「今年の1年は注目の的になりそうですね」 一人の雄英教員の一言に、他の教員たちは重々しく頷いた。 「USJ襲撃事件を乗り越えた若きヒーローの卵……注目度で言えばA組は間違いなくダントツでしょう」 「特にエンデヴァーの息子轟焦凍、ヘドロ事件の爆豪勝己、個性で注目されるだろう外賀伊壱……この三人は注目されそうですね」 出生、事件の逸話、そして当日彼の個性の応用力の高さで特にヒーローから注目されること間違いなしの少年たち。 どの少年も個性の強さ、派手さ、応用力の高さから納得のいくものばかりだ。 「しかし、どの競技にしても外賀くんの個性……というより技は、応用が利きますな」 「何もしなければ彼が首位を独占しかねませんが、校長、どうしますか」 実力主義であることは否めない雄英のヒーロー科に対する教育制度は時折露骨な一面が目立つ。 今回の体育祭は特にその特性からしてヒーロー科とそうでない科との差がはっきりとしている中、応用力の高さが際立つ伊壱の存在は良くも悪くも目立っていた。 尋ねられた根津はひとつ頷くと一つの解を告げる。 「彼の応用力のある個性は将来性という意味において他の生徒たちよりも頭一つ分抜けていると言っていいからね! その分少しの縛りを設けるつもりさ!」 彼の個性と技は少々のルールによる縛りがあったところで強さははっきり言って変わらない。 特にプロヒーローならば彼の個性の応用力の高さにはまず間違いなく気付くだろう。 だからといって、強い縛りをかけてしまうのは彼の今までの努力や、良い点を潰しかねない。 今後彼と同世代のものたちには共通の課題となり得る存在だと言えるのだ。学ぶ機会を失わせていいはずがない。寧ろ絶好の機会だと生徒たちには気付いてもらいたいものだ。 「彼みたいな個性に対する対処法も学んでもらいたいからね。単独、協力……どのように対処していくのかは、僕たちが生徒たちに課す課題のひとつでもあるのさ」 偶々伊壱はヒーロー科に通う生徒だった。けれど今後、彼のような個性持ちが新たにヴィラン側に登場する可能性がないとは言い切れない。既にヴィラン側にはワープという希少な個性の持ち主がいるのだ、学ぶ機会は多いほうがいいだろう。 今回のように個性ありきで対峙する場面は、生徒たちにとっては経験を積む絶好の機会でもある。 根津の言葉に同意した教員たちは、体育祭における役割等々の最終確認をしていくのだった。 二週間という時間はあっという間に過ぎ去り――雄英体育祭当日。 一年生の会場は過日の襲撃事件のこともあってか、例年にない盛り上がりを見せていた。 比例するかのように警備も厳重で、注視すればプロヒーローの姿もちらほらと見かけるほど。 籠る熱気に人々の騒めきは届かないものの、控室にいる生徒たちもまた、どこか浮足立つ感情を隠せない者たちがいる。 そんな中、場の空気に呑まれない者が一人、予想外の人物に宣戦布告を告げていた。 「緑谷」 「轟くん……? 何?」 「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」 「へっ!? う、うん……」 唐突に断言された言葉は事実ではあるが、これから体育祭が始まるというのに言われるとは予想していなかった緑谷にとってはそれ以外言えそうにない。 いったい何を言い出すのかと緑谷だけではなく、クラス一同見つめる中、轟は全く意に介さずに言葉を続けた。 「オールマイトに目を掛けられているよな。別にそこを詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」 「!!」 先ほど実力は上だと言っておきながらの宣戦布告発言。しかし、轟は止まらない。 「外賀、俺はおまえにも勝つぞ」 「ンなもん俺もだわ!!」 「えっ、その流れで? 何この宣戦布告ラッシュ……。爆豪は兎も角轟がするなんて意外だわ」 突然話を振られた伊壱は目を瞬かせた。まさかこの場でそのような宣戦布告が立て続けに起きるとは思ってもみなかったのである。 「うん、よろしく……?」 「外賀戸惑ってるな……」 「突然だったもんね。しかもなんかついでっぽい扱いだったし」 「喧嘩腰は止めろって、爆豪は兎も角よ」 「いちいち俺は兎も角ってなんだ、殺すぞ!!」 いつものようにいじられる爆豪は兎も角として、切島が宥めるように言い聞かせながら轟の肩を掴むも、轟は本当に意に介していないようで彼は切島の手を、肩を動かすことで除けた。 「別に仲良しごっこじゃねぇんだ、何だっていいだろ」 爆豪ほどとは言わないが、単独行動の目立つ轟らしいといえばらしい行動と言える。 一方、宣戦布告された最初の一人である緑谷は轟の言葉を受けて、言葉を探していたようだ。 暫く沈黙していた彼は、意を決したように話し出す。 「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかは……わかんないけど……。そりゃ、君の方が上だよ。実力なんて大半の人には敵わないと思う、客観的に見ても……」 たった一年。たった一年だ。多くのクラスメイト達が努力してきた期間と比べれば圧倒的に短いこの時間はまだ覆せそうにないことを、緑谷はよくよく自覚していた。 瞬間的なパワーには定評があったとしても、それだけ。そんなことでは憧れのヒーローには遠く及ばない。 「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねぇ方が……」 「でも……! 皆、他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ……! 僕だって遅れを取るわけにはいかないんだ!」 個性のなかった今までの分を取り戻すような努力は、まだまだ足りてない。そんなことは身に染みてわかっている。けれど、だからこそ、自分はこの場で見せなければならない。 「僕も本気で獲りに行く!」 いつになく強気の発言をした緑谷の目は真剣そのもので、熱く燃えている。緑谷のやる気に触れてか、クラスの雰囲気もいっそう体育祭へかける熱意が増したように思えるのは気のせいなのだろうか。 「……おう」 宣戦布告した轟本人も緑谷が本気だと察したのだろう。侮るような雰囲気はない。 二人のやり取りを見て不満気にしている爆豪の視線は少しの間のことで逸らされはしたものの、近くにいた者たちは彼が不機嫌だということは察していた。 「皆、入場の時間だ!」 飯田の言葉に席から立つ者たち。熱い一日が、始まろうとしている。 満員となった一年生体育祭の会場に響き渡るはラジオでも活躍しているヒーロー、プレゼントマイクの声が入場しようとしている生徒たちの耳にも入ってきた。 『雄英体育祭! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』 『どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!? ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!! ヒーロー科、1年A組だろぉぉ!!?』 先頭から入場した、注目の的であるA組にカメラを向けるメディア。プレゼントマイクの言う通り目当てとしていたクラスの入場というだけあって、一気に視線を浴びる感覚を誰もが感じている。 「……凄いなぁ」 大観衆の視線を浴びることなどそう簡単に体験できるものではない。ここにいる殆どの同級生たちにとっても初体験と言えるだろう。 報道陣のカメラ音が耳に入らないほどの人々の騒めきと、いったいどんな戦いが見られるのかという期待が籠められている熱い視線。その中にはプロヒーローたちがスカウトの下見として注目している視線も感じられた。 続々と生徒たちが入場していくと、今年の主審を務める雄英教員、ミッドナイトが18禁ヒーローと自ら命名するに相応しいムチを振るい、ピシャン! という音とともに体育祭の開始を告げる。 「選手宣誓!! ――選手代表、1-A 外賀伊壱!!」 「はい!!」 ミッドナイトの言葉とともに名指しされた伊壱は力強く返答する。事前に相澤から伝えられていた伊壱は気を利かせてくれたクラスメイトが開けてくれた道を歩き、マイクのある舞台に上がると、返答してきた時よりはマイクがあることで声量が落とされてはいるものの、力強い口調で告げた。 「宣誓。我々選手一同、個々の力を存分に発揮し、相手への礼儀を重んじ、全力を以って戦うことを誓います!!」 はっきりと、強く告げられた宣誓をした伊壱は一礼したあと舞台を降りていく。出迎えたクラスメイトたちはお疲れ様、と口々に告げる。 戻って来たことで肩の荷がひとつ下りたのだろう、伊壱はほっとした表情を浮かべていた。 「外賀くん、いい宣誓だったよ! お疲れ様!」 「そう言ってもらえると嬉しいよ。俺噛んでなかった? 途中から頭の中白くなってて……」 「大丈夫だったぜ!」 伊壱が戻ったタイミングを見計らって、ミッドナイトが体育祭を進行していく。体育祭は本選でありメインイベントとなるトーナメント戦まで予選がある。 大まかな内容しか伝えられていない生徒たちはいったいどんな種目なのかをその詳細を含めて、今日この場で漸くわかるのだ。 「毎年この予選で多くの者が|涙を飲むわ《ティア ドリンク》! さて運命の第一種目、今年は――」 ミッドナイトの背後にある巨体な画面が映し出したのは“障害物競争”の五文字。 「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km!」 スタジアムにこの時のために造られたのだろう、生徒たちが入ってきた入口とは別の方角にある出入口のひとつが確実に開かれ、その上にはスタートの合図を切る信号機が点灯する瞬間を待ちわびているかのよう。 バラバラに動き出していく生徒たちはやがて一本の短い川のような群れとなしていく。 スタートもゴールは同じでもこの場にいる生徒たちの目的は似ているようでまったく異なる。 一位を目指すもの、何かを企んでいるもの、端から諦めるもの――それらを巻き込む波が動き出すまで、あと数秒もない。 特有の緊張感が充満していく中、伊壱はルールを冷静に振り返る。 (4kmとなると、個性を使っての全力はできないな。――ん、あれは……) 障害物がいったい何なのかわからない以上、無暗にオペオペの実の力を使うことは避けたほうがいい。デメリットを考慮すれば当然の判断と言えるだろう。 とりあえずは駆け抜けていくことに集中しなければ、と意識を切り替えようとした視線の先にいるのは、いつの間にか先頭に立つ紅白の頭髪を持つ少年、轟がいた。 「わが校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」 最低限にして必要なルールを付け足したミッドナイトは不敵な笑みを浮かべていることだろう。スタート地点に立った生徒たちが注目しているのは頭上でスタートを示すランプの点灯と、主審の言葉のみ。 やがて順番通りに点灯していくランプの、最後の色が灯り、消えた。 「スタート!!」 皮切りに駆け出した生徒の勢いに反して、先頭にいた生徒たちは兎も角、他の生徒たちは人数に対してあまりにも狭いゲートから中々出られずに四苦八苦している。勢いに反して、進み具合はあまり宜しくないようだ。 それもそのはず。先頭を切って走り出した轟が、スタートと同時に自分より後ろにいる生徒たちの足止めをすべく地面諸共凍らせたのだから。 轟以外の先頭にいた選手たちが予想外もいいところの妨害に驚き戸惑い、四苦八苦する中、その攻撃を読んでいた者たちが一斉に飛び出した。 「甘いですわ、轟さん!!」 “創造”の個性で右手から棒状のものを生み出し、棒高跳びのように生徒たちの頭上を越えていく八百万を始め、個性を駆使するもの、或いは身体能力によって回避した者たちが次から次へとスタートダッシュを切っていく。 「轟君の個性は知ってるからね」 軽くジャンプをすることで凍らされることを回避した伊壱は、瞬時に“ROOM”を展開していく。広がりを続けるその範囲は、先頭を走る轟をとらえた。 「外賀の個性……!!」 「“シャンブルズ”」 轟の耳には届かなかっただろうが、見事伊壱と轟の順位の逆転がなされると展開していた半円は瞬時に解除される。殆どスタート地点のまま位置交換させられた轟はぎり、と歯を噛みしめた。 『早速一位奪取! 轟の順位を奪ったのは選手宣誓していた外賀だー! マジ便利だな、ソレ!!』 『轟の一手は篩としてはよかったが、詰めが甘い。もう少し周囲の状況を確認すべきだったな』 このスタジアムには多くのプロヒーローがいる。観客だけではなく、彼等にも自分が何を得意としているのか、何ができるのかを宣伝しなければならない。 実際伊壱の個性を目にしたものは目を剥いて驚きを示し、あるものは初っ端からの個性を用いた争奪戦に興奮しているようだ。まずは成功と言ったところか。 (宣伝できる瞬間は逃さず狙っていかないと……!) 速度を緩めず走り続ける伊壱、そして突然先頭を走る人物が変わったことに動揺しないクラスメイト達はこの展開を読めていたのだろう、動揺はない。 背後にいる轟はすぐさま追いつくことが予想されるうえに、先頭は“空間掌握”を行える伊壱が相手となるとそう簡単に追い抜けないし、妨害も難しいのが現状と言えた。 (下手に抜かそうとすれば交換させられてしまう……! 外賀さん、厄介ですわ……!) 独走する伊壱を追いかけていく生徒たちにとっての大きな壁を前にどう対策をするべきか、考える暇を与えないのが雄英である。 『さぁ、いきなり障害物だ! まずは手始め――第一関門! ロボ・インフェルノ!!』 駆け抜けてきた選手たちの目の前に現れたのは推薦入学者以外の生徒たちならば絶対に目にしたことがある、ロボットの群れだった。 「懐かしいな……」 入試試験では最後の力を振り絞ってぶった切った相手が沢山いるこの状況。序盤で多くの体力を失うことは得策ではない。巨大なロボット全体を覆うことは避けるべきだろう。 あの時と同様に動きは緩慢。十分つけ入る隙がある。戦わずに素通りできなくもなさそうだが、問題はその足元。 巨大なロボットよりは遥かに小さい、けれど人間と同程度か少し大きい程度の背丈のあるロボット――入試試験でポイントを割り振られていたロボットだ――が通り抜けできないように行く道を防いでいる。 (……先頭を走っていてよかったな) 『先頭を駆け抜ける外賀、スピードを緩めずロボットの群れに向かってくぞー!? どうするつもりだ!?』 スピードを一切緩めず、直進していたコースを少しずつ逸らして左側から接近する伊壱を察知し、足元にいた伊壱よりも背の高いロボットが攻撃しようと片腕を振るう。が、それを大きな振りから予測していた伊壱は腕が届かない位置から助走として一切緩めずに走っていた勢いを利用して高く跳ぶことで避け、追い越しざまにロボットを踏み台にして更に高く跳んだ。 『外賀がロボットを踏み台にして跳んだー!? 何する気だ、アイツ!』 跳んだ先にあるのは巨大ロボットの片腕。巨大な分動きが緩慢故に攻撃の動作がまるで遅い。 僅かな凹凸を逃さずに窪み部分に指を掛けると、ぐっと力を入れて近くにいるロボットの腕へ振り子の原理を使うかのように跳び、今度は両足を使って勢いを殺さずにまるで忍者のように巨大ロボットの凸凹や体の筋力などを利用して見事に跳んでいく。 『……アイツ、パルクール習得してんのか』 『パルクールってあれか、フリーランニングのことだったか? ミイラマンも時々使うやつ!』 『誰がミイラマンだ。超常社会になってからは衰退の一途を辿っちゃあいるが、パルクール――フリーランニングはプロヒーローの間でもよく用いられる。そう簡単に習得できるもんじゃない。普段は個性ばっかり使っていたが、相当体の方も鍛えてきたんだろ』 入学して数か月。その間にあの動きを見たことはない。 USJ襲撃事件では使う機会がなかったのだろうが、あの動きがあれば入試試験では必要最低限の個性を使うだけで済んだはずだ、と疑問に思った相澤はその理由を直ぐに察した。 (……センパイが何か言ったな) 慣れた動きからして、最近習得したばかりというわけではなさそうだ。意地悪く隠していたとは伊壱の性格からして考えにくい。となれば、心当たりはひとつだけ。 彼の師、武藤タツキが関与していることは間違いない。 (考えられる理由としては、パルクールと日本刀とのかみ合いがうまくいっていないか、或いは個性のデメリットの軽減方法を編み出すために敢えて積極的に個性を使うように言っているか、か) 謎の多い複合型の個性“空間掌握”のデメリット軽減方法は担任の相澤も手立てを探してはいるものの、まだ見つかっていない。そう簡単に見つかるようならば、伊壱も武藤タツキも手古摺ることはなかっただろう。 相澤の視線の先でまさか悩みの種のひとつとなっていることを知らない伊壱は、あっという間に巨大ロボットの肩に到達。即座に次の行動に出る。 「“ROOM”」 何でもありのこの障害物競走。轟のように妨害もありならば、話が早い。 市街地を想定されてはいないこと、先頭を走っていたことで伊壱の先には当然誰もいないことに加え、後続は彼が何をするつもりなのかわからずに走る速度を緩めている。 この状況はとても都合が良い。 「“タクト”」 精々ロボットの頭部を覆う程度の範囲しか広げなかった伊壱は妨害と先頭を譲らないことを一挙にできる方法を繰り出した。 “タクト”とは範囲内のものを縦横無尽に動かすことのできる技だ。その技を、体の一部分にかけて働かせ、尚且つ真横に向けて急激な負荷をかければ果たしてどうなるのかというと――。 『巨大ロボットが倒れるぞー!?』 キャタピラとはいえ、二足歩行で動くタイプだったことも大きい。 巨体に見合う重さ故にある程度の負荷でならばびくともしない。しかし、まるで大砲でも直撃したかのような横への働きに耐えられなかった巨大ロボットは大きく傾き、ドミノ倒しのように隣とそのまた隣の巨大ロボットを巻き込んで、やがて轟音を轟かせながら倒れこんだ。 当然勢いと重さに相当する地響きと、倒れたことによって生じたいっそ爆風とでも言える風圧と砂ぼこりが後続の選手たちに襲い掛かることになる。 「くっ……!」 「外賀のやつ、最初っから飛ばしやがるな……!」 僅かな時間視界を遮られたものたちの視界が漸くクリアになると、目の前にあるのは巨大なロボットたちが進行を防ぐようにコースを横断して重ねて倒れている光景が広がっていた。 足元近くにいた他の人間サイズほどのロボットも先ほどの爆風によって倒れて故障しているようだが、奥にいる横断するように倒れているロボットは、その巨大さ故に乗り越えなければならないため若干のタイムロスは否めない。 『ロボットの動きを止めるだけじゃなく、妨害を一瞬でこなした外賀は更に先へ進む―! こいつぁシヴィー! このチート野郎め!』 「チッ……!」 これ以上先に行かせて堪るか、と爆豪が両掌を後ろに向けて爆発させ、その勢いを利用して宙を飛ぶ。他にも爆豪とはまた別の方法で空を飛ぶことのできる選手たちが続く中、追いついた轟は飛ぶことはできないものの、倒れたロボットを駆け上り他の者たちと同じく外賀を追いかけていく。 さらに出遅れた後続達は脇道から現れた伊壱が踏み台にしたロボットと同じく人型程度の大きさのロボットたちとの戦闘を余儀なくされた。 「くっそ、コース外から続々とロボットが……! まだ奥にもデッケェやつがいるってのに!」 先に倒されたのは巨体ロボットだが、その数は僅か三体。奥にはまだまだ巨体ロボットが進行を邪魔されたことでこの場に接近こそされてはいないものの存在していることがはっきりと確認できる。 その様子からして、伊壱が先ほどの手順で倒している様子はない。 「A組のやつ、マジで性格悪すぎんだろ!! 爆豪だけじゃねぇとかマジ最悪だ!!」 「外賀はいいやつ……なハズだ! 妨害も戦略だからな!! 男らしくねぇけど!」 「いっそ交換してくれたら楽だったのに! してくんねぇかな、外賀!!」 「他力本願はよくないわ」 倒れた巨大ロボットを乗り越えるもの、戦闘せざるを得ない状況になった選手たちには堪ったものではない。 こうしている間にも先ほどの爆風をうまく利用して今度はある程度の距離を飛ぶことで後続から更に距離を離した伊壱は、早くも第二関門を攻略していた。