと上鳴はつくづく思う。 「窓を割った音で気付かれただろう。急ぐぞ、他にもあんなことをされては堪ったものではないからな」 「ああ!」 部屋を確認しようとまずは手近な部屋のドアを慎重に開けた。 警戒している二人にまるで反するように、部屋の奥には伊壱本人が堂々と待ち構えている。しかし、あれほど大きな核はどこにも見当たらない。 一人で戦わなければならない伊壱が核の傍を離れるとは思えなかった上鳴と常闇が動揺していると、抜刀されている刀を右手、大きな分長い鞘を左手に持ち、僅かに開いた扉からこちらを見ている二人を、伊壱は微笑みながら迎え入れた。 「お疲れ様、二人とも。核は隠させてもらったよ」 「隠した……!? あんな大きいのにどうやったんだ!?」 別の部屋にそのままの姿で置いている――なんてお粗末なことを伊壱はしないだろう。 隠したと言った伊壱の言葉と、四階の迷路を思い出した常闇はあることを閃いた。普通ならば在り得ない、けれど、伊壱だからこそできる隠し方だ。 「――! そうか、四階の壁を使ったのか!」 「正解。ご所望の核はこの階のどこかにちゃんとあるよ」 この建物はビルなだけあってどの階層も同じ壁。どの部屋も一律の広さを持っているとはいえ最低限の確認だけではどこの部屋が狭くなっているのか、たった二回しかこのビルに来たことのない二人にはわからないだろう。 しかも伊壱を警戒しているからこそ、慎重に進まなければならなかったことに加えて、三階から四階へ続く階段での壁割や、四階から五階へ向かう過程でのタイムロスがここで響いてくる。 時間の問題で核を探す暇はない。しかし、壁割を行える常闇ならば、やろうと思えばやれるだろう。そこで伊壱はヴィラン役だからこそできる方法で、ヒーロー二人を足止めすることを決めていた。 「壁をぶち破るのは止めておいた方がいい。核は隠されている壁からそう離れてはないからね、変な衝撃を与えると爆発するかもしれないよ?」 「!!」 「そこまでヴィラン役やるか!?」 「そりゃあ、ヴィラン役だからね。君たちもヒーローなら、ヴィランを倒してなんぼじゃないかな。時間もないことだし」 因みに――。と付け足した伊壱は力を発動した。円状から半円状へと広がり、やがてこの部屋をすっぽり覆ったサークル。 「折角ここまで来てくれたヒーローだ。ぜひ戦いたい――って思うヴィランもいると思うよ」 敢えてそういうヴィランがいるかもと言ったが、伊壱も恐らく大半のクラスメイト同じく一戦目の戦闘訓練の影響で知らず知らずのうちに熱が入ったのだろう。彼にしては珍しく戦闘意欲が確かにあった。 オペオペの実の力によってこの空間は既に伊壱の掌の上。軽く右手を部屋の中に向かって払う動作をすれば、彼等は抵抗できずに部屋へと宙に浮かびながら入ってくる。そのタイミングで入口を天井にくっつけていた四階の壁を使って塞ぐ。ヒーロー役もヴィラン役も、退路は断たれた。 彼の個性の領域でどこまでやれるのかわからないが、伊壱が言っていたように自分達はヒーロー役。ヴィランを捕まえなければ、という思いが確かにあったのだろう。 壁を破壊するのではなく、伊壱を倒す――もとい、捕獲することに意識を切り替え、崩された体勢を整えた。 「時間もない、行くしかないか……!」 「おう……!」 対峙した実質三人と一人の戦闘はこうして始まった。現時点で核との接触ができないヒーロー役は伊壱の体のどこかに捕獲したことを示すテープを巻き付けなければ勝利にならない。 日本刀という武器を持つ伊壱は大怪我を負わせることはないと言っていたが、だからといって自分達が闇雲に突っ込むのは危険すぎる。慎重に間合いを詰めようとした、その時。 「待つつもりないよ!!」 「!? 黒影!!」 大きな日本刀を持っているとは思えない速さで走りまずは常闇から接近した伊壱。常闇が咄嗟にダークシャドウを使って防御の姿勢を取る。が、伊壱は容赦なく、同時に迷いなく常闇を両断した。 情け容赦のカケラもない所業に上鳴が戦慄して身を竦ませるのと同時。切って返す勢いのまま、伊壱は上鳴を切りつける。 (ま、マジかよ――!?) まさか外賀がこんなことをする人間だとは思っていなかった上鳴が無意識に目を瞑ったのとほぼ同時刻の地下にあるモニタールーム。ここもまた、実際に切られた二人ほどとは言えないが、戦慄していた。 「う、ウソ……!?」 「オールマイト先生!?」 「落ち着きたまえ、少年少女!! 切られた二人をよく見るんだ!」 混乱している一同を宥めそう指示すると、言われたとおりに画面を注視した轟は気付いた。 「……血が出てねぇ」 「えっ!? あ、ほ、本当だ、二人とも生きてる……!」 「でも真っ二つだぜ、どうなってんだ……!?」 「外賀コェェェ!!」 画面に映し出されているのは切られているのに死なない自分達を不思議に思い混乱している常闇、ダークシャドウ、上鳴の姿。痛みも感じていない様子で、本当に理解不能といった様子だ。 モニタールームでもオールマイト以外理解が追いついていないものが殆どである。 「個性の特徴の一つでね。彼の個性の領域内では彼自身が切った人間ならば死ぬことはないんだ」 「ケロ……。だから外賀ちゃんは迷うことなく切りつけたのね。でもとても驚いたわ」 切られた二人の混乱っぷりは予想がついていたのだろう。伊壱は苦笑しながら二人に何かを告げて、渡されていた捕獲用テープを二人に巻き付けた。そしてオールマイトの勝利を告げる言葉が響く。 「ヴィラン、WIIIIIIN!!」 「……これ、外賀がヒーローでも圧勝だったんじゃねぇか……?」 ぽつり、と零された峰田の言葉に頷いたものは果たして何人いたことか。 オールマイトの耳には未だビルにいる三人の会話が届いていた。 「容赦なく切ってごめん。ヴィラン役になりきると思ったらこれしか思い浮かばなくて……。今くっつけるよ」 「び、ビビッたわ……。マジで……」 「できればもう体験したくはないな……。外賀、お前はこの展開を読んでいたのか?」 「こうなってもらえたら、とは思ってたかな」 まだA組全員がそれぞれの個性について知らないことが多い。 この作戦はそのことを突いた上でのものでもあった。伊壱の個性を詳しく知っている人間がいたのならもっと違う方法で迫ってきたことだろう。 両断された体を元に戻し終えた伊壱は奪われた体力の多さに苦笑する。やはり、連続使用すると体力の消耗が激しいな、と思いながら伊壱は溜息を一つ零した。 「今回俺何もできなかったわ……」 「上鳴君の個性は厄介だからね、しっかり潰しておきたかったんだ。それにはインパクトのある速攻しかないと思ってさ」 「怖ぇよ! マジでビビッたんだからな!? お前もう二度とさっきのするなよ!?」 「ヒーローらしくないからねぇ……。今回みたいなヴィラン役じゃなければ使わないつもりではあるよ。必要に応じるつもりはあるけど」 「必要ってどんな時!?」 戻ってきて講評が始まると、最早お決まりと言っていいだろう八百万の講評が待っていた。 「上鳴さんと常闇さんは数の有利性があったのですから、別々で行動すべきだったと思います。四階が迷路になっていると判断した時点で五階へ向かった時のように窓から窓への侵入をするべきでしたわ。そうすれば後手に回りすぎることもなかったかと思います。 外賀さんは個性を使った意表をつく作戦でした。ヴィラン役であり一人であったことを考慮しても、いい作戦だったかと思います。ただ、それならば一階から丸ごと構造を変えるなどをしていればもっとよかったかと思いますわ。床を抜いたり、窓を塞いだりしてしまえば恐らくヒーロー側の行動はもっと絞られたかと思います」 「八百万少女、流石だね……。因みに外賀少年、何故君はあの部屋にいたのか聞いてもいいかな? 君の作戦は時間を特に気にした作戦! それならば彼等が真っ先に入ってくるあの部屋とは真逆の部屋にいたほうがよかったんじゃないかい?」 ヴィラン役だったとは言え、大半が戦闘経験のない少年少女。あの容赦のないぶった切りを見て伊壱を見る目が変化していることに気付いていたオールマイトは、敢えて尋ねた。 「床とか壁を弄り過ぎると建物の耐久が不安になるからできませんでした。あの部屋にいたのは、二人が誤って落下して怪我をしないようにするためです。オールマイト先生もいるので必要ないとは思いましたけど、念のために」 伊壱自身、あの作戦における事故の可能性は考慮していた。ヴィラン役らしさとしてクラスメイトを容赦なく切ったとは言え、彼もまた他のクラスメイトと同様にヒーローを目指す少年なのである。 もしも二人が落下したのなら迷わず“シャンブルズ”を使うことも視野に入れていたことは言うまでもないだろう。 「外賀……! やっぱお前いい奴だわっ!!」 「苦労掛けたな」 「こちらこそ危険な作戦にしてごめんね」 「気にするな。俺たちの力がまだ足りなかっただけだ」 割と本気で授業後に本人に直接苦情を申し立てるつもりだった上鳴は、安全性をちゃんと意識されていたことを知り、申し立てを棄却。当事者の上鳴と常闇を始め、クラスメイトたちが抱いていたマイナスの印象を戻すことができたようだ。 オールマイトのフォローが活きた瞬間であり、当人は我ながらナイスフォローだと内心で思っていたりする。 「なあ、外賀、モニタールームから見てたけどよ、壁あちこちに動かしてたやつにも技名があるのか?」 「あれは“タクト”って技だね」 「すげぇよな、まるで念力みたいに動いてたしよ」 「タクト……指揮者から来ているのかしら。素敵な技名ね」 「ありがとう梅雨ちゃん」 梅雨からの言葉に内心で俺もそう思う、と付け足した伊壱は時間的に授業も終わりだろうからとオールマイトに日本刀を預けた。 「確かに預かったよ、外賀少年。今回はすまなかったね」 「いい経験になりましたから、気にしないでください」 好青年、とはこういう人物を言うのだろう。彼は年齢的にはまだ少年だが。オールマイトは穏やかに微笑む伊壱を見て不思議に思う。 あれほど強力な個性であれば爆豪とまでとは言わずとも、もう少し自尊心が高くてもおかしくないものだが、と、そう思ったのだ。 勿論、個人差や家庭環境にもよるので一概には言えないのだが。 (彼には師匠がいるという。その人物の教育の賜物なのかもしれないな) 相澤からの情報をもとにオールマイトはそう判断したが、その人物は本人の同意があったとはいえ、カナヅチの幼い子供だった伊壱をわざと溺れさせたというとんでもない経歴があることを彼はまだ知らない。 活動限界が迫っていることもあって、彼は伊壱の日本刀を手に持ち、残った面々に授業の終わりを告げてお馴染みの速度で去っていった。 「なあ、折角だからさ、放課後みんなで反省会しねぇか!?」 「反省会?」 オールマイトが去り、各々が更衣室に行く中で赤髪の少年切島が発案する。 「みんなの意見を聞いてみたいっつーのもあるんだけどさ、親睦を深めるって意味でもいいんじゃねぇかって思ってよ」 「親睦を深める……。確かに折角同じクラスになったのだからな。是非参加させてくれ!」 「なんか楽しそうじゃん! 私も参加するー!」 大半のクラスメイトが切島の言葉に同意する中、轟は用事があるからと断りを入れて更衣室へと向かっていく。 伊壱はと言うと、今日の放課後は予定というべきか。医者になるために幼少の頃から続けている勉強を予定していたのだが、切島の言葉にはとても魅力があった。 「……できれば俺も参加したいな。切島君の言う通りみんなの意見も聞きたいし、仲良くもなりたいから」 「おお! っつーか、外賀! お前の個性こそ謎が多すぎるんだからよ、絶対参加だぜ!?」 「そうそう」 「それなら緑谷のも聞きたいよな、今日のあれ凄かったしよ」 「ケロケロ、そうね」 「女子が残るなら俺も残る」 結果として、轟を始め用事があるからと数名と、止める声も聞こえていないようで、あの爆豪とは思えないほど静かなまま彼は帰宅していったものの、放課後はそれぞれの意見を持ち寄って反省会が開かれた。 途中全ての怪我を治すことはできなかったようで包帯を巻かれるなどの処置をされた緑谷が爆豪を追いかけたかと思うと暫くして戻ってくるなど、メンバーに小さな変化はあったものの、色々な意見が飛び交う教室の居心地はとても良い。 けれど、彼等は――否、彼等だけではない、雄英中の殆どのものがまだ知らない。 今日の授業の僅か数日後に起きる事件。そして、その事件をきっかけに更に大きな事件が起こることなど、彼等はまだ知らないのだ。